めたせこいあ

「めたせこいあ短歌会」を紹介します 

 平成8年(1996)に創立された清水市高橋のカルチュアセンター短歌教室が、平成十三年(2001) カルチュアセンター廃止により、“めたせこいあ”と改称した。名称は会員の合同歌集”めたせこいあ”からとったもの。
  講師は、水甕(みずがめ)同人の長尾朝子氏、植松法子氏。会員数、平成15年3月現在 20名
合同歌集 めたせこいあ第一輯(H10/4) 第二輯(H11/6) 第三輯(H14/7)が発行されている。  

会事務所 清水市高橋3−1−3

2004/01/15・第二輯に続き随筆をアップしました。
2005/07/13・第三輯をUPしました。
2008/01/31・第四輯をUPしました。
2008/03/09・いのちひと匙をUPしました。

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・・・・・・めたせこいあ第一輯・・・・・・

∞∞∞∞∞∞∞ は し が き ∞∞∞∞∞∞∞
この本は清水カルチュアセンターに集う短歌会のメンバーが、 一年余りの作品の中から自選した合同歌集第一輯です。

その、カルチュアセンターのテニスコート脇や、すぐそばの   高徳山高源寺境内に、亭々と佇立する大木が見られます。メタセコイア   という木です。

   一途に高みを目指す力強さ、凛々しさ、飾らぬ孤高の姿には、品格さえ   感じさせられるものがあります。

そこで本書のタイトルにその名を借りました。
私たちの会はまだ、無事に育つかどうか定かでもない苗木に似ていますが、 あのメタセコイアが見ています。見守られています。



めたせこい第一輯(H10/4)より抜粋



    ・・・  眼 差 し  ・・・       池ケ谷 照子

  ● 透明さもはや戻らぬ一対のグラス戸棚に並べて仕舞ふ

  ● 漕ぎためてなを漕ぐ木馬に乗る幼なジョッキーのやうな眼差しをせり


   ・・・  桃色の芙蓉  ・・・       上田  正恵

  ● 実生なる桃色の芙蓉ゆれている〈雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ〉

  ● 弟の顔浮かび来る拝殿に巫女の舞い舞う終戦記念日


   ・・・ カタカナつなぐ  ・・・       植野  京子

  ● 子は友と過ごすイヴの夜たっぷりのスープ二つに夫とり分ける

  ● やや高きヒール気になる木の舗道ひびく靴音カタカナつなぐ


   ・・・  プリマベーラ  ・・・       植松  法子

  ● 信仰をもたぬ我はも祈らせてピエタに注ぐヤコブの梯子

  ● 〈ルネッサンス〉熱く語れる教師なりき「プリマベーラ」にま向かう今し


   ・・・  われの長旅    ・・・       帯金  喜代

  ● 疾風なぎ煌めく北斗に侘しめばおぼおぼ辿るわれの長旅

  ● 盛りきて気付く一もとの山桜人ら忙しくただに過ぎゆく


    ・・・  こ け し  ・・・        影山  芳郭

  ● その昔飢饉続きし山里の墓に孩児の名の多かりし

  ● 首を廻せば赤子の泣ける声がするみちのくの〈こけし〉子消しの話し


   ・・・ 寄り添う如く  ・・・        鈴木 千代子

  ● 自ずから寄り添う如く傾ける秩父の野辺に地蔵が二体

  ● この辺にまつりあるらしゆかた着て風船持ちし子等はしゃぎおり


   ・・・ 亡母と見紛う  ・・・        高田 志津江

  ● 庭隅にかおりただよう沈丁花一枝手折る夭逝の子に

  ● 半世紀過ぎて訪ねし伊豆白田いで来し媼亡母(はは)と見紛う


    ・・・ 夏をゆかしむ  ・・・        中村 はつ子

  ● 先に立つ思いにふとも振り向けど庇われいるは吾かもしれず

  ● 昼食を水菓子に済ます二人居の気安さに馴れ夏をゆかしむ


    ・・・  花だまり   ・・・        長尾  朝子

  ● レム睡眠醒めてまばゆき小庭辺に金木犀は花だまりなす

  ● 神酒の海・豊の海・のわれの目にいまだ兎と見ゆる満月


    ・・・ 琥珀に揺るる  ・・・        廣田  庸子

  ● グラスかざし透かして見れば虫の音に聞き入る夫も琥珀に揺るる

  ● 別れこし母を思えば菜の花の花野のあかりふんわり見ゆる


    ・・・  十六羅漢   ・・・        保坂  和子

  ● おせちの支度嫁にゆずりてのんびりと出来る暮らしが少し淋しい

  ● 木漏れ日におどける十六羅漢像中の一つに亡き夫をみる


    ・・・夫と妻との縁五十年・・・        山梨  公子

  ● 病み易き君との縁五十年妻たり夫となりたる時も

  ● 臥す君を疎みし事もままありきこの手を引きて草とりし日も


    ・・・  心臓さん   ・・・        山梨 友五郎

  ● 心臓さん八十年も打ちつづけ退屈でせうネ作曲を始めたの(不整脈)

  ● 十年まえ踊りし人とふと会ひてそのイントネーションなつかしき


    ・・・  春夏秋冬   ・・・        山梨  隆司

  ● 草色に染みて渡りてくる風よ真向かひ立てば髪なびかせよ

  ● ひたすらに旧約聖書を説くひとと遺伝子を論ずややムキになり


      ・・・ 泰 山 木   ・・・        山梨  八重

  ● 雨戸繰れば鉢一杯の桜草風にゆらゆら揺るる日曜

  ● 菩提寺の泰山木は幹太く樹齢は七十有余年とぞ


    ・・・ ひかりの海   ・・・        和田 亥世子

  ● 蒼き月白き桜に逢い来つつわれの年月ちちははの亡き

  ● わが街の一番高き坂下りひかりの海へ漕ぎ出す自転車


あ と が き



今から五十年程前、この地域に「紫苑会」という文化団体がつくられ、その中で短歌会なども開かれておりました。青年男女に交じって、アララギの千葉清作さん(銀行員)などもメンバーでした。時には前山周信先生のご指導を受けたこともありました。

時代は過ぎ、近年ここにかってのメンバーでありました、山梨友五郎、公子夫妻によりカルチャーセンターが開設されました。その一環として短歌教室が開講され、一年余りがたちました。

かって「紫苑会」のメンバーだった方々に加え、全く初心の方、既に結社に入っている人と、実に様々なキャリア、年代の人たちが共に勉強する事になりました。

往年のメンバーたちの豊な個性が生み出す洒脱な作品、指を折りながら作った初々しい作品、若い人たちの新鮮な感性などが、刺激しあい、楽しい雰囲気の中にも、学ぶことの多い一年でした。

目を輝かせ、身を乗り出して自由に意見を述べあう会は、指導者不在という中で独自の雰囲気を持った、まことに生き生きとした短歌会になっていると思われます。

さらに清見潟大学塾の前学長だった山梨隆司さんがパソコンを駆使してこの歌集の発行にご尽力くださいました。すばらしい先輩方が共に机を並べてくださる幸せをかみしめております。

心より御礼申し上げ、合わせてこの会の末長い継続を念ずる所存です。

 

平成九年 晩秋

            
長尾 朝子


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Update:03/09/23