『だから・・・』の感想
どうにか終結までたどり着いたようです。
みなさん、ありがとうございます。
最後を華々しく飾って、というほどではありませんでしたけれど、そこそこ4章小説らしい風味は醸し出せたのではないでしょうか。
お題
お題から「決め」を打たれている、という作品もありましたが、これは対極でした。どのようにでもなる柔らかさがありました。自由度が大きいのは、私はどちらかといえば不得手なほうですけれど、人によっては手頃で圧迫もないと感じられるかもですね。
起の章
HARUさんにしてはやけに暗めの導入でしたか。
表の意味はもろ「リストラ」でしょうけれど、このまま素直に受けていくのか、裏をめくっていくのか、料理の仕方で微妙にいろあいが変わっていくところでしょうね。
ところで、起の章の彼は弱気が過ぎる、とは感じました。どことなく不幸な自分に酔っている、甘えているような。別の言い方をすれば、殺されかかった人間がこのような状態であるはずがない、まだまだ余裕、という感触です。修羅場にはまだ直面していない前段階、扉がいくつも残っている、と見えます。
隈一つ無いほど明るいかろやかな生が得られないなら、緩慢な死を受容する、という気質が主人公にもしあるなら、その前段階の心理状態としてありえるかなあ、とは思いましたが。
承の章
裏めくり、その一ですか。岐路でしょう。
承の章の内容は、依然悲観的ではありますけれど、起の章の彼を「現実離れ」という方法で救済しているんでしょうね。現実に張り付こうとする意識を「お話ですから」と引き離す。
一つの方法だと思います。転も結も承にならって、となりましたし。
でももう一つの方法も魅力的だと思うんです。どうせお話なのですから、現実をシミュレートしてみる、という行き方です。主人公がどういう目に遭おうと、お話。あるかもしれない未来のうち、より目前の危機の予行演習として。
あと感じたのは、人以外の生き物になる、という発想、カオスさんの好みなんでしょうね。願望かな。カオスさんの作品に何度かあらわれますもんね。ラストワンなので、刻印、という意味もありましたか。
転の章
刻印ということでは花島さんのこの、ご主人様と健一(賢一?)の会話スタイルも定番でした。いつもは別に独立していましたけれど、4章小説についに融合というところでしょうか。
たぶん「造物主」まで登場となりましたので、そこまでの高みから見おろしてしまうと、リストラも人類も「ちいさいちいさい」。すべては余興と達観すれば、悩み事など露と消えるのかもしれません。
遊んでしまう、ということ、文芸に限らず、私たちの救いになっていると思います。承の章のところで述べました「現実をシミュレートしてみる」という重い行き方でさえ、言うなればゲーム。痛かったりしても、仮の現実を遊んで仮の感覚を味わっているという大元は変わりないはずです。つまり、そこにも救いは見えるはず。
あと一歩進んで、現実と寸分違わないそれを味わうこと。要は、現実そのものを生きることにも救いがある、どのような現実であれ。・・とまでいければ、怖いものはもう何もないのでしょう。こういうこととも言えそうです。
結の章
造物主まで行ってしまったので、あとは地上に戻りました。構造としては、起、承、転で主要人物が出揃い、結の章で一ヶ所に集まるという形です。
起の章の彼の数年後か十数年後が、おっさんです。人変わりしたみたく下品かもしれません(爆) でも、私は、品位がどうのよりも生命力があるかどうかが大事と感じます。起の章の彼がこのおっさんのようにまでなれば、あとはもう大丈夫かと思います。(もちろん一つの枝分かれですから、これが理想というわけでもないんですけど)
起の章の彼と承の章の彼は同一人物という流れとも言えますが、結では別のキャラと扱いました。カオスさんが「人以外の生き物になる」願望なら、私は「女の子になる」願望かも、と連想が跳びました。若くてはすっぱな女性職員が、承の章の彼が最初に変異した生き物としてみました。
転の章から地上に降臨する健一が、髪の紅い青年で、これはストレートでした。
彼らの属する組織が、なにやらよからぬことをしている雲行きですけどね。しかし、誇張していえば、まっとうな商売、誰はばかること無い生産活動、使命感みなぎる行政と思われていたものが、彼ら自体は変わらず前例をなぞっているだけなのに、何かのはずみで社会の敵に裏返る、唾棄すべき悪者集団とみなされる、なんてこと、ここで説明するまでもなく、みなさん目の当たりにしているわけです。
最初から悪いことをしていると十分自覚している組織のほうが、まだしも姿はいい、元気がある、歪みが少ないという気がして、それほど嫌いではないです。天下を取って悪を善に裏返そうともがき、結局は、あと少し届かずに滅びていく予感も捨てがたいし。お話の中のことですけれど、やはり、どこか願望はあるのかもしれません。