よもやまmusic
このコーナーでは、当ホームページの管理人(せがわ)の趣味による、独断と偏見で選んだ
「おすすめ」の音楽を紹介します。すでに当店の手書き新聞『夢小紋だより」には好評(?)
連載されていますが、今回、一部の方より要望もありましたので、調子にのってweb版も作っ
てみる事にしました。「知っている音楽」「知らない音楽」いろいろ出てくると思いますが、
戯言と思って気楽におつき合いください.(月一回更新予定。 ご意見、ご感想、その他
「こんな音楽しってるか?」などなどメールでも、いただければうれしく思います。)
昔から音楽情報=それまで知らなかった音楽や、ミュージシャ ンの事等=はラジオで知る事が多いのですが、時折何げにつけ ていたラジオから「これは!」と「ピン!」と来て、さらに聞きたく なる曲が流れてくる事があります。 最近では「サラ・タバレス」というアフリカ系、ポルトガル国籍 の女性ミュージシャン。 ナベサダこと渡辺貞夫さんの深夜番組(超長寿番組でしょう) で紹介されていたのを聞いて「いいなぁ・・これ・・」と思いネット で検索してみました。(しかし、便利な時代ですネ・・。) アフリカ系のリズムを取り入れた軽快なテンポ、伸びのある 声(ちょっとマイケル・ジャクソンの子供の頃の声にも似ていま す。)親しみやすいメロディー。ブラジルの音楽とアフリカの音 楽と欧米のポピュラーソングがいい具合に溶け込んでいる感 じ。 どこか、乾いた爽やかな風が、やさしく吹いてくるような音 楽です。 歌いながらリズミカルにつま弾くガットギターの腕も なかなかです(やっぱり、リズム感が違います)。 現在まで3枚のソロアルバムを発表しているようですが、写 真のアルバムはリスボンでのライブDVDに、'01年と'06年に 発表したアルバムがセットになったお買得盤。 世界には、まだまだ知らないステキな音楽があるんだな・と またまた思わされたミュージシャンでもあります。('10、5月7日) |
カーネギーホールと言えば、 ニューヨークにある音楽の殿堂。ジャンルを問わず、ミュージシャンの「聖地」 とも言える名ホール。そこでたった1人、ギター1本の弾き語りで熱演し、自ら 設立したレーベルからCDを出しているのが、アニ・ディフランコ。 1970年、ニューヨーク出身の女性ミュージシャン。10代の頃より曲を、作り、 街角やカフェなどで歌い始め、弾き語りスタイルを基本に、時にホーンセク ションも加えたバンドで演奏したり、社会的メッセージをこめた詩を朗読した り、意欲的に創作及び表現活動を続けている人です。 かなり、多作で、また自らがレーベルの主催者であることからも、ほぼ毎年 1枚、’09年時点で20枚のオリジナル・アルバム、そして10枚の「公式海賊盤」 を発表しています。 カーネギーホールでのライブ盤も「海賊盤」の中の1枚ですが、「アマゾン」等 で入手可能です。 大歓声の中で始まる歌と演奏は、エネルギーそのもの。 アニ・ディフランコ と会場の呼吸が一つになって、ライブが展開されていく様子が、現場にいるか のように収められている名盤です。 アニは以前、アメリカ「ニューズウィーク」誌が選ぶ『21世アメリカを動かす 100人』にも入るほどの人。 しかしそんなことは、おかまいなしとばかり、常 に等身大で、出産などを経ながらも、真摯に正面を向いて突っ走っている姿 は、とてもカッコよく、つい引き込まれてしまいます。 (’09.2月28日) |
シンプルゆえに届く唄、ひびく歌 田舎暮らしにあこがれ、横浜から岩手の山あいの里の古い民家に移住し、そこ から全国を歌い歩いているのが「やなぎ」さん。 昨年2月、漏電による火事でその住いが全焼。 幸いにも家族は無事でしたが、 家財道具等はほぼ、すべてが消失。それでも里の人びとの協力や全国の仲間、 ファンの応援を受け、「田舎ぐらし」を続行。事後整理をしながら音楽活動も再開。 新たな仕切り直しから、ついに今年の9月に発表したCDが『青い空からBLUESが 降ってくる』です。 全曲ギター1本による弾き語り。 シンプルな基本形。 変な「ごまかし」は一切きかない生の歌。 決して新しくはないけれど、きっといつまでも古くならないスタイル。 予算の関係もあったと思われますが、シンプルゆえに逆に、強い説得力をもって 聞くものに響いてきます。 もともと、ライブなどでも「聞かせる力」を持っている人でしたが、幸か不幸か「火 事」以降、深みが増した感もあります。 自身4枚目となるこのアルバムは、なにかしら「熱」を帯びています。 9つの歌が、いわゆる流行りや「世間」とは一歩距離を置いたところで淡々と、そし て熱く歌われています。 (10月29日) ※やなぎHP http://homepage2.nifty.com/m-yanagi/menu.htm |
星たちが奏でる歌 水面を渡る風。吹かれるままに時は過ぎ、夕暮れに星ひとつ。またひとつ。 いつしか満天に、大小さまざまに輝く星々の歌が、空高く響きわたる・・・ そんなイメージの音楽がフリップ&イーノの名盤「イブニング・スター」に 収められています。(1曲目のウィンド・オン・ウォーターから2曲目、イブ ニング・スター) ブライアン・イーノはあたかも絵を描くように、音に色をつけ音楽をつくる 人。その色彩感豊かな背景にロバート・フリップのまたなんとも艶のある トーンのギターが、エキゾチックな旋律を夜空の果てまで届くかのように 描き加えていきます・・・。 「イブニング・スター」はもう30年以上も前の作品ですが、作者の二人は 「大御所」となった今も現役感覚ばりばりで新しい音楽を創り続けています。 かたや常に実験的アプローチを音楽に取り入れ続け、世界のポップミュ ージックに多大な影響を与えているアーティスト。 かたやプログレッシブ・ロックの盟主「キングクリムゾン」のリーダーに して、自らのギターの世界を極め続けてやまないミュージシャン。 相反するようで、共通点もある二人が結びついたのは、必然的とも言え ますが、何年かごとに共同作業するたびに、お互いのアイデアを融合させ かつてなかったような、独特の音楽を提示してくれます。 類い稀な美しさを持った曲もあれば、寂莫としたイメージを抱かせるもの もあったり、常に同じところには踏みとどまらないで、より深く、より多彩に 創造性を発揮してくるのでチェックしないわけには行きません。 中には、アバンギャルドなものもありますが、「イブニング・スター」は聞 きやすく、また何度も聴きたくなる名盤です。 (8月20日) |
