科学の偉大なるセールスマン:C.セーガン!

   「COSMOS(コスモス)上、下」
      (カール・セーガン著、木村繁訳、朝日新聞社、1980年刊)

 世界的権威の天文物理学者が一般人のために、国費を使うしか科学者の興味を解決できない純粋科学の研究内容や、面白さ・必要性を易しく、押し付けで無く解説したものと読めた。新大陸発見・大航海時代以前の未知の海へ漕ぎ出した冒険にも似た未踏の宇宙探査。地球外知的生命の探索は夢があるのだが、科学技術の発達した現在、相当な金を投じて探索ロケットを飛ばす必要があるのか。電波による情報発信のみでよいのでは。更にそれすら必要なのだろうか。遠い将来、地球を飛び立ち新たな別の星への移住という事態が起こるのだろうか。その準備を今から行う意味があるのか。余裕のある時代なら宇宙探索が国威発揚のための方策となりうるが、過去の遺産解決の21世紀では如何だろう。等々色々と議論のあるところ。しかしながら、第一線の科学者が、このような科学技術開発の必要性を、優しく面白く解説を加えることは、純粋科学研究を一般人に理解してもらうためには必要なことだと思う。その意味で、著者は偉大なるセールスマンといえる。
 一方、我が国では如何? スーパーコンピューターの開発で、「一番でなければ何故いけないの」という素朴な納税者の疑問に、答えられない科学技術推進者や学者。所詮純粋科学への投資は仕分けには相応しくないと嘯く学者。国費で自分達の栄誉栄達・興味を満たそうとは考えていないとは思うのだが、この厳しい時代の一般人に国費を使って実行する意味をもっと積極的に説明するべきと思うのだが。
 金星探査機「あかつき」が、今日(2010年5月18日)に打ち上げられる予定だったが天候の関係で延期になるようだ。日本発の惑星探査機「のぞみ」は1998年に打ち上げられたが4年遅れで火星に接近したが周回軌道に乗らずに失敗に終わった。大変な国費を使って、日本が、何故惑星探査機を打ち上げる必要があるのか。「あかつき」のプロジェクトマネジャー中村正人教授((独) 宇宙航空研究開発機構 )は「金星の気候の成り立ちを知ることは地球がなぜこのような気候になっているかを探ることにつながる。地球温暖化の過程を理解するのにも役立つはず」とのこと(東京新聞より)。この新聞記事で一般納税者に理解されるのだろうか。日本の宇宙論関係の書籍では、例えば「宇宙論入門:誕生から未来へ」(佐藤勝彦著、岩波新書1161、岩波書店、2008年刊)が一般向けと思われるが、専門過ぎて科学技術に疎い人には理解できないのでは。この国では、基礎科学の説明を易しく説明する努力が遅れている。
 純粋基礎研究を決して不要とは思わないが今の時代だからこそ、も少し丁寧に一般人に必要性や将来性を語ることが必要だと思う。競争の激しい時代、そんなことをしている暇が無いという声も聞こえてきそうだが。
 等々、この本を読みながら考えた。

目次へ 「本を読んで」目次へ  トップへ 「遊民 旅の途中」トップへ