☆文久二年四月……
俺の名前は土方歳三。試衛館で剣術修行中だ。
今日はなんだか知らねぇが、朱雀館の連中が喧嘩ふっかけて来やがった。だいたい連中は志が低い。奴らの女を俺が奪ったからって天下国家に何か問題が起こるというのだろうか?。問題はないはずだろう。それなのに、やれ「俺の女に手を出した」だの「間男」だの言われるのは心外だ。戦うなら天下の為に戦いたいもんだ。
ま、それはともかく奴らは弱っちい。たまたま俺と一緒にいた総司と近藤さん達で、撃退してやったぜ。楽勝だったな。
でもなんだか、俺を見る近藤さんと総司の目が冷たい。何故だろう。早く道場へ帰って天下国家を語り合おうぜ!。
☆文久二年五月……
時代は激動している。こう見えても俺も佐幕攘夷の志士のつもりだ。山南からも町に出て、色々な人物と話した方が良いと助言を貰った。インテリなのが鼻につくが、良いヤツだ。でも、俺はまだ目録どまり。世の喧噪さに目を伏せ、剣術修行にせいを出す事にした。
そんなある日、近藤さんが日野へ出稽古へ行ってくれと言ってきた。俺は総司と共に日野で弟子どもに稽古をつけてやった。井上源三郎、通称源さんも稽古に参加した。で、源さんが江戸で修行したいというんで、源さんを連れて江戸へ帰る事になったんだが、その帰り道の事だ。また、朱雀館の連中が襲って来やがった。でも俺達の敵じゃねぇ。かる〜く撃退。暇な奴らだ。この後、やっぱり総司と源さんがぶつぶつ言って、俺を冷ややかに見つめる。そんな目をするもんじゃねぇ。この日ノ本がやばいって時に女の問題なんて小せぇもんだろう。なぜ、俺が非難されなくちゃならねぇのか解らねぇ。
☆文久二年九月……
あれからずーっと剣術修行しつづけて、試衛館道場の師範代になった。そういや、ちょっと前に斉藤一とかいう凄腕が士衛館に住み着く様になった。近藤さんの知り合いらしい。俺も剣術修行に精を出す。諸外国がこの日本を狙っている今こそ、剣の腕を磨いて夷人たちに侮られねぇ様にしなくちゃならなねぇ。そんなある日、またまた朱雀館の連中が来やがった。今日は試衛館に他流試合の申し込みだ。どうやら、試合で決着を付けようって事らしい。竹刀の試合は苦手だぜ。って事で、近藤さんに頼まれて練兵館へ助けて貰う事にした。ここで、永倉新八というヤツが助けに来た。なかなかの腕らしい。
試合の当日、藤堂が勝ち、斉藤が勝ち、沖田も勝ち、永倉も勝った。で、俺の番。大将戦だ。朱雀館の奴らも援軍で上田馬之助って剣士を用意していやがった。北進一刀流の坂本龍馬に負けるまで不敗って厄介なヤツだ。しかし、俺も修行を積んできた。そう簡単には負けねぇって思っていたらあっさり二本取られて負け。情けねぇ。俺もまだまだだ。修行に精を出すことにする。近藤さんにそう言ったら、近藤さんにこう言われた……「だいたい歳、お前の女問題でこんな事になってんだぞ!。」だと。いやぁ、悪い悪い……でもよ、夷敵と戦う為、天下国家を語る為には英気を養わなくっちゃならねぇ。俺は女遊びが一番だと思うんだけどよ。って言ったらみんな冷ややかに俺を見る。何故?。
☆文久二年十月……
そんな、ある日の事だ。近藤さんがいきなり俺のと勝負を希望してきた。おいおい……いきなりどうしたってんだ?。この試合に勝てば免許皆伝だという。で、戦って見たらあっさり二本取って俺の勝ち。免許を得た。俺もようやくココまで来たかと自分で自分を誉めてあげたいと思う。