音楽は誰のもの? 先頃、NHKのシリーズ番組で、あの今は亡き、カナダの天才ピアニスト、 グレン・グールドの特集をやっておりました。 グールドは、バッハやベートーベンなどの名曲を、作者の楽譜の指示を 無視したテンポ、タッチ、強弱で弾いては、賛否両論を巻き起こし、いわゆ る「専門家」や「権威ある方々」から、「異端」、「奇をてらったもの」と評価 されたりもした「ちょっと変わり者」のピアニスト。 しかし、一方では「斬新な解釈」とか「大胆な挑戦」などと絶賛され「革新 的な演奏」は新しいクラシックファンも増やしたようです。 普段あまりクラシックを聞かず、グールドの演奏からバッハやベートーベ ンのピアノ曲に接した私にも、「なんか、凄い説得力のある演奏」に聞こえ ました。それで、いい曲だなと思って、他の演奏家の弾いているのも聞いて みると、同じ曲なのに、どこか退屈に聞こえてしまうのです・・。 果たして作曲家の残した楽譜を忠実に再現できれば、名演になるのか? そもそも曲(音楽)は作曲家個人の発想や感性だけで創られたものか? グールドの演奏を聴いていると、ふとそんなことも考えてしまいます。 改めてグールドの演奏の映像やエピソードなどを見たり聞いたりするに つけ、グールドがとても深い部分で音楽とつながろうと、アプローチしてい た人に思えました。グールド全部が音楽を奏でる器になっているような、 そして「記された音符」や「著作された曲」を足がかりに、楽聖たちが戯れ た「音楽の海」に入って行こうとしているかのようです。 グールドの演奏には、いわゆる「音楽のマジック」を感じてしまいます。 右のCDは最晩年に録音されたバッハの「ゴールドベルグ変奏曲」。はから ずも大センセーショナルを起こしたデビュー盤と同じ楽曲でした。(名盤!) (6月27日) |
5月のさわやかな風のような音楽に、2本のギターを中心にした ユニット、「アコースティック・アルケミー」の『キャラバン・オブ・ドリーム』 という曲があります。乾いた明るい音のアコースティック・ギターに、やわ らかい音色のガット・ギターがからみ、かろやかなテンポながらも、どこか メランコリックな旋律が奏でられるこの曲。 『キャラバン・オブ・ドリーム』 (隊商の夢)という題名どおり、風に運ばれ、どこか遠くの異国を夢見たり するBGMなどにも良いかも知れません。 また、ハードな曲、重厚な曲を聴いた後でこの曲が聞こえてくると、あたか も爽やかな風が吹きぬけていくような錯覚にとらわれます。 「アコースティック・アルケミー」は'80年代後半jから活動を続けるイギリ スのバンド/ユニット。イギリス版「ゴンチチ」と言ったら語弊もありますが、 時代の流行にとらわれない生ギター2本を核とする職人的アコースティック サウンドで、独自の評価を得ていたようです。 が、'98年に中心メンバーが他界。以後、バンド形態で、よりフュージョン 色を強めた音楽を演奏するようになりますが、変わらず「わが道を行かん」 とする姿勢で、活動を続けているようです。 『キャラバン・オブ・ドリーム』は'90年発表のアルバム「リフェレンス・ポイ ント」または、彼らのベスト盤に収録されています。 (5月21日) |
春ということで、今回は牧歌的な雰囲気のするCDを紹介します。 ロジャー・イーノとケイト・セント・ジョンという男女2人組ユニットの 「ファミリアー」というアルバム。 音楽療法師の資格も持つR・イーノは、かのブライアン・イーノの 実弟。兄が、音を素材として加工し、新たな色〈音)を創り、絵画の ように音楽を「描いて」いくのに対して、弟の方は、すでにある音を よりきれいに、そして内面まで届くようなメロディーにする事に感心 があるようです。 ケイト・セント・ジョンは、ポピュラー・ミュージック界では珍しい オーボエ奏者。「ドリーム・アカデミー」のメンバーだったり、ヴァン モリソンのバック・ミュージシャンだったり、売れっ子で多様な音楽 性の持ち主ですが、その歌声も美しく、なかなかなもの。 「ファミリアー」に収められた楽曲は、ピアノやバイオリン、チェロ、 ギター、クラリネットなどアコースティックな楽器に、艶やかな音色 に処理されたエレキギターやシンセサイザーがかぶさり、聴いてい ると、どこか田園風景や、朝もや、雨、虹・・などといった景色が目 に浮かんでくるような、印象的なものばかり。 日々の喧騒から離れて、ゆったりとやさしい音に浸りたい人には かなりオススメの1枚です。 (4月18日) |
知る人ぞ知る、と言っていいと思いますが、島根県で普段は OLをしながら音楽活動を続けている浜田真理子というアーティストが います。テレビやラジオにはほとんど出ることもないのですが、その 評判は、くちコミで次第に広がり、今や全国各地にファンがいます。 滅多にライヴも行なわないようですが、年に数回、東京や横浜、他 主要都市での公演は満杯になってしまうという実力の持ち主です。 ピアノの弾き語りが、基本スタイルのようですが、その歌を聴いた人 の心には多分「何か」が残ります。肩の力が抜けた、力みのない自然 な歌い方で、丁度ものすごく上手な「鼻歌」か「子守唄」のようでもある のですが、強い説得力もあって、ついつい聴き込んでしまいます。 自作自演の歌は、なんともほのぼのしたようなものもあれば、ちょっ と怖くなってしまうような深い内容のものもあり、女性の心理をついた 歌詞からは、今までの紆余曲折も垣間見る事ができます。 オリジナル曲の他に、忘れてしまいがちな往年の名曲も歌っていて、 「そうそう、こんな曲もあったよな」というような歌を、見事に自分の色 で歌いあげています。 いわゆる「音楽産業」の「メインストリーム」からは大きくはずれてしま っているアーティストではありますが、それだからこそ豊かな音楽性を 失うことなく、誠実に音楽に向き合っている「証し」を聴く事ができます。 アルバムは地方レーベルから数枚、出ています。 (左のジャケットは、2006年に発表したCD「夜も昼も」) 〈3月15日) |
「いやし系」と言えば・・ 今や「またか」と思ってしまうほど使いまわされた感もある「いやし」 というレッテルがはられた音楽。その多くは薄っぺらいムードBGM みたいなもので、場合によっては「いやされる」どころか「いらいら」 してしまう事もままあります。 もちろん、個々の好みもありますが「いやしの音楽」というのは、 作ろうと思って作れるものではなく、結果的に「いやし」の効果も もたらしてくれるものだと思うのですが・・。 今回紹介する「えま&慧奏」の『あめつちのうた』は、いわゆる「い やし系」というジャンルからみると異色的な作品になると思います。 「相反するもの、特に”生と死”を見つめ、サウンドデザインした」 と言われるこのCDは、軽くバックで聞き流そうと思っても、思わず 聴きこんでしまう深いものがあります。 数々の民族楽器とピアノ、ギター、シンセサイザー、そしてなんと も「いい声」の女性ボーカルが奥行きのある音の世界に連れて行 ってくれます。 「えま&慧奏」は関西を中心にユニークな音楽活動を続けている 男女二人組みユニットですが、”YURAI recors”というレーベルから アルバムを数枚発表しています。 (1月29日) |
