胃潰瘍

胃潰瘍は古くから知られる病気の一つですが、現代人のストレスのせいか減る気配はありません。
特にヘリコバクター・ピロリ菌、鎮痛剤(高齢者が増え腰や膝が痛いということで服用することが多い)、アスピリンの使用などが原因で胃潰瘍が多くなっているようです。症状がある場合から全くない場合まで様々です。しかし、現在では胃内視鏡検査が非常に簡単にできますので発見率が高くなっています。しかもよく効く治療薬ができていますので昔のように手術をすることは非常に少なくなっています。基本的には十二指腸潰瘍も同様です。胃の壁が欠損してしまう状態が胃潰瘍ですが、粘膜内にとどまっている場合は“びらん”といって胃炎と診断されます。この場合は治療ですぐに軽快しますが、進行すると潰瘍となります。
胃潰瘍の原因
 胃から分泌される胃酸は強い酸でpH1~2といわれています。強力な塩酸です。これにより食べ物を分解し、細菌などの侵入を防いでいるのです。このため胃の壁(胃壁)が溶けないように胃の粘膜は自ら粘液を出して胃の粘膜を守っているのです。ストレスなどで胃液の分泌が亢進し、粘液の分泌が低下すると胃壁が溶けて胃潰瘍となるのです。胃潰瘍は男性に多く、中年以降に発症することが多く、十二指腸潰瘍は青年・壮年に多く見られます。最近特に注目されているのがヘリコバクター・ピロリ菌です。この菌は胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因となるとされています。ヘリコバクター・ピロリ菌に感染している日本人は中年以降では半数に達するといわれています。しかし日本人の半数が胃潰瘍になるかというとそうではありませんので、やはりいくつかの原因が関与した複合要因により発症すると考えられます。なかでもヘリコバクター・ピロリ菌とストレスの組み合わせが最もよくありません。ストレスの解消とともに規則正しい生活が非常に大切となります。
胃潰瘍の症状
 先に述べたように胃潰瘍では症状がないこともあります。特異的な症状はないといえるのですが典型的な場合は上腹部の痛みが食後に起こります(十二指腸潰瘍では空腹時に痛むことが多い)。また心臓病と間違えるような胸痛の場合もあります。ゲップ、むかつき、胸やけ、食欲不振が起こることもあります。突然に吐血したり(大量の血を吐いたり吐物に血が混じるだけのこともあります)、下血(真っ赤な血ではなくてタール便といわれるコールタールのように真っ黒な便)で発症することもあります。少しでも上腹部になにか症状があれば早めに検査を受けることが必要です。
胃潰瘍の診断
 典型的な胃潰瘍は当然胃透視でも分かりますが、やはり内視鏡検査が診断で最も有用です。以前にも述べましたが、現在内視鏡検査は非常に簡単になっています。胃潰瘍では出血してることもあるのですが、胃透視検査では出血しているかどうかは分かりません。内視鏡では出血していれば止血することも可能です。胃透視では潰瘍のステージ分類も十分にできませんしヘリコバクター・ピロリ菌がいるかどうかも不明です。ただ胃内視鏡検査は潰瘍の診断ばかりでなく早期胃癌の発見という大きな目的がありますから当然熟練した医師による検査が必要です。
 潰瘍には良性潰瘍と胃癌があります。今回はこのうちの良性潰瘍について述べているので胃癌については別の機会に述べますが、熟練した医師ならば見ただけで多くの場合良性か悪性の区別がつきます。しかし確認のために生検(胃の組織をとって顕微鏡で細胞を調べる)が必要ですのでやはり内視鏡検査の方が優れていると言えます。現在カプセル型の内視鏡(?)が治験中ですが、生検ができない、観察範囲が不十分、検査時間が長いなど問題が山積みしており当面実用化しそうにありません。それ以上に内視鏡検査が精度が上がり、簡単になってきています。
胃潰瘍のステージ分類
 私は胃潰瘍の患者さんに定期的に潰瘍の状態の把握のために内視鏡検査を受けてもらっています。これは潰瘍の治癒段階を見るためです。潰瘍はその治癒過程を活動期、治癒期、瘢痕期と分けられそれぞれ活動期はA1,A2、治癒期はH1,H2、瘢痕期はS1,S2と分類されています。つまりS2ステージが最終目標ですが、S2ステージになっても再びA1ステージとなる、再発することがあります。このステージによって当然治療薬の種類や量も変わってきます。