剣術の腕も十分だ。夷人どもが攻めてきても大丈夫だろう。次は兵法だ。知恵というヤツだな。これを鍛えるには、学問をするしかねぇ。俺は考えた。藤堂も原田も夷敵夷敵というが、夷敵が何者なのか誰も知らねぇ。まず敵を知る事だ。そこで、俺は蘭学を始める事にした。諸外国の事を知ってこそ夷敵に立ち向かえるってぇもんだろう。文武両道に秀でてこそ男というもんだ。剣術だけの猪武者にゃぁなりたくねぇしな。
☆文久二年十一月……
しかし、蘭学塾入門も楽じゃない。何しろ俺は浪人者だからな。幕府がやっている蕃書取調所や築地の海軍伝習所に入って、一流の蘭学を習えたらと思ったが、軽〜く門前払いときたもんだ。かといって、佐久間象山とかいう学者の塾に入るのも気が引ける。ああいう何時も態度のでかいヤツは嫌ぇだ。で「高島砲術」を選んだ。なんでも西洋の銃を初めて二本に持ち込んで、しかも西洋兵術を将軍様に紹介したっていう高島秋帆の塾だ。まさに俺にうってつけと言えよう。
早速入門して、蘭学書と取っ組み合いの日々……。ココで俺は、生まれて初めての衝撃を受けた。銃だ!。火縄銃の事じゃねえぞ。西洋の銃だ。雨や風の日でも撃てるんだ。しかも、その射程距離は、火縄銃の三倍だ!。俺達の天然理心流も斬り合いなら負けねぇが、こんな距離から撃たれたんじゃあ敵陣にたどり着く前に全滅だ。ライフルっていう溝が刻み込んであって、火縄銃のように弾が曲がっていかねぇ。弾が真っ直ぐ飛んでいくんだ。そのせいもあって命中精度も高いそうだ。弾丸だって、丸い玉じゃねぇ、ドングリみたいな形をしてんだぜ。これを西洋の軍隊は、みんなで装備しているらしい。冗談じゃねぇ。旗本八万騎だって刀や槍しかねぇ。むむむ……剣術さえ強けりゃ夷敵なんて楽勝と思っていたんだが……。こいつぁとんでもない間違いだった。
こんな知識を得ただけでも塾に入った甲斐があったってもんだが、それだけじゃねーぜ。そこで知り合った同門の塾生たち…近藤さんや沖田たちとは違った考えも持つ仲間も増えた。最初に知り合ったのは相楽総三って奴だ。なにやらついも沈痛な面もちをしている。口が開けば「天皇がどーの」とか「攘夷するのだ!」だ。どうも幕府に良い感情は持っていない様子。流行の尊皇攘夷派って奴だ。俺は相楽に言ってやった。「今、幕府は軍政改革に乗り出しているぜ。もう少し待てば西洋から銃を買い入れて最強の軍隊が出来る。」とな。相楽は目を丸くして「な、なんと…ならば我らの悲願攘夷達成も間近という事か!?」とびっくりしていやがる。俺はすかさず畳みかけた「天皇というが、将軍家はその天皇から天下を任された正式な日本の政府だぜ。こいつを無視しちゃ道理が立たねぇ。」ってな。相楽は「むむ…そうか…幕府も日本の事を考えていたのだな…」と考えを尊皇から佐幕へと変えた。俺達は毎日語らい、無二の親友となった。相楽から尊皇派の持つ情報も手に入れ世の攘夷派の動きがだんだんわかってきた。そんな頃、塾に訪れた奴がいる。清川八郎って奴だ。なにやら西洋銃の事を知りたいらしい。俺は面会を申し入れた。清川といえば、たびたび相楽の口からその名を聞いている。なかなかの大物だって話しだ。話し合ってわかったが見識が高く、知恵もある奴だ。こいつも相楽同様尊皇派の活動に詳しく論破されそうになる。