30年ぶりに再会 キャロル・キングと言えば、誰もが認める女性シンガーソングライター の大御所、草分け的な存在。代表作としては『つづれおり』がすぐあげ られると思いますが、今回紹介する『シンプル・シングス』もなかなか の名作です。バックバンドによるロックテイストな曲から、しっとりとした アコースティックな小品、オーケストラの入ったドラマティックな曲まで、 めりはりのきいた構成で、メロディ・メーカーとしての才能が遺憾なく 発揮されています。 最後の「ワン」という曲は、あの、豪華ミュージシャン達による「ウイ・ アー・ザ・ワールド」が発表される何年も前に、「すべては、ひとつ」と いう事を、より詩的に歌った、心に残るメロディーの名曲です。 実はこのアルバムは、高校時代にFMで聞いて以来、ずっとさがして いたのですが、今年になってやっと見つけました!なんでも世界初CD 化の限定生産ということです。 以前、このコーナーでP・サイモンの作品を紹介した時も30年ぶりと 書いていました。やはりあの頃(中学〜高校時代)聴いた音楽がずっ と心に残っているのは、曲のせいなのか、音楽の聴き方なのか、はた また感性のなせる業なのか・・などと考えるにあたり、たまには真剣に 音楽を聴く時間をつくらなければ・・と思った次第です。 (12月15日) |
”秋のノスタルジー”を感じる曲を今回は紹介してみます。 デビッド・シルビアンのその名もずばり「ノスタルジア」。 なにか「晩秋の寂寥とした感じ」もする曲ですが、木の葉舞い落ち る日だまりの中で、もの想いに耽っているような、「それでも、時は 淡々と過ぎ去っていく切なさ・・」と言うか、そんな雰囲気の漂う美し い曲です。 D・シルビアンが「ジャパン」を解散して、初めて発表し たアルバム「ブリリアント・ツリー」に収められています。 D・シルビアンは、その美形な顔立ちからアイドル視されたりもして いましたが、実は結構シリアスで前衛的な面を持つアーティストで す。その歌も、自らの内面を深く掘り下げていくような静かで、落ち 着いた感じのものが多く、地道に自分のカラーを維持しながら活動 を続けています。 共演するミュージシャンも個性的な人が多く、 このアルバムでもホルガー・シューカイやジョン・ハッセル、坂本 龍一、ケニー・ホィーラーなど個性的な面々が参加し、印象的な音 づくりに貢献しています。 (10月28日) |
去る8月11〜12日に花巻の音楽好き人間たちによる、 手弁当な野外音楽祭が炎天下の下、行なわれました。 その名も「イーハトーブ音楽祭」。(イーハトーブとは宮澤賢治が つくった言葉で、エスペラント風に理想郷と岩手をかけあわせたと いう事です。) 街中を流れる小さな川の遊歩道を利用して、4つのステージが つくられ、50を超えるバンドやアーティストが次々と様々な演奏を 繰り広げ、たくさんの人を楽しませてくれました。 行政に頼ることなく、手づくりで計画され、多くの試行錯誤もあった であろう中で、成功にこぎつけた熱意は本当にたいしたものです。 「イーハトーブ恋歌」はこの音楽祭のためにつくられたイメージ ソングで、親しみやすいメロディーに、どこか切ない歌詞がマッチ した軽快な曲。花巻を拠点に活動を続けるkatsu with 2u(カツ・ ウィズ・ツー・ユー)というバンドのオリジナル曲です。作詞作曲は リーダーの宮澤勝彦さん(宮澤賢治の遠縁にあたる人です)。 この歌を聞くたびに、あのむちゃくちゃ暑かった2日間、熱い演奏、 さまざまな顔とまなざし、ときおり吹きぬけた爽やかな風・・などが、 ふとよみがえるんだろうな、と思います。(来年以降も続いていく 事をいのりつつ・・) (8月23日) |
マイケル・ヘッジス(1953〜1997)というアーティスト は、アコースティック・ギター界では時に「彼以前と彼以後」に区分け されるほど豊かな才能とテクニック、音楽性を兼ね備えた人でした。 そのまるで1人で弾いてるとは思えないギターの演奏は、後の多く のミュージシャンに大きな影響を与えましたが、その演奏技術以上 に、まず楽曲が印象的で、素晴らしいものばかりでした。 '81年発表のデビューアルバム「ブレックファスト・イン・ザ・フィール ド」も「多重録音なし」とは思えないような曲もありますが、「まず音楽 ありき」で、ただテクニックを曲芸のように展開するギター・ミュージッ クとは一線を画した、詩情あふれ、拡がりのある音世界がアルバム を通して表現されています。 実は、私がこのCDを手にしたのは、比較的最近の事なのですが、 ある音楽喫茶のマスターは発売当時のLPレコードで持っていました。 「さすが!」と言うか「やっぱり・・」と妙に感心したのを覚えています。 実にさまざまな音楽に造詣の深い、ちょっとはにかんだような優しい 笑顔の人でしたが、先月旅立ってしまいました・・ いろんな音楽仲間が集まったマスターの店も、今はもうありません。 それでも、音楽は今日もこうして、聴き継がれていきます・・ (7月10日) |
新緑の森の中にいるような音楽を今回は紹介 してみます。ウイリアム・アッカーマンの「パスト・ライト」。 自作の曲をアコースティック・ギター1本で叙情的に表現 していくのがW・アッカーマンの基本的なスタイルですが、 このアルバムではピアノやバイオリン、チェロ、オーボエ などが加わり、より艶のある、深い味わいを出しています。 ちょうど深い森の中を、緑の風が吹き抜けて行くように、 ゆったりとした静かな響きが、静寂をはらんで流れていき ます。 '83年発表ですから、すでに25年ほど前の作品なのに、 みずみずしさが失われていないのは、アコースティック主体 の自然な音作りをしているからでしょうか? W・アッカーマンは、もともとは建築会社をおこした、言っ てみるなら大工さんだったようですが、「ウィンダム・ヒル」 というレーベルを創り、多くのミュージシャンの印象的な作 品を、数多く世に送り出しています。 (5月23日) |
