大腸癌

当院では大腸検査を行っています。消化器の癌では胃癌が最も多いのですが、その発生率が鈍っており、大腸癌の発生は増加傾向にあります。結腸と直腸に分けてみると従来日本人は直腸癌が多かったのですが、1970年代後半から結腸癌の発生ののびが著しく、発生率は年々開いています。大腸癌の増加は、食生活の欧米化、動物性脂質の摂取量の増加と食物繊維の摂取量の減少によるとされています。大腸癌は遺伝性が言われており、明らかな遺伝疾患である家族性ポリポーシスではAPC遺伝子が原因遺伝子とされています。その他hMLH1,hMSH2,hMSH6などの遺伝子が関与すると言われています。家族、特に第1度近親者に大腸ポリープ、大腸癌があった場合は積極的に検査を受ける必要があります。
 大腸癌の検査の最も簡単な方法は便の潜血を調べる方法で、便潜血陽性者は2.94%で大腸癌は0.07%、大腸ポリープ0.25%であり、便潜血反応陽性者の大腸癌的中率は2.35%という報告があります。便を調べるのは二日法といって、別々の日に2回調べるのが基本です。さらに大腸ファイバーにより検査を行います。現在ヘリカルCTによって、腸管を3次元的に表示することが可能となりましたが、隆起型の病変しかわからず1cm以上の病変で90%の検出率できます(10%は出来ないということ)が、5~9mmの病変は約80%、5mm以下はさらに低率となり、大腸ファイバーに及びもつきません。また表在型、陥凹型は大腸ファイバーでないと検出が困難です。
 大腸ファイバーによる観察では93%が隆起型で、そのうち早期癌は6.7%、表在型(横に広がっていくタイプ)は4.7%で33.5%が早期癌であったが、陥凹型は2.3%でそうのうち早期癌は47.8%であったという報告があります。
隆起型 表面型

有茎型(Ⅰp) 表面隆起型(Ⅱa)

亜有茎型(Ⅰsp)
    (Ⅱa+Ⅱc)

無茎型(Ⅰs) 表面平坦型

表面陥凹型(Ⅱc)

(Ⅱc+Ⅱa)
大腸癌の内視鏡的治療
 大腸癌の内視鏡治療は1969年Shinyaらが、S状結腸ポリープを高周波電流を利用して摘除して以来、隆起性の早期癌に対してポリペクトミーとして行われてきました。輪っかを病変にかけこの輪っかを絞った後に高周波電流を通してメスのように病変を切除するものです。大きなポリープでは1回に切除せず、分割して切除することもあります。しかし当院で行っているような大腸ファイバーの進歩により隆起性病変以外に色調の変化でしか判断できないような平坦型、わずかな陥凹病変(掘れこんでいる病変)の早期癌が多数見つかるようになり、こうした病変に対して内視鏡的粘膜切除術(EMR;Endoscopic mucosal resection)が行われます。これは大腸ファイバーを使って病変の下に生理食塩水かブドウ糖液を針で注入して病変を浮き上がらせた後ポリープを切除するように病変を切除するものです。しかし進行癌や、早期癌でも粘膜面以上に深く浸潤している癌や大きさが2cmを超えるものではリンパ節転移がある可能性があり、リンパ節をも切除しなければなりませんので開腹による外科手術が行われるのが一般的です。もちろん進行癌では外科手術が最優先におこわなわれます。また進行が早く、転移も多い未分化癌や低分化腺癌(これらは大腸ファイバーで組織を採り顕微鏡検査で判定します)では外科手術が選択されます。
大腸癌の外科的治療
 胃癌の場合もそうですが、早期の癌が見つけられることが多くなったものですから病変が小さい場合、手で触ってもどこに癌があるかわからないことがあります。つまりどこを切っていいかわからないわけです。このため小さな病変の場合は、内科医が前もって内視鏡で病変部分へ小さな針を使って墨汁を打ち込みます。これを点墨法(てんぼくほう)といい、これによって腸管が外から見ても黒く染まって病変がわかるというわけです。また転移しているリンパ節も黒く染まりリンパ節転移もわかります。私もこれまでに何回かしていますが、点墨の手技自体は極めて簡単なものです。小生は内科の専門医で外科の最新の手術方法の詳細までは知らないのですが、大腸癌の外科的手術としては腹腔鏡手術によるものと開腹手術によるものがあります。
1)腹腔鏡下手術
 我が国では1993年から腹腔鏡下結腸切除術が行われるようになってきています。これは全身麻酔下にまず腹部に1カ所小さな穴を開け、ここに管を入れて炭酸ガスを入れておなかをふくらませ、内臓と腹壁の間に空間を作ります。その上でさらに3カ所ほどの穴を開け、これから内視鏡を挿入、別の穴から長い取ってのついた器具を挿入して、内視鏡の画面を見ながら手術をするものです。つまり術者はテレビ画面を見ながら手術をするのです。したがって画面に映っていない部分は見えませんし、病変を直接手で触ることも出来ません。この手術のメリットは開腹手術に較べて出血量が少なく、術後の疼痛軽減、経口摂取開始日数の短縮、術後在院日数の短縮などが上げられます。一方手術時間は開腹手術に較べて長くなります。術者の技量に大きく作用されることがあります。またリンパ節郭清の安全性、精度についてはまだ確立していません。早期癌に対する腹腔鏡下手術は確立した術式ですが、相当な進行癌には用いられません。
2)開腹手術
 従来、直腸癌の手術はMiles(マイルス)らが行った(1908年)、肛門を含めて直腸を切断し人工肛門を造設する腹会陰直腸切除術が一般的でした。1979年になってようやくRavitchがカートリッジ式のEEAによる消化管吻合を行ってから急速に器械吻合が行われるようになってきました。現在では骨盤内の下部直腸でも腸管吻合が可能になり人工肛門を作らず、肛門機能を温存できる例が増えています。直腸癌の治療成績が結腸癌より不良であるのは局所再発と側方リンパ節転移が主な原因です。以前は直腸癌では手術後、骨盤内に放射線を当てたり抗ガン剤を使用したりしていました。また側方リンパ節郭清を行って骨盤内自律神経が障害され、性機能障害、排尿障害が高率に発生しました。現在では骨盤内の自律神経を温存しつつ側方リンパ節を郭清する方法が主流となっています。
 進行大腸癌の特徴として、転移があって根治が望めない場合でも手術をすることがあります。ほとんどの癌では転移があるようなときは手術不能とされるのに対してこれは他のがんと大きく違う点です。それは大腸癌の場合、進行すると腸管が閉塞し腸閉塞を起こすことがあるからです。
いずれにせよ、最初に述べたようにある程度の年齢の方、家族で大腸の病気になった方がおられる場合などは必ず毎年検査を受けることが肝要です。