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「サハロフ回想録:上巻 水爆開発の秘密、下巻 ペレストロイカの父として」
アンドレイ・サハロフ著、金子不二夫・木村晃三訳 読売新聞社1990年刊
原題 Memoirs by Andrei Sakaharov
マンハッタン計画の進め方を知りたくて色々読んできたが、一方ソ連ではどうなっているのだろうかと思い、読み始めたのがこの回想録。日本語訳は上下二巻に分けられている。上巻は、理論科学者として原爆から水爆開発に参加するまでの記録、下巻は、水爆開発の後原子力の平和利用に目覚めながらも主張が取り入れなくなるとともに徐々に閉鎖社会ソ連の中で人権活動に踏み込んで行く半生の記録。
知りたかったのは上巻の部分の開発Pjであるが、「ソ連水爆開発の父」といわれてはいるが開発計画の全貌・組織などについては知らされていなかったのではと思う。技術系の人間が政府内でゴロゴロしていた当時のソ連。この点、アメリカと違うところか。計画全体(米国にはなったスパイからの情報管理を含めて)は口の堅い政府要人によってコントロールされていたのだろう。秘密国家ソビエト連邦。サハロフは当初は実験主体の技術者(兵器の信頼性試験の装置の開発等に従事)であったが、タム教授のもとで物理を学ぶにつれ理論物学者として育って行った。アメリカにしてもソ連にしても、原水爆の効果等の理論計算を先行して行っているようで理論物理学者や数学者が動員されていた。1回の実験に相当の人・物・金が必要とされる開発であるが故の理論計算であろう。今流行のシミュレーション技術の先駆けはこの辺が最初だろう。下巻は人権運動に絡むものでペレストロイカ以前のソ連の状況が理解できる。一般に回想録は、思いつくまま(時には自慢話も含めて)にというトーンが強いため読むのに苦労する。この回想録にも、何故かサハロフが取り扱った理論物理学の話を延々と記述している。全体の流れの中での位置付けが不明。きっと自分のやったことことを何処かに残しておきたいという意志なのかとは思うが、読むほうにとっては理解できないことが多い。
おもうことは、
アメリカにしてもソ連にしてもそしてイギリスも、科学者が表に出てこない程度で国の科学技術行政に参加している。アメリカのオッペンハイマー、テラー、ノイマン、ブッシュ、ソ連のサハロフ等。
振り返って日本ではどうだろうか。総合科学技術会議なるものがあった(小泉改革の頃は見えていたが、最近の活動は?)、議事録等を読むと決まったこと(官僚の作文)に対する追認のように見えてしまう。作文以前の段階でもきっと科学者は参画しているとは思うのだが、顔が見えない。スーパーコン、宇宙、原子力、地球規模の環境問題、生命現象等国家レベルで行わなくてはならない研究開発では、今まで以上に一線で働く科学者(過去の人でなく今の科学者)が計画立案の段階から参画することが必要。ここでは、結果が事前にわかる追認の作業は不要。多くの人がOK出すような計画はどうしても”薄く広く”となり、底上げには効果があるが、科学技術開発においては、よしんば成功しても最先端とはならない。しかし、和をモットーとする国柄では薄く広くはしかたがないことだろう。技術立国日本として、今後生きて行くためには国レベルでの科学技術推進の新たな方法が必要とおもわれる。