「私の(あなたの)名盤・珍盤・奇盤」と題して、 参加者がそれぞれ、おすすめの曲を持ち寄って披露するという 「お楽しみイベント」を3月に試みてみました。 特にジャンルを限定した訳ではなかったので、ロックからクラシ ック、はたまた懐かしのアイドル歌謡まで、実にたくさんの曲をか けまくり、盛り上がったのですが、その時、「受け」がよかったもの の中から私が用意していったものを1つ紹介してみます。 ベテラン女性ソウルシンガー、グラディス・ナイトのライヴ録音、 「エンド・オブ・ザ・ロード・メドレー」。ボーイズ・U・メンの名曲を 含むソウルのスタンダード、3曲のカヴァー・メドレーなのですが、 その雰囲気、臨場感、迫力、曲の良さ、歌のうまさ(というか、凄さ) が有無を言わさずストレートに伝わってきます。 原曲のオリジナルバージョンも、もちろん良いのですが、ここでは それにも増してグラディス・ナイトによって、熱い息吹と共に”ソウル” をこめられてより「確固たるもの」となっているように思われます。 まさに「うた」の持つ「ちから」を感じる名演(唱)です。 ('94年発表の「ジャスト・フォー・ユー」に収録) 〈4月13日) |
植木鉢の音楽 大小さまざまな大きさの植木鉢を楽器にして、心地よい音楽を |
2007年になってはじめての「よもやまmusic」は、 「はじめて」にひっかけてキャメルの「ファースト・ライト」。 「最初の光」という題名の通り、まるでだんだんと夜明けが近づく中、 空気も澄み、ついに光が差し込んでくる・・または夕暮れどき、一番星 の光を追って、ついに宇宙まで飛んでいくといったイメージが表現され た(と勝手に思っている)インストゥルメンタル曲です。 「レイン・ダンス」という'77年発表のアルバム1曲目の曲で、メンバー 各々、かなりのテクニックの持ち主なのに、それをひけらかすのでは なく、しっかりしたメロディーを心地よいスピード感で演奏し、カッコよく 曲が展開されていきます。 歌物も、なかなかいい曲が並び、このアルバムからメンバーになった リチャード・シンクレアの落ち着いた、癒やしの声がいかにも「キャメル」 といった雰囲気を醸しだしています。 キャメルには名作アルバムがたくさんありますが、「レイン・ダンス」は 私的名盤としても推したい1枚です。 (1月28日) |
びつくり! 最近の流行語の一つに「サプライズ」(おどろき)というのが、ありま |
こりゃ、まいった! 広い岩手県には「すご腕」のバンドやミュージシャンもたくさん います。今回、紹介する「ホリィ・シッツ」というバンドもなかなか のもの。水沢(現、奥州市)を拠点に活動する、ギター、ベース ドラムの3人組ジャズ・ロックバンドですが、完全に全国レベル を超えていると言っていいでしょう。インストゥルメンタル中心に 演奏していますが、テクニックはもちろん、オリジナルの楽曲も しっかりした構成で、メンバーの豊かな音楽性を感じさせてくれ ます。 その実力から言って、今までレコードを出していなかっ たのが不思議なくらいですが、結成12年目にしてついに初CD を発表。全16曲入りで聴きごたえ十分。決してマニアックに走 るのではなく、聞かせどころをおさえながら、思わずうならせる 粒揃いの楽曲が揃っています。(実はベーシストが同級生!) 「holy shts」ホームページはこちら 11月19日 |
秋に聴きたい洒落た音楽はいろいろありますが、今回は ジョニ・ミッチェルの「ミンガス」というアルバムを紹介します。 何をかくそう、ジョニ・ミッチェルは、私の最も好きな女性ミュ ージシャンの一人なのですが、残念ながら現在は活動を休 止しているようです。 「ミンガス」というのは、今は亡き、ジャズ・ベースの巨匠、 チャールズ・ミンガスのことで、亡くなった1979年に、この アルバムは発表されました。バックに、ウェイン・ショーター ハービー・ハンコック、ジャコ・パストリアスなど、名うての実 力派ジャズミュージシャンを迎え、自作の曲や、ミンガスの 作った決して単純ではない曲に詩をつけて歌いあげる力量 とセンスは実にたいしたものです。彼女の感性と、ミンガス の遺した音楽が見事に融合され、クールなのにどこか懐か しい独特な世界を築き上げています。 聴き込むほどに奥が深く、いつまでも古くならない一枚。 (秋の夜長になど、ほんと、ぴったりです。/10月5日) |
残暑きびしい日々が続いていますが、そんな中今回は「スカッ」と 突き抜けて、宇宙までひとっ飛びしていくような曲を紹介します。 ボストンの「宇宙の彼方へ」。本来ならばハードで騒々しい系統の 楽器編成なのに、とても気持ちのいいサウンドで、ジャケットのよう に宙を駆けていくような気分にさせてくれます。 リーダーのトム・シュルツは、かのエリート大学、MIT(マサチュー セッツ工科大学)卒業の秀才。エンジニアとしての音響調整技術 はお手の物の上に、挫折を知らない経歴がデビュー作にして、かく も緻密で完璧な音世界をつくり上げた、と言う感じです。 (しかし「宇宙の彼方へ」とはよくつけたもので、原題は「more than a feering」、訳詩をみても宇宙の「う」の字も出てきませんが、曲の 感じはよくつかんでいます。作者はきっと苦笑いでしょうが・・) 「宇宙の彼方へ」は’76年発表の1stアルバム『幻想飛行』(これ も原題はただの「BOSTON」・・やれやれ・・)に入っています。 (8月26日) |
今年は「ビートルズ来日40周年」という事で特別番組も 組まれていましたが、日本武道館で来日公演が行われたのは1966年、 6月30日から7月2日までの事。そして、その後、8月のアメリカ公演を 最後にコンサート活動を停止、ビートルズはレコードだけを出すバンド になってしまいました。 アルバム「リボルバー」は、その転換期、日本 公演から1ヶ月後に発表された意欲作です。それまでのアルバムよりも 長い時間をかけてスタジオにこもり、実験的な試みもされています。 収められた曲は皆、当然のごとく粒揃いの佳曲で、クラシックやインド 音楽の影響を受けた曲も完全にビートルズの物にしているのがすごい ところです。 この頃はまだバンドとしての一体感もあり、なおかつメンバー各々の 個性もきらめいています。 数あるビートルズの作品の中でも「リボル バー」が一番!というファンが多いのもうなずけます。 来日当時、ジョンとリンゴは25歳、ポールが24歳、ジョージは23歳! まだまだ若いのに一皮も二皮もむけ、貫禄さえ漂わす彼らの創作意欲 に満ちた傑作です。 (7月7日) |