しかし、意外な弱点もあった。幕制改革の動きはあまり知らないらしい。そこを突破口に俺は議論を進めた。清川も相楽同様に俺の説得を聞くようになり、ついに佐幕派に転じた。他にもとんでもない奴がいる。幕臣の渋沢栄一って奴だ。奴も高島砲術で蘭学修行していた。で、奴とも話し合った。奴は元から佐幕攘夷思想と俺と同じ考えだから話しは早い、すぐに意気投合した。でもよ、所詮俺は浪士に過ぎねえ。幕府に働きかけたいが手段も身分もねえ…そんな不満な毎日だ。清川さんに相談したら、清川は「幕府も考え方を変えつつある。身分など越え、世に出るべき英傑はかならず世に出る。私には秘策もある。そうだ、土方君も私同様に幕府の奉行に会って話しをするといい。」と、簡単に言いやがる。あんたはいいよ。名が売れてるから幕府のお偉いさんも会ってくれるだろうさ。でも俺は名もなき浪士だぜ。プータローだぜ。高島屋の女中に手を出してクビになった男だぜ。と愚痴ったら、隣にやってきた渋沢の野郎が「へ?。奉行に会いたいの?。んじゃ、紹介状書こうか?」と言い出した。「んな紙切れ一枚で会ってくれるんのかよ?」と聞くと「うん」と頷いてきやがった。そういやこいつ幕臣だったな。
「マジで?!ホントに会えるの?」
「うん。マジで。俺幕臣だっし〜。簡単簡単。」
「渋沢君。土方君の知恵は生かすべきものだ。ぜひ紹介状を書いてあげたまえ。」
「んじゃ、書くぞ。誰に会いたいんだ。」
「いや、いきなり幕府のお偉方の誰に会いたいって聞かれたって、俺りゃ良く知らねぇし…」
「じゃ、一通り書いちまうぞぉ。」
てな訳で、幕府奉行ご一同、小栗忠順を手始めに、井上清直、岩瀬忠震、岡部長常、永井尚志、矢田堀景蔵、鳥居櫂蔵の紹介状を一揃え手に入れた。うわぁ…マジかよ…。
こうして高島砲術塾生、清川八郎を筆頭に、俺土方歳三と相楽総三、渋沢栄一の四人は、力を合わせ幕府を中心に攘夷を行い日本を守ろうと誓い合った。
☆文久二年十二月……
またまた朱雀館の連中がきやがった。まったく……。俺が夷敵に勝つためには何をなすべきか考えあぐねているっていうのに……奴らと来たら無知無策。馬鹿な奴らだぜ。とはいえ、話し合いに応じる様な連中でもない。俺は近藤さんに「二つの組を作って仕掛けよう。」と提案した。近藤さんは「祭りの喧嘩だな!」と大はしゃぎ。おいおい近藤さん……あんな奴らに勝ったって自慢にゃならねぇよ。夷敵に勝てない事には……。
で、一番組は俺を大将に沖田、斉藤、永倉。二番組は近藤さんが大将で、源さん、原田、藤堂と決まった。でも作戦すらいらなかったかもしれないほど奴らは弱かった。かる〜く俺達の勝ちさ。まるで、経験値稼ぎの様だ。悪いねぇ。これで朱雀館の連中は全滅だろう。もう付き合わされる心配もねぇ。心おきなく蘭学修行に励めるってもんだ。
年が押し詰まってから、山南と藤堂が妙な話しを持ち込んできた。なんでも清川八郎が浪士を募って幕府の一部隊として京へ上り、将軍警護を行うって話しだ。本来なら将軍様の警護は旗本の役目だが。まぁ奴らはダメだな。安穏な生活になれて戦う気力すらない。そこで浪士をって事なんだろう。丁度試衛館道場も不景気の煽りでぶっ倒れる寸前だから、転職先には丁度良いってんで近藤さんは道場を上げて参加するつもりだ。俺はもう少し高島砲術で蘭学修行したかったんだが、まぁ連中についていってやらねぇといけねぇんだろうな。それにしても清川さんの言っていた秘策ってなこの事だったんだな。
