胆石症

胆石症の症状
 当院では毎日、腹部超音波(エコー)検査を行っています。この際しばしば胆石症が見つかります。現代人では食事の欧米化、すなわち脂肪の摂取量の増加とともに増える傾向にあり10~20%の人に胆石があるという報告もあります。
 胆石症の典型的な症状は、上腹部から右脇腹にかけて突然激痛が襲う疝痛発作です。痛みは背中に広がることもあり、発作は数分から数十分間隔で襲ってきます。また脂っこい食事の後でひどくなり、食後に起こることが多いです。典型的な三徴として有名なのは発熱・腹痛・黄疸です。しかし典型的症状を訴える方は意外に少なく、胆石の患者さんのうち約半数は一生、症状が出ません。肝臓は、胆汁を生成し胆管を通して十二指腸に分泌して腸の消化吸収を助け、不要な脂溶性の老廃物を体外に出す、排泄機能を持っています。この胆汁を濃縮して貯蔵しているのが胆のうであり、この胆のうと胆管をあわせて胆道といいます。胆道に胆汁中の成分が結晶となり固体化し、やがて石ができるのを胆石症、胆のう内にできたものを胆のう結石、胆管にできたものを胆管結石、肝臓内でできたものを肝内結石と言います。胆石も成分によってコレステロール系結石と、ビリルビンカルシウムが主成分の色素結石に分けられます。これらが混合している結石もあります。また炭酸カルシウム結石、脂肪酸カルシウム結石などが見られます。胆石のうちコレステロール系結石が80%、ビリルビン系胆石が10%前後で、特にコレステロール胆石は1対2の割合で女性に多い傾向があります。また食生活の変化からコレステロール結石が増加しています。ビリルビン系結石は胆汁の成分であるビリルビンに細菌などが感染してできたものです。
胆石症の診断
①腹部エコー検査---当院で毎日行っていますが、胆のう結石については最も鋭敏な検査です。直径1mm前後の結石も検出することが可能です。しかし、総胆管結石の特に下部の方にあるものは大きいものしかわからないことがしばしばあります。これは腸管のガスがあると超音波が通過しないためです。
②CT検査---簡単な検査ですが、直径5mmを超える結石でないと検出できないことがしばしばあります。しかし肝臓結石なども検出が容易であるため、よく用いられる検査です。しかし腹部の横断面しか見ることができません。
③MRI検査---磁気共鳴による検査です。思い通りの断面が得られるのですが、検査に時間がかかり金属を体に埋め込んでいる人(ペースメーカー、動脈瘤クリップなど)はできません。胆のう結石については腹部エコーに劣りますが、胆道系全般の検査が可能です。
④DIC---胆汁中に出る造影剤を点滴して胆道系を造影するものです。これと断層撮影を併用することによって結石や胆道の拡張が描出されます。
⑤ERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影)---これは内視鏡を用いて胆道の十二指腸への開口部(乳頭)から造影剤を注入して胆道系を造影するものです。造影検査の中では最も技術を要するもので膵管をも造影されて膵炎を起こすことがあります。最近は診断として用いることは少なく、総胆管の結石を乳頭から摘出する際に行うことの方が多くなっています。
⑥腹部単純レントゲン---最も簡単な検査ですが、大きな結石でないとなかなかレントゲンには写らないことの方が多いようです。
以上のいくつかの検査を組み合わせて診断がなされます。 
胆のう結石の治療
 胆嚢結石症では腹部症状がQOL(患者さんの生活の質)に、合併症が生命予後に傷害を与えます。腹部症状については、胆嚢管への結石かんとんにより起こる胆道痛発作が胆石に起因する確実な症状であり、その他の腹部症状は胆石に起因しないことが多く、機能性胃腸症、逆流性食道炎、消化性潰瘍、過敏性腸症候群などとの鑑別がしばしば問題となります。。生命予後を障害する合併症として急性胆嚢炎、胆管結石、急性膵炎、胆嚢癌があります。胆嚢癌の高危険群として、①陶器様胆嚢②膵管・胆管合流異常症③3cm以上の大胆石があげられます。我が国では、萎縮胆嚢や充満胆嚢、胆嚢壁肥厚例などに予防的胆摘術を行う施設が多いが、胆嚢癌の高危険群であるか否かについてはエビデンス(証明)がありません。