いよいよ、 オリンピックをも凌ぐと言われる4年に1度の世界的イベント、サッカー、 ワールドカップが6月9日から始まります。今回の開催国はドイツという ことで、ドイツにちなんだ曲(CD)はないかと棚を探してみました。 見つけたのは、ギュンター・ヴァント指揮、北ドイツ放送交響楽団演奏 の「ベートーベン、交響曲第2番&第4番」。ドイツに生まれた「楽聖」の 曲をドイツのオーケストラがドイツ人の指揮で演奏するというCDは(こと にも最近の演奏は)、日本では意外と見つけにくいものかも知れません。 2番や4番の交響曲は3番や5番、6番、7番、そして9番などとくらべると、 あまりポピュラーではありませんが、やっぱり、なかなかの名曲です。 ちなみに4番は、あのシューマンにして「2人の北国の巨人(「英雄」と 「運命」)にはさまれたギリシャ美人」と評されたロマンチックな作品です。 このCDでの演奏は、決して派手さはないけれど、正統的でツボを押さ、 えた味わい深い、「いかにもドイツらしい」とでも言えるような名演です。 サッカーのBGMとはなりにくいかも知れませんが、時に「ドイツ」に想い を馳せながらこんなCDを聴いてみるのも良いものです。 (5月19日) |
30年の絆 今回は(も?)知る人ぞ知るアルバムの紹介となりますが、 「クラベッツ」の30周年記念盤『おれ達のうた』です。1967年 に「ばんば ひろふみ」を始め、立命館の高校の同級生同士 が「ベルベッツ」として結成、'77年には当店の展示会にも何 度か来て頂いている大和夢之介さんがボーカリストとして参 加、現在に至っているバンドです。本拠地は京都で、それぞ れ忙しい時間をぬって活動を続けています。 ベスト盤とも言えるこのアルバムに収められた楽曲の提供 者には、ばんばひろふみ、つのだ★ひろ、来生えつこ、玉置 浩二らの名前も見え、交友関係の広さも伺えます。が、何に も増してこのバンドの「すごい」ところは、40年近くもほぼ同じ メンバーで音楽を続けている事です。先ごろ来日したローリ ング・ストーンズなど典型的ですが、こういう長く続けている バンドには他には出せない、そのバンド特有の「のり」、グル ーブが出てきます。長い間にはいろいろとあった事でしょうが まさに「継続は力なり」。(まったく、たいしたものです。) (4月10日) |
かくれた名曲というものはたくさんありますが、良質な 音楽番組がまだまだ少ない現状では、多くの名曲は耳に触れ ることなく埋もれてしまいます。 「天国はつくるもの」というドキュメンタリー映画に使われていた 曲(歌)もみな、いい曲(歌)でした。中でも映画そのものが感動 的な内容だったこともあり、エンディングに流れた曲は胸に残り ます。 土橋大輔の自作自演、「シャイン」。沖縄を拠点に自らレ ーベルを立ち上げ、自主制作したシングルCDのタイトル曲です。 きっとこの映画を見なければ、まずこの曲に出会うことはなかっ ただろうと思います。 大掛かりな宣伝もなければ、ラジオやテレ ビで流れる事もほとんどありませんが、文句なしの名曲です。 巷にあふれるヒットチャートの「産業音楽」とは一線を画したエネ ルギーが曲に込められています。映画の効果もあり、じわじわと 口コミで広がっているようですが、こんなふうに下手をすると知ら ないでしまう名曲がまだまだあると思うと「なんとかしてくれ〜」 と言いたくもなります(・・誰に?) (3月1日) |
もう雪はたくさん!と思うこの冬ですが、あえて今回は 雪のイメージの音楽を紹介します。ブルース・コバーンの「high winds white sky」(『雪の世界』)。雪景色のジャケットが印象的 ですが、そんな雪の中、時に暖炉にでもあたりながら、また時 に刺すような冬の風に吹かれながらも聞こえてくるような優しい メロディー、心温まる歌声がたくさん入っているアルバムです。 B・コバーンは1945年、カナダに生まれたシンガー・ソング・ラ イター。いわゆる「流行」とは無関係に、自分の信じる音楽のス タイルを貫きながら活動し続けてきた実力派アーティストです。 渋い歌声、深い歌詞、名人級のギター、30年以上のキャリア、 今なお衰えぬ創作意欲と問題意識・・貴重な存在です。(ちなみ に宮沢賢治のファンでもあるとか・・) '71年に発表された「high winds white sky」はアコースティック ギター中心のシンプルな、それでいて味わい深い歌と演奏が心 に残る好アルバムです。 (1月24日) |
25年目の12月に・・ 1980年、12月、ジョン・レノンがニューヨークの街角で凶弾に倒れて、 早や25年経ちました・・ ともすれば、「イマジン」などに代表されるような「愛と平和」の代弁者 としてJ・レノンは捉えられがちですが、同時にロックン・ローラーであり 詩人であり、画家であり、行動する社会運動家でもあった事を忘れては なりません。一貫して言えるのは、いつも等身大の「自分」に向かい合 い、自分の強い所も弱いところも隠すことなくさらけだし、考え、悩みなが らもユーモアと批評を忘れず、表現活動をしてくれたアーティストだった という事です。 紹介するまでもなく、’70年にビートルズが解散してから発表された アルバム『ジョンの魂』は、ほんとに傑作です。 どの曲もビートルズの「制約」から解き放たれたかのような、ストレー トなジョンの肉声が伝わってきます。 当時、ジョンは30歳。その後も傑作アルバムを発表しますが、「原点」 はここにあるような、まさに『魂』を感じる1枚です。 (12月12日) |
今年の大河ドラマ『義経』が佳境を迎えた事もあり、今回は 「義経もの」も多くある琵琶の音楽です。ご存知、義経は平家との因縁が 深い立場ながら、壇ノ浦で平家を破り、賞賛を受けるはずの兄、頼朝には 追われ、平泉で果てた、歴史の皮肉を感じざるを得ない「ヒーロー」です。 それゆえに、琵琶法師の弾き語る題材にもなりやすかったのでしょうが、 「平家物語」をはじめ「船弁慶」、「一ノ谷」、「衣川」など多くの「義経もの」 が今も語り継がれています。 昭和30年生まれの琵琶奏者、片山旭星氏(京都)は筑前琵琶を人間 国宝、山崎旭粋はじめその一門に、新内もまた人間国宝、岡本文弥に 師事し、さらに肥後琵琶を「最後の琵琶法師」と呼ばれた山鹿良之(熊本) に寝食を共にしながらの教えをうけた、正統かつ味のある「芸人」です。 その活動は古典のみならず、ジャズや現代音楽、舞踊との共演等と多岐 にわたっております。 この8月には「闇のさやぎ」と題した演奏会を京都・法然院で行い、闇の 演出の中、興味深い演奏を聞かせています。また、10月の後半はトルコ 〜ポーランドと演奏旅行に出かけておりますが、その気負わず、控えめ で自然体なたたずまいは、ユニークな活動とあいまって、深い、幅のある 音色となって琵琶に反映しています。 その片山氏が11月に花巻で演奏会を開きます。 興味のある方は、是非 1度、聞いて見てください。 (お問い合わせはせがわ迄) ★片山旭星のホームページはこちら(試聴もできます) (10月23日) |