「清川さんなら俺も良く知っている奴だし。やるなぁ…さすが清川八郎だ!」
「またまたぁ、土方さん尊皇攘夷派の巨魁と知り合いの振りしちゃってぇ。」
「フリじゃねぇって。清川さんだろ?。高島砲術で同門の塾生だからさ。」
なんて言ってやったら、近藤さんと山南さんは目を丸くして黙り込んだ。
「土方さん…それはすごい事ですよ!。攘夷派最高の頭脳、清川さんと仲がいいなんて!。」
と山南。見直したか!へへ〜ん!。
「歳〜。一人だけずるいぞ〜。俺にも紹介してくれ〜。塾に連れてってくれ〜。」
「近藤さん。これで我々の浪士隊参加は正式決定間違いなしですな!。清川さんは幕府のお偉方にもあえる立場にありますから、これで我らも清川さんを通じ幕府に対して働き掛けができますよ。」
「山南さんよ。別に清川さん抜きでも、幕府の奉行連中なら会えない事ないよ。俺、紹介状一揃え貰っちゃったし…。」
と山南に例の紹介状の束を見せた。
「……………。」
なにやら、山南の手が紙の束を手に震えている。
「ど、どうしたんですか!?コレ…?」
「どーしたもこーしたも、幕臣の渋沢って奴から貰った…。」
「…………。」
いや、別に泣く事はないだろ。山南さんは大げさだなぁ。
「歳〜ずるい〜ずるいぞ〜一人だけ抜け駆けすんなよ〜。」
と、いきなりクビを閉めてくる近藤さん。んな事言われても困っちまうよなぁ…。
☆文久三年一月……
年も明けて元旦。一句詠みたい所だが、近藤さんに佐藤彦五郎さん所へ年始参りに行けと言われたんで出かける事にする。今回の訪問は、京都行きの件もある。佐藤さんへ会って挨拶してみると、早速浪士組の話しになった。佐藤さんはいきなり「京へ行くなら、この刀を持って行け」と俺に名刀・兼定を手渡す。こいつぁ良い。良く斬れそうだ。お礼を言って帰路につく。江戸に帰ってからも蘭学修行。京都出立は二月って話しだからギリギリまで西洋の知識を頭に詰め込む事にした。
☆文久三年二月……
ついに浪士組京都出立の日が来た。今の京都といえば暗殺が流行ってめちゃめちゃだって話しだ。いよいよ俺もその風雲の中に飛び込むのかと思うと腕が鳴る。本庄宿についてから一波乱あった。宿割りを頼まれた近藤さんの落ち度で、芹沢鴨率いる一派の寝る場所がないってんで、あいつら家をぶっ壊して焚き火をやりやがった。結局こっちの平謝りで事は済んだがとんでもねぇ連中だな。
京都へついたらついたでもう一波乱。清川さんが、「京都へ来たのは将軍警護が目的ではなく、朝廷の命に従って尊皇攘夷の先鋒になるためだ!」とか言い出した。幕府はまんまと清川の策略に引っかかったって形だ。幕府の金で集まった兵が丸ごと朝廷に寝返ろうってんだから幕府に取っては裏切りだ。近藤さんが怒るのも無理はねぇ。そう思っていたら隣の部屋から芹沢の怒鳴り声が聞こえてきた。連中も騙された事が不服の様だ。でも、いったいどういう事だ?。清川さんは俺達と同じ佐幕派のはずだ。それが尊皇派側になっているなんて信じられねぇ。俺は清川さんの所に駆け込んだ!。
「清川さん!」
「土方君か…来ると思っていたよ。」
「こいつぁ…一体どういう事だ!?。あんた佐幕派だろう!?。」
