大腸ポリープ

大腸ポリープの増加は、食生活の欧米化により動物性脂肪や糖分の摂りすぎ、そして食物繊維の摂取が少なくなり、大腸への負担が大きくなったことと密接な関わりがあるとされています。また、排便時の硬い便の刺激がさまざまな刺激となり、ポリープを発生させる原因になると考えられています。
 しかし、はっきりした原因はまだ解明されていないので、定期的に健診を受け早期に発見することが重要です。大腸にできるポリープのおよそ80%は、腺腫といわれるがんになりやすいポリープです。この点が胃ポリープと大きく違う点です。ポリープには、茸状に根元がくびれた有茎性ポリープと、全体が盛り上がった広基性ポリープとがありますが、有茎性ポリープは一般に良性のものが多く、広基性ポリープ(とくに2cm以上のもの)は、腺腫性のものが多く、がんになりやすいといわれています。
 大腸ポリープは、直腸に最も多く、次に直腸に近いS状結腸に多く発生します。年齢的には40歳以降に多くみられ、高齢になるほど増える傾向にあります。ポリープが小さいうちにはほとんど無症状ですが、大きくなるにつれて、腸の内容物がポリープの表面を刺激するため、傷ついて出血し便に血が混じったり腹痛を感じることもあります。しかし、わずかな出血の場合には肉眼では気がつかないことも少なくありません。また、一度に100個を超えるたくさんのポリープが発生することがあります。この状態をポリポージスといいますが、放置すれば100%がん化します。
 大腸ポリープを防ぐ生活習慣として①食物繊維を豊富に含む、野菜、いも類、穀類、茸類、海草類などを積極的に摂る、②主食はなるべくご飯にする、③動物性の高脂肪・高たんぱくの食物を避ける、④1日3回決まった時間に食事をする、⑤禁煙する、⑥お酒は適量を守る、⑦規則正しい排便習慣を身につけ、便意を我慢しない、⑧生活リズムを整え、毎日適度な運動をするなどです。大腸ポリープは自覚症状がほとんど症状がないため定期的な「免疫便潜血反応検査(2日法)」がとても重要です。便潜血反応検査で(+)と出た場合には、大腸X線検査や大腸内視鏡検査が行われます。ポリープがあれば、内視鏡でポリープ全体か部分を採取して、組織検査を行い、良性か悪性かを診断します。
大腸ポリープは胃ポリープと同様に分類されています。胃ポリープと違い大きなものは癌になる可能性が非常に高くなります。また腺腫は、ある期間同じ大きさにとどまり、ある時期から大きくなり始め、またその大きさにとどまるというように段階的に増大していき、一直線に大きくなることはないようです。その理由はよくわかっていませんが、遺伝子の変異とも関係しているのではないかと考えられています。よく知られているように、がんはがん遺伝子やがん抑制遺伝子など、複数の遺伝子の異常が積み重なって起る病気です。遺伝子が傷ついて変異を起こすにつれて、正常の組織から腺腫、さらにがんへと進展していくと考えられています。おそらく、腺腫の段階的な増大も、こうした遺伝子の変異と大きく関係しているのではないかと思われるのです。つまり、ひとつの遺伝子が傷つくと増大のスピードが増し、また次の遺伝子が傷つくと次の増大が起るという具合です。
 大腸癌検診の最もポピュラーなのが便潜血検査です。一日7cc程度以上の出血が、口から肛門までの食物の通り道のどこかにあれば陽性になります。不確実でかつ、場所、疾患の特定も無論できません。検査は複数回で精度が上がります。ガンからみると、1回の検査で陽性となる確率は6割、2回のうち1回が陽性なる確率は8割、3回のうち1回が陽性になる確率は9割を越えます。逆に言うと、1回の検査ではたとえガンでも陰性になる確率が4割もあるということです。普通検診では、2回分の検査が実施されています。絶対安心できる検査ではない、ということを肝に銘じて下さい。
大腸ポリープの腺腫は前がん状態であるとみなし、すべての腺腫が発見され次第、摘出されていました。しかし、現在では腺腫でも、がん化の危険度の高いものにしぼって選択的に摘出するという考えに変わってきています。そこで、日本では5mm以上の大きさのポリープが摘出の対象とされています。5mm未満のポリープは経過観察でよいと考えられていますが、科学的な根拠はありません。したがって、平坦型で陥凹のあるものや、形がいびつであるなど特殊なタイプのものは、5mm未満でも発見され次第、摘出されます。 一方で、発見したポリープは全て摘除するという考え方もあります。理由は発見したポリープが「がんになる、ならない」ということのみならず、「小さなポリープをすべて取り除いた後は大腸内視鏡を毎年受けなくてもよいのではないか」という考え方に基づいています。大腸ポリープの分類は突出しているか、茎があるかなどによって図のようにⅠ型(Ⅰp、Ⅰsp、Ⅰp)、Ⅱ型(Ⅱa、Ⅱb、Ⅱc)等に分類されます。ポリープの切除法は胃ポリープの場合と基本的には変わりありません。 すなわち平坦なものは図のように生理食塩液などを病変の下に注入した後に切除します。これにはスネア(輪っか)を使う場合と内視鏡メスを使用する場合(ESD)があります。
 大腸がんの中には親から子どもへと、高い確率で大腸がんのできやすい体質が受け継がれるものがあります。これが、遺伝性の大腸がんです。その代表が、家族性大腸腺腫症(大腸腺腫性ポリポーシス・FAP)と遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC)です。ポリポーシスとはポリープがたくさん(多い場合で100個以上)できた状態のことです。家族性大腸腺腫症は10代で腺腫が発生すると考えられています。両親のどちらかがこの病気にかかっていた場合は、早目に内視鏡検査を受けたほうがよいでしょう。遺伝性非ポリポーシス大腸がんは遺伝子の異常を修復する遺伝子に問題が生じていることが原因と言われています。3人以上の血縁者が大腸がんなどのがんにかかっていて、そのうちの1人が50歳未満で大腸がんと診断されている場合はこの病気が疑われます。しかし、家族性大腸腺腫症も遺伝性非ポリポーシス大腸がんも、人に感染する病気ではありません。また、両親のいずれかにこの病気があっても原因遺伝子を受け継いでいるとは限りませんし、受け継いでいたとしても必ず大腸がんになるというわけではありません。一般の人は神経質になることはありませんが、便潜血は最低1年に1回は便を2日分以上調べる事と、何か便通異常や腹部症状がある際に大腸検査を積極的に受ける必要があります。ただ胃内視鏡検査と違って前日から下剤を服用し当日は2リットルもの薬を飲まなければならないのが欠点です。しかしこの点は人間の腸の長さを考えると他には方法はないようです。たとえばカプセル内視鏡で小腸を調べる際にも同様の処置をしておかなければ腸の中はよく見えません。