秋、どこまでも高い空を思わせる音楽があります。 『草原のチェロ〜モンゴルの馬頭琴(ばとうきん)』という民族音楽 のシリーズに収められたCDを聴くとそんな気がしてきます。 馬頭琴は胡弓に似た楽器ですが、音色はよりシャープで2本の 鉄弦が張られています。遊牧を営んできたモンゴルの人々にとっ て生活上、欠かすことが出来ない馬の彫刻飾りを、ネックのトップ に施しているので「馬頭琴」と呼ばれるようになったとの事です。 このCDでは主にモンゴルの民謡が演奏されていますが、哀愁 あふれるメロディーが、まるで風のように、時に力強く、時に遠く 空高くまで消え入るかのように聞こえてきます。 奏者はモンゴルを代表する名人チ・ボラグ氏です。 (9月17日) |
夏の夜に熱いジャズも良いですが、今回紹介 するのはどちらかと言えばクールで淡々とした中に も緊張感あふれる曲です。今は亡き「ジャズの帝王」 マイルス・デイビスの「SHHH/ピースフル」という曲は 約18分間を通して、ドラマーは太鼓を叩かずシンバル だけを小刻みに鳴らし続け、ベースも抑制のきいた シンプルなフレーズを繰り返し、ギターと3台のキー ボードが幻想的な雰囲気をかもし出すなか、マイルス のトランペットがクールな彩りを添えていく・・・それは 風のようでもあり、なぜか夏の熱い夜に聴きたくなる 曲です。 バックをつとめるのは、今では皆「大御所」とも言え るミュージシャンばかり。ジャズの新しい流れを作ろ うとマイルスのもと、才能の火花を散らしています。 40年近くたっても色あせず、新鮮に聞こえるマジッ クみたいな曲です。(「イン・ア・サイレント・ウェイ」収録) (8月3日) |
今回は、梅雨時ということもあり「雨の音楽」です。 カーペンターズの「雨の日と月曜日は」は’71年と言 うから34年前(!)に発表されたシングルヒット曲です。 〜ふさいだ気分になる雨の日と月曜日は、愛する人に 会いに行きたくなる・・〜という内容の歌がしっとりと、そ して切々と歌われています。 (ところで、あるアンケートによると、現代の主婦にとって は、月曜日の午前が、1週間の中で最も心地よい時間 なのだとか・・) 亡くなって早や22年経つカレン・カーペンターですが、 その歌声は今もなお色あせることなく、人々を魅了し続け ています。 (左のアルバムは’95年に音が良くなって発表された ベスト盤) (6月21日) |
バラの音楽 6月になれば、バラも見ごろになるので、今回は「ローズ」 (バラ)の音楽です。 「ローズ」(ROSE)と言っても実は映画 の主人公の名前で、’60年代後半に活躍し、早世してしまっ た女性シンガー、ジャニス・ジョップリンがそのモデルになって います。 映画自体も、いろんな意味で’60年代を象徴する作品とな っていますが、短くも波乱の人生の幕をステージの上で閉じ る事になる主人公をベット・ミドラーが熱く演じています。 青春時代に大きな傷を受けた故郷にスターとして戻り、錦 を飾る大会場のコンサートの最中、力尽きてステージ上に倒 れる主人公・・遠く薄れていく大観衆のざわめきの中、聞こえ てくるのがエンドタイトル曲「ローズ」です。 これはもう、実に 名曲で、心にじーんと響いてきます。 B・ミドラーもほんとに 歌が上手いです。 (ちなみに、この曲は、かのアニメの名作「思ひ出ぽろぽろ」にも使われ ていました) (5月12日) |
さくらの音楽 桜をイメージできる音楽はたくさんありますが、今回は ゴンチチの「mica」を紹介してみます。ゴンチチはもうか れこれ20年以上も活躍しているギターデュオですが、 そのジャンルにとらわれない快適な音楽は、彼らならで はの味がするものばかりです。 「mica」はまるで陽の光をあびて、ひらひらと舞い踊る 桜の花びらの中にでもいるかのような曲。 聞き手の勝手な思い込みで「mica」とは「美花」で、そ れは、さくらに違いないと思ってしまった曲です。 大勢で賑やかな花見も楽しいですが、時に静かに、桜 の花のなかで、その雰囲気に浸りたいと思う人におスス メの1曲です。 「mica」はアルバム『マダムQの遺産』に収録 (4月8日) |
30年ぶりのポール・サイモン あのサイモンとガーファンクルが、まだそれほど人気も なかったころ、ポール・サイモンが一人だけで、ギター1本 で弾き語りしたレコードが「ポール・サイモン、ソングブック」 です。30年前、始めてこのレコードを聴いたのは中学生の ころ。すでにサイモンとガーファンクルは解散後の伝説の 人気デュオでしたが、このサイモン1人の私小説的なレコ ードは、やけにみずみずしく耳に響いてきたものでした。 去年、ようやくCDとして復刻され、あらためて聴いてみる と、いまだに新鮮で説得力もあり、忘れかけていた宝物に 陽を当てた思いでした。 名曲「サウンド・オブ・サイレンス」 や「4月になれば彼女は」の弾き語りバージョンはファンな らずとも必聴です。 (2月24日) |
バレンタインに向けて、今回は恋人やご主人と一緒に 聞きたい音楽をピックアップしてみます。 いろいろとある中でここではタック&パティの「ドリーム」を おすすめしてみます。 タック&パティはギターとボーカル の夫婦デュオなわけですが、夫の超絶テクニックのギター に妻の説得力あふれる歌が絶妙に絡んで、静かな中にも 熱く、優しく、一つになった音世界をつくりあげています。 『ドリーム』というCDは’91年の発表で、オリジナル曲、 カバー曲どれもが名曲ぞろいの好アルバムです。 タイトル曲の「ドリーム」は”夢見ることから、すべては始 まる”といた内容の「愛」についての歌です。バレンタイン にはチョコもいいですが、深くて味わいのある音楽も忘れ ずに・・・ (1月17日) |
年の瀬、あらたな旅立ちの歌 今回紹介するのは、ずばり名曲です。 小川美潮の「窓」。 そのユニークな歌声と活動で知る人ぞ知る小川美潮の歌唱 力、表現力は実にたいしたものです。童謡からジャズまで自 分の色で歌えてしまえる人です。 「窓」は1991年に発表さ れたアルバム『4to3』に入っている曲なのですが、歌詞とメ ロディー、そして歌声がこれほど一つになって沁みてくる曲 は、そうそうありません。 移り変わる時の流れの中で、今 は年老いた女性の「旅立ち」の物語を最初はつぶやくように そしてだんだんと熱く、大きく歌いきっています。 実は特に 「年の瀬」にということではなく、時々、棚から引っ張り出して 聞きたくなる1曲なのでした。 (12月2日) |
