めたせこいあ第2輯

「めたせこいあ」とは 

 『めたせこいあ』はカルチュアセンターのテニスコート脇に亭々と佇立する大木。日本ではアケボノスギと も呼ばれ、中国名は水杉”生きている化石”として知られている。
高さは35メートルにも達し、幹の直径は2〜3メートルにも及ぶ。
一途に高みを目指す力強さ、飾らぬ孤高の姿には風格さえ感じさせるものがある。

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・・・・・・めたせこいあ第二輯・・・・・・

∞∞∞∞∞∞∞ は じ め に ∞∞∞∞∞∞∞
あれからみんな年輪を一つ増やしました。
短歌会も三年目です
合同歌集『めたせこいあ』第二輯は、この年輪の記憶、
そして歌会二歳の記録。

今度は随筆も加わって、少しばかり厚くなりました。
育ち盛りのみずみずしいエネルギー・・・・・
いつまでも、そんな匂いのする歌集が発行できることを祈ります。
・・・・・「めたせこいあ」に見守られながら   (1999/6)


めたせこいあ第二輯(H11/6)より抜粋


(カ行から始まる五十音順)

    ・・・  ゆらりとんぼ   ・・・       影山 芳郭

  ● 家を焼かれ父殺されし爆撃も紛うことなき我の青春

  ● ゆらりゆらり竹のとんぼを止まらせて少し悩みを忘れていよう


   ・・・ いつしか馴れて   ・・・       鈴木 千代子

  ● 二人居もいつしか馴れて口数の少なきままに編む手休めず

  ● 春一番が庭隅に寄せたる枯葉たちパートナー替えワルツをおどる


   ・・・   半世紀経る   ・・・       高田 志津江

  ● 暗がりにほのかな香り夕顔は灯りをさけて真白に開く

  ● 戦前の赤道直下のパラオ島木陰は凉し半世紀経る


   ・・・   遺 伝 子   ・・・       中村 はつ子

  ● 遠き日の父の後姿 夕光に長き吾の影先立つ見れば

  ● 夕光にわがひざの屈伸大写し斯く斯くに持つ父の遺伝子


   ・・・  紛れてゆかな    ・・・       長尾  朝子

  ● 初夏のプール彩るプリズムのスカイブルーに紛れてゆかな

  ● 伸ばしてはならぬ新芽を刈り込むと姫柘植の畝の見通しに立つ


    ・・・   夕  虹   ・・・        仁科  初代

  ● 篁に座すは芭蕉か藍色の小鉢の中の奥の細道

  ● 結末は美しくありたしひんがしに師走三十日の大き夕虹


   ・・・  風にゆるる  ・・・         廣田  庸子

  ● うなだれてどうしたのお前 ひなげしの蕾のように風にゆれてる

  ● かんがえに考えてたった一言をりんどうに添える汝への絵手紙


   ・・・  寒 牡 丹  ・・・         保坂  和子

  ● 雪んこの藁の帽子のなかは春寒牡丹咲く鎌倉に来ぬ

  ● 咲き誇るのうぜんかずらの蔓のびしこの家の主はことし初盆


    ・・・   紙面を探す  ・・・       山梨  公子

  ● 朝なさなローズマリーの香の如き記事は無きかと紙面を探す

  ● 「ござんなれ」花屋の花が一斉に我に視線を投げかけてくる


    ・・・   山   居   ・・・        山梨  隆司

  ● 梅雨しとど降り止まぬ日は灯を点し写経一巻黙深きまま

  ● 放屁してやおらに動く山居かな今日も日は照る明日も日は出る


    ・・・97/9〜98/8 短歌十首・・・     山梨 友五郎

  ● あのひととれすびあんごとみへまするすこしやけますこれこいかしら

  ● 次の冬佳人とルンバ踊らんとこの夏くどかん八頭身の女


    ・・・  母 を 思 う ・・・        山梨 八重子

  ● 古布を裂きて細帯織りくれき手にとれば浮かぶ母の面差し

  ● 木下なる庭一面の小さき穴蝉時雨思ふ枯葉寄せつつ


    ・・・ 掌 を 振 る  ・・・        和田 亥世子

  ● 船客の窓は水槽のゆらめきに魚影のごとくわれに掌を振る

  ● 夕闇に川底と見ていし煌めきのしだいに車灯の流れなじみ来


    ・・・ 小 さ な 虹  ・・・        池谷  照子

  ● 発育の遅れたる鉢の朝顔にそそぐ水先小さき虹たつ

  ● 素枯れたる朝顔の蔓はずしゆく触れてこぼるる種ひろひつつ


    ・・・  息子夫婦と   ・・・        上田  正恵

  ● 浜名湖を見下すホテルロイヤルへ息子夫婦に誘われて来ぬ

  ● 山茶花のちらほらと咲く誕生日祝うが如く我を迎えり


      ・・・ 朝 の 会 話 ・・・        植野  京子

  ● 妻 女房 家内 これが と夫が言い我はその時その顔になる

  ● ドライヤーの音をくぐりて夫と息子が鏡の中に朝の会話す


    ・・・ 幼 年 の 風  ・・・        植松  法子

  ● 十重二十重くぐる鳥居のその奥にたしかに巨大な稲荷の狐が…

  ● 幼年の風に吹かれて帰り来ぬ十八番吉のお神籤を手に


    ・・・ 祈 り 祈 り  ・・・        帯金  喜代

  ● 雷鳴の頭上めがけて狂ふ夜はやみくも唱ふ般若心経

  ● したたかに共進化するとふ植物の今朝は露草の藍によりゆく


あ と が き



『めたせこいあ』第一週に「私たちの会はまだ無事に育つかどうか定かでもない苗木に似て」とありますが、このたび山梨隆司さんのご尽力により第二輯が発行されました。
 日頃、大方の仲間は誠に飄々としてこの会に臨み、自らの歌を語り、経験を述べ、質疑を語り合っておリます。その誰もが勉強中であり、規定の二時間は、あっという間に過ぎてしまい、折には三時間に及ぶこともあります。
 私たちは、自らの目で、心で、確と捉えたもの、ことがらを、自由に生き生きと詠ってゆきたいものです。 しかし〈言うは易く〉の諺通り表記、文体、基本、などを思うとき独りよがりに傾き易いことを自戒せねばなりません。
 相互理解、研鑚のうえからも、時折湧き上がる笑い、厳しい批評、感動の場としての勉強会が続き快い充実感を以って三年目の学習に励みたいと思います。
 折りしもこの春には静岡県歌人協会長の高嶋健一先生の歌碑が皆さまのお力添えにより清水市の船越堤公園へ建立されました。これを機に清水市に於ける短歌活動は益々活発化するものと思われます。先生は「うまい歌よりいい歌を」と説かれ一人一人の個性を大切にご指導くださるかたです。
歌碑は

 てのひらのくぼみに囲ふ草蛍移さむとしてひかりをこぼす

ですが、いかがでしょうか、しみじみご鑑賞下さい。

長 尾 朝 子

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Last Update:08/03/09