治療法は、腹腔鏡下胆嚢摘出術が標準治療となっており、モニターに手術風景を映して器具で胆のうを取り出すものであり、術後の手術跡もわずかなものとなります。しかし胆管損傷など生命予後を脅かす合併症が、全国集計の結果、約1%認めてられています。胆道痛以外の症状に対して手術を行うと、術後も症状が持続(偽性胆摘後症候群)したり新たな愁訴が出現します。合併症を伴わない胆嚢結石症では予防的胆摘術により生命予後は延長しないと指摘されています。一般に以前に開腹手術を受けたりして癒着があると考えられる場合は開腹手術となります。
 一方、内科治療すなわち胆嚢温存療法である経口ウルソデオキシコール酸(ウルソ:UDCA)療法の胆石溶解療法としての有効性は、①X線透過性②充満型を除く10mm未満の小胆石③胆嚢造影良好の症例に限られましたが、UDCA長期服用者では、結石溶解の正否にかかわらず、胆道痛発作の発生および急性胆嚢炎による胆摘術への移行が経過観察群に比べ著しく抑制され、予後が改善されることが実証されています。
 以上から胆嚢結石症の治療適応は、①QOL・生命予後の障害がない無症状胆石②生命予後障害はないが胆石に起因しない③生命予後障害はないが胆道痛発作によるOL障害がある有症状胆石④合併症により生命予後障害がある有合併症胆石⑤生命予後障害がある胆嚢癌高危険群(酔漢胆管合流異常、陶器様胆嚢、大胆石、10mm以上ポリープ)の5群に分類して決定すべきであり、手術危険群や手術を希望しない有症状胆石症の人に対してはUDCAによる対症療法が有効です。
 ESWL(体外衝撃波破砕療法)による治療ではコレステロール胆石、結石数単数個、CT石灰化陰性の場合は完全消失率は90.3%。純コレステロール結石の場合は完全消失率87.8%、コレステロール結石、結石数単数個の場合完全消失率81%でこれらがESWLの適応となります。しかしESWLによる治療の再発率は術後1年で6.2%、5年で26.8%、10年で44.4%で高率であるといえます。
 溶解療法施行群で完全溶解率30%以上を満たす条件を分析すると、①CT石灰化陰性かつ結石の最大径10mm未満の場合は39.1%、②CT石灰化陰性の場合は35.5%であり、これらが治療適応と考えられます。経過観察群で症状の有無別に15年後の有症状割合を見ると無症状例では15%、有症状例では50%であったという報告があります。したがって上記のような大きな合併症がない、痛みのない場合は内科的治療でよいと思われますが、定期的検査が必要と考えられます。
総胆管結石の治療
 胆のう結石症と違って総胆管に結石ができた場合は胆汁の流れが滞ることがあり、黄疸を来しやすくなります。この場合、内視鏡を使って胆石を除くことができます。内視鏡的乳頭筋切開術(EST)と内視鏡的乳頭拡張術(EPBD)です。内視鏡(胃カメラ)を総胆管の十二指腸への開口部まで挿入します。そして、開口部の乳頭を前者は電気メス(ワイヤーに電気を通したもの)で切開し、後者は風船によって乳頭を拡張するものです。乳頭を拡げた後、バスケットカテーテルを挿入し、総胆管の結石をつかんで取り出してきます。これには熟練した技術が必要となります。また同じ乳頭に開口している膵管に造影剤が流入することがあり、急性膵炎を併発することもあります。私もかなりの症例にESTを行った経験がありますが、手技的にはESTよりEPBDの方が簡単なのですが、結石を除去するという面からはESTの方が優れています。私自身は経験がありませんが、EPBDでは膵炎、胆管炎の合併が報告されています。これらは外科手術に比べればはるかに手術侵襲が少なく高齢者でも行えますが、内視鏡を用いる治療ですので胃の切除術を行っている人には困難です。
 胆のう結石に対して腹腔鏡下胆のう摘出術を施行した場合に胆のう癌や総胆管結石合併の有無が問題になります。こうした場合に先にESTによる総胆管結石除去を行った後に腹腔鏡下胆のう摘出を行うことがあります。
肝内結石の治療
 腹部超音波検査で見つかるような肝内結石はほとんどの場合治療対象とはなりません。小さい結石の場合は症状もほとんどありません。しかし大きな肝内胆管に大きな結石を生じたり、感染を起こしたりした場合は除去する必要がありますが、この場合、外科的に肝臓の一部を切除するしかありません。ただし、胆管が拡張している場合は体外から胆管へ管を挿入して、除去することが可能なことがあります。