秋・・大人のバラード 秋は空気も澄んで、ピアノやアコースティックギター の音色がいっそうきれいに聞こえてきます。 今回紹介するボニー・レイットの「アイ・キャント・メイ ク・ユー・ラヴ・ミー」もピアノにのせて歌うスローテン ポのバラードです。 素直な「愛」をもとめながらも心がすれ違ってしまう 切なさを女性の視点から歌った名曲です。(ピアノは ブルース・ホーンズビー) ボニー・レイットは今やベテランの女性ミュージシャ ン。ハスキーなのに艶があり、説得力ある歌声、スラ イドギターの名手でもあります。 以前、様々な事情 から、ドラッグやアルコールの依存症にまでなり、ブ ランクがありましたが、音楽を支えに見事カムバック。 深みを増した声と楽曲でグラミー賞も獲得。派手さは ありませんが、味のある実力派です。 (CD「ラック・オブ・ザ・ドロー」に収録)(10月28日) |
今回は花巻を中心に活動しているグループ 「katsu with 2u」のメンバー、宮沢勝彦のソロ CDを紹介します。仕事とグループ活動の合間 を縫って、録音されたCD(全3曲・・内1曲は カラオケ)ですが、一言、気合が入ってます。 出さずにはいられなかった、という感じです。 「すれ違う他人(ひと)の笑い声にも泪がある。 今は悲しみの河を抱いて眠れ」と歌うタイトル 曲は軽快なポップロック調。2曲目の「ウォータ ーメロン」は少しけだるく、おしゃれな匂いのア コースティックナンバー。今、巷に溢れる「音楽」 はいわゆる「音楽業界」が仕掛けた「商品」とし ての性格が強いものが多いのに対して、この CDは「地方」発の純粋な音楽大好きの結晶と もいえるものです。(ジャケット写真は、かのイ ギリス海岸で撮ったもの。中ジャケも含めてな かなかのセンスです!) (9月20日) |
「涼しげな音楽」 青い空と海・・誰もいない静かな砂浜・・聞こえてくるのは 波の音だけ。ときおりさわやかな風が海を渡ってくる・・ そんな音楽がマイケル・ヘッジスの「ドリームビーチ」です。 惜しくも'97年に若くして交通事故でこの世を去ったM・ヘッ ジスは超絶なテクニックを持ったギタリストでしたが、決し てテクニックにおぼれることのない「音楽家」でした。まず 頭の中で音楽が鳴り響く。それを表現するためにおのず と独特なテクニックが必要となる・・そんな感じです。 ギター以外にも歌やフルートもこなし音楽の幅をひろげ ていただけに今さらながら夭折が惜しまれます。 「ドリーム・ビーチ」はギターの変則チューニングによる 印象的な和音に風の音を思わせるフルートがかさなり、 ゆったりと彼方まで運ばれて行くような音楽です。 (オリジナルラストCD「ともしび」に収録) (8月9日) |
7月7日は「七夕」ですが、大体、梅雨のさなかで きれいな星空を見れない事の方が多いようです。ただ、 国立天文台が提唱している「伝統的七夕の日」(注)と いうのがあって、それによると今年の七夕は8月22日 なのだそうです・・というわけで今回は「七夕」的な音楽 紹介するのは、ステファン・ミクスの「トゥ・ザ・イブニン グ・チャイルド」。S・ミクスは、世界各地の民族楽器を 使って印象的な音楽をつくっているアーティストですが、 ここでは主にスチール・ドラム(ドラム缶を改造した太鼓) やインドの弓で弾く弦楽器、バリ島のガムランなどで使 われる笛などを用いて静かに、深く夜空に響き渡るよう な音楽を奏で、歌っています。ふつうは賑やかなスチー ルドラムが星のまばたきのように聞こえます。(7月2日) (注:「伝統的七夕の日」−「24節気」の「処暑」(しょしょ=毎年8月 |
6月は「ジューン・ブライド」ということで今回は 「結婚式の音楽」。私も自分たちの披露宴には、 音楽好きが高じて、自分で選曲、編集した音楽を 要所要所でかけてもらいました。(早や、もう10年 以上も前の話になってしまいましたが・・) いろいろ選んだ中でも単純明快でわかりやすいの がディズニー映画のラヴソングを集めたディズニー ウェィング・コレクション「ウェディング・ベル」。今と なっては、ほとんど聞くこともなくなりましたが披露 宴で使うのには「もってこい」の曲がたくさん詰まっ ています。 今でも時々耳にするのはポール・マッカートニーの 「心のラブソング」。親しみやすく、乗りのいい曲で 手拍子をしてもらったり、会場も盛り上がります。 (h16.5.30) |
新緑の季節。「緑の音楽」ということで題名から単純 に「木の葉は緑」(サイモンとガーファンクル)。軽やかなリ ズムと美しいメロディー、2人のきれいなハーモニーにハー プシコードが絡む印象的な曲。新緑の中をサイクリングでも しているようなイメージの曲ですが、歌詞は少々文学的で、 移り行く時と共に変わってしまう人の心を木の葉の色に重 ねています。 ポール・サイモンがこの曲を書いたのは20 代の始め。その天才ぶりには改めて驚かされます。 「木の葉は緑」はアルバム『サウンド・オブ・サイレンス』に 収録されています。 (このレコードにも、タイトル曲を始め、 だいぶお世話になったな〜) (h16,4,27) |
春の音楽といえば心うきうきする軽快なイメージ ですが、今回紹介する辻幹雄のソロギター組曲 「春のゆくへ」はしみじみと心に沁みて来る音楽で す。 4つのパートからなるこの曲は「白村江(はく すきえ)の戦」(663年)で生き別れ大和の国に漂 着しながら生涯めぐり合えなかった百済の夫婦と その戦で一人息子を失った若狭の老夫婦との出 会いの物語の詩をもとにつくられました。 辻幹雄のなんとも深い音色の11弦ギターと情緒 的でごこか懐かしいメロディー。 秋田県出身のギ タリストが奏でる印象深い曲です。 「春のゆくへ」は辻幹雄のファーストCD『風の標』 に収録されています。 (h16,3,20) |
3月はひな祭りということで、今回は「歌姫」の音楽。 歌姫と言えば、美空ひばりやマレーネ・ディートリッヒなどなど あげたらきりがありませんが、ここでは、少し個性的なところで ケイト・ブッシュを推してみます。 天才少女として1978年にデビューしたケイト・ブッシュは一 度聞いたら忘れられない声の持ち主で、作詞作曲もこなし、 ステージではパントマイムも披露する多才な人です。 その才能はとどまるところを知らず、一時期かなり前衛的な 曲をつくり発表していましたが、基本的には美しく、印象的な 曲を書ける人です。 デビューアルバム「キック・インサイド」は、そんなエッセンス がいっぱい詰まった好アルバムです。 (邦題は、なぜか「天使と小悪魔」!?) (h16,2,17) |