「ああ…しかし土方君。今私が、佐幕派となり尊皇派を切り捨てる訳にはいかんのだ…。」
「で、でもよ…このままじゃあアンタ…佐幕派連中から恨まれるぜ?。」
「わかっている。しかし、幕府の旗本達だけでは攘夷はできん。尊皇派の多くの志士の力を取り込まねばならんのだ。だから今は尊皇派のフリをして彼らの信用を得ねばならん。それに幕府を裏切る訳ではない。幕府が攘夷の先頭に立った時、我が浪士隊はその先鋒に立つ。」
「し、しかし…佐幕派からは信用を失う…」
「だからこそ君を浪士隊に引っ張り込んだんだ。私は尊皇攘夷派の志士を率いる。君は我が浪士隊から分裂し、佐幕攘夷派の組を作りその先頭に立て!。いずれ時が満ちた時、君と組と私の組が合し、力を合わせ幕府と共に攘夷を行うのだ!!。ただし、この事は君と私だけの秘密だ。近藤さんといえど他言は無用だぞ。」
「清川さん!!!」
「土方くん!!!」
清川さんの秘策はどんでもない策だった。たしかに凄い策だ。でも、俺の心の中に何か大きな不安があった…清川さんの身に何事もなければいいが…。俺達は再び会う事を約束し分かれた…。今思えば、あれが今生の別れとなった。ともかく、俺は清川さんの言葉通り自分の組を作る事にした。その為には仲間がいる。清川さんに反感を持っている連中はすべて俺が担当という事だろう。目をつけたのは芹沢一派だ。芹沢も清川に一杯食わされたと激怒している。俺は芹沢と手を組んだ。気に入らねぇ連中だが、今は一人でも多く仲間が欲しい。それに芹沢のヤツは、あれで会津藩に人脈があるらしい。京都守護職に事の次第を願い出れば、なんとか京都へ残留できるかもしれねぇ。
☆文久三年三月……
清川の浪士組は江戸へ帰り、俺達は京都へ残った。会津藩からのお達しが来るまで暇だ。この暇の時間を利用して蘭学修行に精を出そうと思い、一路大阪の敵塾を目指す。が、そうは簡単にはいかなかった。なにしろこっちは単なる身元不明の浪士。会津藩から「勝手に出歩くな」って事で京都から出る事はかなわず。まぁ、仕方がないんで、多少は政治の事を知っておこうと町へ繰り出す。俺も一人の攘夷家として同じ思想の者たちと語らい、同志を得て政治の動きを把握しなくちゃいけねぇ。で、島原へ繰り出した。これがなかなか良い所でね!。思想家達が集まっては語らい、遊女達も巻き込んでの大激論。当然、遊女達も彼らの行動に詳しく、かつ政治の細かな動きまで知っていやがる。俺はそこに目を付けた。遊女達と仲良くなって彼女たちから情報を得るってぇ寸法だ。これは思いの外大成功で、薩摩藩の動きや尊皇派の動きが手に取る様に解った。まぁ……お金は湯水の如く消えていったけどな……。これも天下国家の為よ!。志士が国事に奔走しようって時に、金なんて細かい事を気にしていたらやっていけねぇぜ!。俺は島原と祇園を毎日通いまくったね。
会津藩からも許可が下り、正式に京都守護職お預かり浪士組になったって訳だ。組の名前も「新撰組」に決まった。隊服は浅黄色のダンダラ模様。ちょっちハイラカで恥ずかしいが、なんとなくお気に入り。思わず路上でくるくる廻ってみたり〜。おっといけねぇ。調子に乗り過ぎか。でもよ……ちょっち問題もあったりする。
「歳、芹沢さん達の事を聞いたか?。」
「あん?、なんの話しさ?。」
「連中、毎日天下国家の為だって言って島原や祇園で遊びまくっているって話しさ。」
ぎくっ!
