MONSTER -浦沢直樹の魅力に迫る!-


12月19日(月)25時50分頃、福岡でアニメ「MONSTER」が最終回を向かえました。

アニメ「MONSTER」は浦沢直樹さん原作で、95年から01年までビックコミックオリジナルにて連載されていた人気漫画をアニメ化したものです。同作は単行本全18巻、累計2000万部以上を売り上げています。

浦沢さんは他にも、「YAWARA!」「MASTERキートン」「PLUTO(ビッッグコミックオリジナルにて現在連載中!)」「20世紀少年(ビッグコミックスピリッツにて現在連載中!)」など数々の人気漫画を世に排出しています。

初期の代表作「YAWARA!」は、柔道の谷亮子さんが"やわらちゃん"の愛称で親しまれるなど、あまりに有名ですが、浦沢さんは「MASTERキートン」以降から新境地を開拓し、それまでとはまったく異なる"浦沢ワールド"を作り上げたということを何かの本で読みました。

僕は、「YAWARA!」「MASTERキートン」「PLUTO」「20世紀少年」を読んだのですが、確かに「MASTERキートン」以降は一貫した浦沢さんの世界観を感じることができます。

単純に、「MASTERキートン」からは主人公が男になるっていう違いがあるのですが、もちろん新境地とはそんな単純なものではなく――言葉よりもなによりも、一度漫画を読んだほうが早いと思いますが――"浦沢ワールド"とは文字通り、浦沢さんが作り出すもう一つの世界です。

「PLUTO」に至っては、原作は、かの巨匠手塚治虫さんの漫画「鉄腕アトム」ですが、「これぞ浦沢漫画だ!」と言わしめる作品となっています。「鉄腕アトム」の中の1話「地上最大のロボット」だけをリメイクするという常識破りの手法で、尚且つ主人公は、アトムではなく、ドイツのロボットゲジヒトというのも驚きです。


僕が最初に読んだ浦沢さんの漫画は「MONSTER」です。浦沢さんのことをまったく知らなかった僕は「YAWARAの人?まだ書いてんの?」っていう驚きを抱いていました。

読み始めてからは「絵が全然変わってないなぁ」などと思いつつも、どんどん"浦沢ワールド"に引き込まれていきました。

そこで、「MONSTER」の何がすごいのか、浦沢漫画の何がすごいのか、自分なりに考えてみました。

まず、何度も書いていますが、"世界観"です。

「20世紀少年」を読んでいると特に分かるのですが、まったく新たな世界、年号、システムにもかかわらず違和感を感じない。

スターウォーズのような未来ではなく、「こんなのあるかも」と思わせられるような近未来。

以上のような点が挙げられると思います。


続いてのすごいところは"演出"です。

「漫画で演出なんてあるの?」と思う方もいるかと思いますが、これこそが浦沢漫画の他の漫画にはない特徴だといえます。

それは漫画「MONSTER」とアニメ「MONSTER」を見れば、一目瞭然。

漫画「MONSTER」とアニメ「MONSTER」にはほとんど、というかまったくと言っていいほど違いがないのです。

普通漫画がアニメ化されると、いらないエピソードが加わったり、台詞が変わったり、順序が変わったりと、いろいろいじられるもんですが、「MONSTER」にはそれがないのです。そればかりでなく、絵の構成やカットまで、漫画から寸分違わずアニメ化されています。

僕は、その理由に「MONSTER」はそのままアニメ化しても遜色がないからだと考えています。

手塚治虫さんはドラマのようなカット割りを漫画で初めて採用し、今の漫画の原型を作ったといわれていますが、浦沢さんは、それをさらにパワーアップさせ、よりドラマに近い、まるで絵コンテのような技法を取り入れているのです。

そう思ったのにも理由があるのですが、僕自身「MONSTER」を見ていて、「まるでドラマを見ているようだ」と思っていました。

主人公なのに天馬が出てこないことが多かったり、最初に知らない人が出てきて話の結末でその真相が分かったり、という演出はこれまでの漫画には決してなかったことだと思います。

「MONSTER」はハリウッドでの映画化が決まったそうですが、非常に映画化がしやすい作品ではないでしょうか。――絶対映画化して欲しい!


浦沢漫画のすごいところ、最後は"同時進行"です。

演出と少しかぶりますが、浦沢漫画では数々の同時進行が行われます。

「MONSTER」でも「20世紀少年」でも一応主人公は決められているのですが、「本当にこの人主人公?」ってくらい、ひどい時は単行本1巻まるまる主人公が出てこないことがあります。

それは主人公が複数いて交互に描いているからとかではなく、シーンごとに、極端な話し出演者全員が主人公をしているからです。

それだけに、同時にたくさんの漫画を読んでいるような気にもなるし、普通以上に「続きが気になる!」という効果を生み出しているように思います。


以上が、僕が浦沢漫画から感じるすごいところです。

もちろん浦沢漫画の魅力はこれだけではなく、文章には書き表せないほど、もっとすごいことが隠されていて、僕が気付いてない魅力が他にもたくさんあると思います。

本当の浦沢漫画の魅力は、みなさん自身が、自分の目で見て、実感してください。

ぜひ、より多くの人に浦沢漫画を読んでもらって、より多くの人に"浦沢ワールド"に引き込まれてもらいたいと思います。

この拙い文章が、そのきっかけになってもらえれば幸いです。



20世紀少年(20)

PLUTO(2)

MONSTER(1) - 全18巻

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