無人島に10枚だけもっていくとしたら・・・ というテーマで よく年末年始など自分の持っているCDの中から選んでみて は一人で楽しんでいたりしますが、今回はその中の一枚で す。 「ナイトノイズ」の『ホワイト・ホース・セッションズ』 ナイトノイズはアイルランドとスコットランド出身の4人のミュ ージシャンから成るバンドでケルトの伝統的な音楽を土台に ジャズやクラシックなどの要素をミックスして斬新で心温まる 音楽を演奏しています。 『ホワイト・ホース・セッションズ』はライヴ録音で彼らのベス ト盤ともいえる選曲。 時に繊細で、時にダイナミックな音を 奏でるナイトノイズの音楽はケルトの郷愁的なメロディーと共 に深く印象に残ります。 数年前の夏に来日した折、箱根の森の屋外美術館の広場 でのコンサートを見ることができました。 夕暮れの芝生の上で、ひぐらしの声と共に聴いた音楽は、 今でも心に残っています。 (h16,1,13) |
さむくなると恋しくなる鍋料理ですが、今回は 「寄せ鍋」のような音楽はないものかと探してみ ました。 にぎやかで、体があったまって、栄養 満点で、みんなでつっつき合うような音楽・・・ 考えて思い当たったのが「上々台風」(しゃん しゃんたいふう)。 男女混合の日本のグルー プですが、歌謡曲のような(沖縄)民謡のような ロックまたはソウルのような、祭囃子のような・・ とにかくいろんな音楽の要素をぶち込み楽しさ で味付けした音楽をやっています。 かと言って 単なる「ごった煮」ではなく、きちっとしたアレンジ で歌唱力も演奏力もはんぱではありません。 聞いていると元気の素が身体に吸収されてい くかのような音楽です! (h15.12,14) (※「台風」の「台」の字は本当は風偏に台と言う字です) |
晩秋というか、すでに冬っぽい日も増えてきましたが、そんな中今回は長くな った夜にぴったりとくるCDを3枚ほど紹介します。まずは、リッキー・リー・ジョー ンズの『マガジン』。R・L・ジョーンズはジャズやフォーク、クラシックの要素も取 りいれながら独特の世界をつくりあげている女性ミュージシャンですが、『マガ ジン』は1曲1曲が短編映画のような雰囲気を持つ曲ばかりで個性的な声とあ いまって秋の夜長など思わず聞き込んでしまいます。 次にラルフ・タウナーの ギターソロCD『ANA』。もともとはジャズ系と言っていい人なのですが、ここでは クラシック・ギターと12弦ギターでオリジナルを14曲、録音しています。練られ た曲と抑制されながらも光るギターテクニック。録音状態も良く、夜に聞いてい ると、まるで自分だけに語りかけられているような音楽です。 最後はグレン・ グールド演奏のブラームスのピアノ間奏曲集。これもまた、すごい名演で聞い ているうちに、すーっと、どこか深いところに降りていくような、そんな感覚にと らわれるCDです。 (h15.11.13) |
予期せぬ時に、ふとラジオから 流れてくる懐かしい音楽で「今,いる自分の 場所(時間)」を「はた」と振り返り実感 してしまうことがあります。その音楽を聞い ていた当時の情景が思い起こされ、そして今 現在も同じ曲を耳にしている自分が「こんな ところ(時)まで来ちゃったなぁ」と妙にし みじみしまうのです。 こないだはラジオか ら流れてきたビリー・ジョエルの『オネステ ィ』でそんな気持ちにさせられました。もと もと美しいバラードなのですが、そういう時 は例えラジオでも。やけにくっきりと聞こえ るのです。 おもしろいのは、始めから自分 で聞こうと思った時は、あまりそんな感じに ならないと言う事です。(経験あるでしょ?) (10月12日) |
秋になると、空気が澄むせいか、月もいっそうきれいに見え ます。 そこで今回は月の光を想わせる曲。 まずは、やっぱりベートーヴェンのピアノソナタ『月光』。 この曲には数々の名演がありますが、私はグレン・グールドの 演奏を聴いています。グールドの演奏はテンポがちょっと早く、 淡々と始まりますが、全曲通して聴くと「月の一夜」の情景が目 に浮かんでくるような、説得力のある好演です。 さて次にドビュッシーの『月の光』も挙げない訳にはいきませ ん。月夜の印象が絶妙に表現された色彩感あふれるこの曲は ピアノだけでなく様々な楽器でアレンジされています。 あと、もうひとつ(実はまだまだあるのですが・・)おすすめの曲 は「風の楽団」の『月弓』。「風の楽団」は世界の民族楽器を使っ てユニークな音楽活動をしている日本のグループです。 『月弓』は中国の楽器「揚琴」と「二胡」(胡弓)のデュオで冴え 渡る月の光の美しさと、どこかそこはかない感じが良く出ている 曲です。作曲者のコメントでは「月のない夜、見えなくとも必ず、 そこにあるだろう月を想ってつくられた曲」なんだそうです。 (9月11日、十五夜の日・・今年はちゃんと見えるかな?) |
「風の楽団」ファーストCD |
なんと、およそ6万年ぶりの火星大接近がこの8月27日 に迫ってきました。最接近時に倍率100倍程度の望遠 鏡で見ると、肉眼で見る満月より大き見くえるというので 楽しみです。 というわけで、今回は「火星」から連想 する音楽です。 まずはそのものズバリでホルストの 「火星」。クラシック音楽の組曲『惑星』の中の1曲ですが その何か、おどろしげな曲をアレンジして「デビルズ・トラ イアングル」と題して演奏したロックバンドもありました。 次にデヴィッド・ボウイーの『ロウ』。このジャケットはボ ウイー自身が主演した映画、『地球に落ちてきた男』の1 シーンからとったものなんですが、赤オレンジ色をバック にした、なんとも妖しげな雰囲気から勝手に「火星」を連 想してしまうのです。肝心の音の方は、これがもう大傑作 アルバムです! センス良いポップ感覚と前衛的なアー ト感覚が織りなす独自の音世界が展開されています。 ボウイー自身の疎外感をテーマにしたとも言われるア ルバム『ロウ』は26年前に発表されているのですが、今 でも色褪せていません。 (8月9日) |
7月21日は人類が初めて月に立った日という事で、 今回は「月世界」を思わせる音楽。で、そのものズバ リなのが、ブライアン・イーノの『アポロ』。 NASA(アメリカ航空宇宙局)のアポロ計画の記録映 画のために作られた、いわゆるサウンドトラックです。 B・イーノのほかに弟のロジャー・イーノ、(U2やボブ・ ディランなどのプロデューサーとしても有名な)ダニエ ル・ラノアが参加しています。 全12曲、インストゥルメンタルですが、その雰囲気は さすが! 暗く、冷たい宇宙、宏大な空間の中での孤 独感、静かな時間の流れ、星の輝き、そして地球への 懐かしさなどを感じさせる音作りをしています。 また、ちょうど青い地球をバックに気持ちよく宇宙遊 泳でもしているかのような曲もあり、これから先、夏の 夜に聞くにも、もってこいです。 (7月7日) |