「あ、あ〜。そうなの?。俺は知らねぇ。でも遊郭で政治の動きは解るのは確からしいぜ。」
「歳〜。俺達は京都へ遊びに来たんじゃないんだ。京都守護職の元で、京都を尊皇激派から守る為にココにいるんじゃねぇか。なのに毎日毎日島原と祇園に通い詰めじゃ、会津中将様になんて報告するんだ?。遊女相手に国事を論じてますなんて言えないだろう?。」
ぎくぎくっ
「あは、あはははは〜。そうね!。そうよね!。いけない事だよね!。」
「何冷や汗かいてるんの?。」
「や、やだなぁ。近藤さん。気のせいだよ。」
や、やっべ〜。遊郭通いもあぶねぇな。気を付けねぇと芹沢と一緒にされちまう所だったぜ。
☆文久三年四月……
ともかく、芹沢達の行動を押さえる為、俺は規則を作った。「局中法度」だ。これに違反した者は全員切腹にするという厳しい内容。烏合の衆にならない様に規則で縛っておかないと大変な事になっちまうからな。それと同時に、俺は芹沢さんと新見さんに論戦を挑んだ。奴らは尊皇派で、将軍を何も敬ってはいなかったからな。それを正すためにも話しをしようと思った訳だ。芹沢も新見も天皇のご意志元攘夷をしなければならんと主張してきた。だから俺は言い返してやったのだ。「諸藩の財政事情を知っているのか?。借金だらけでとても諸外国と戦を出来る状態じゃねぇよ。」ってな。芹沢も新見も、そんなに諸藩は貧乏なのかと驚いて俺の話しを真剣に聞くようになった。まぁ、経済感覚がぶっ飛んでいる連中だからな。知らねぇと思ってたんだ。戦は懐具合で変わってくる。それを考えないと負けると言ってやった。さらに、「幕府は参勤交代の緩和と軍政改革でなんとかしようとしている。」と教えてやったら、唸りながら「むむ!、幕府もそこまで真剣に努力しているとは……」と気持ちが動いたらしい。で、奴らも佐幕派になってくれたって訳だ。
新撰組の組織も考えた。
局長 芹沢鴨
総長 新見錦
副長 近藤勇
土方歳三
一番隊隊長 沖田総司
二番隊隊長 永倉新八
三番隊隊長 斉藤一
四番隊隊長 松原忠司
五番隊隊長 武田観柳斎
六番隊隊長 井上源三郎
七番隊隊長 谷三十郎
八番隊隊長 藤堂平助
九番隊隊長 佐々木愛次郎
十番隊隊長 原田佐之助
監察 山崎蒸
島田魁
河合耆三郎
☆文久三年五月……
各隊に警備巡回の任務に当たらせ、監察には尊皇派の動きを調べる様に指示した後、俺は福井藩士の村田氏寿という人物と面会を持った。福井藩といえば開国派だ。俺は攘夷派だが、その攘夷に疑問を抱いていたからだ。どうやったって夷敵に勝つ方法は、夷敵の武器を手に入れるしかないのだ。で、村田も同じ事を言っていた。だからそこ開国なのだと。開国して諸外国と対等に戦える力を蓄えるのだと。俺はついに夷敵に勝つ方法を見つけたって訳だ。その方法こそが開国だったのだ!。俺はすぐに開国派に転じた。
屯所の前川屋敷に帰ってくると、芹沢のヤツが、佐々木君を処刑したという。いったいどういう事だ?。と近藤さんに聞いてみたら、どうやら女が原因らしい。佐々木君の女を芹沢が横取りしようとしたんで、佐々木君は駆け落ちしようとしたが、芹沢一派に待ち伏せを食ったって話しだ。「局を脱するを許さず」局中法度に照らせば、確かに佐々木君は切腹だが……。佐々木君は、将来有望。そこを見込んで九番隊隊長に大抜擢していたのに……芹沢め……。
(つづく)