私の一言

ビッグサイエンスと研究の手法

 J-PARK(説明は下)を見学することが出来た。つい先日利用を開始ばかりの施設で、強力な中性子ビーム等を取り出せ物質科学・生命科学の研究に利用するものである。非常に大きな建物内に20数本のビームラインが設置されていた。未だ全てのラインが利用されている状況ではないが一部のラインでは実験が開始されていた。まさにビッギサイエンスの領域で、一人一人の科学者のアイデアというよりたくさんの科学者の英知を集めた研究が行われるのであろう。これらの施設は、国が全ての資金を投入して建設されたものであり世界に冠たる科学研究のインフラが日本に新たに設置されたということ。
 見学しながら考えた事が一つ。私の若かりし頃、私の参加した化合物半導体の分野でも研究室は所謂クリーンルームというわけにいかず普通の部屋で行われていた。扱う材料は所謂”構造敏感性”を持つので、周囲の雰囲気が実験結果に及ぼす影響を最小限に食い止める工夫や、更には実験装置などは今のように豊富になく手作りが当たり前であった。15年ぐらい前からであろうか、学生の採用に当たっての面接で、実験装置の質問をしても、大体において装置は市販品を購入したものであり、故障しても自分で直せないから外注しているようで、装置の原理が理解できていない。実験結果の解釈は万全のように見えるのに。短い期間に学位論文を書かねばならないので致し方ないご時勢かもしれないが。しかし全員がこれで良いのかしらと思う。
J-PARKの実験でも、所謂”研究者”は出てきた現象の解釈が中心にならざるを得ないのかな。各種分析器も、装置自体がデータベースを持っているために、装置にかけるだけで同定が出来てしまう。良いように解釈すれば科学者の専門性が異常に先鋭化するため高度な研究が可能になるともいえる。「科学の終焉」では無いがこのままでは、全体の流れがこうならば、重箱の隅になってしまうのではと危惧する。若いときに少々無駄をしても良いから泥臭さを味わう研究者こそが全員で無いにしても必要で無いかと思った。

◎JーPARKの説明(http://j-parc.jp/ja/aboutJPARC-j.htmlより)
<大強度陽子加速器施設 J-PARC( Japan Proton Accelerator Research Complex )>
 日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が共同で茨城県東海村に建設した陽子加速器施設と利用施設群の総称。加速した陽子を原子核標的に衝突させることにより発生する中性子、ミュオン、中間子、ニュートリノなどの二次粒子を用いて、物質・生命科学、原子核・素粒子物理学などの最先端研究及び産業利用が行われる。

トップに戻る      「私の一言」目次に戻る