原題 ; CANDY(1968) |
監督 ; クリスチャン・マルカン |
脚本 ; バック・ヘンリー |
音楽 ; デイブ・グルーシン |
出演 ; エヴァ・オーリン、マーロン・ブランド、リチャード・バートン、リンゴ・スター |
「博士の異常な愛情」「ラブド・ワン」の脚本家テリー・サザーンのエロティックな小説を、これでもかというほどのオールスターで映画化。 ほとんど好き放題デタラメなストーリー展開は評価の分かれるところだが、名優たちの珍演を見るだけでも楽しめるし当時のサイケデリックなポップアートやファッションなど見所はけっこう多い。エヴァ・オーリンも可愛い。 キャンディ(エヴァ・オーリン)は高校生、パパ(ジョン・アスティン)は先生だが授業に身が入らない。 放課後には憧れのカリスマ詩人・マクフィスト教授(リチャード・バートン)の講演がある。 屋内でもスカーフがたなびき自費出版本のPRに余念のないマクフィスト教授にキャンディはメロメロ、リムジンで送ってもらうことになる。 マクフィスト教授、実はアル中。リムジンの中でヘベレケになり、キャンディは自宅で解放することにする。 用を言いつけられた庭師のエマニュエル(リンゴ・スター)は誘われたと勘違いして、ぐでんぐでんのマクフィスト教授を尻目にキャンディを押し倒し一発決めてしまう。 そこに帰って来たのがパパ、ジャック叔父さん(ジョン・アスティン二役)とリビア伯母さん(エルザ・マルティネリ)。キャンディはニューヨークに転校することになっているのだ。 空港へ向かう一行は暴走族に襲撃される。暴走族の正体はエマニュエルの姉たち。聖職者を目指していたエマニュエルが童貞を奪われて道を閉ざされたと逆恨みしての犯行。 キャンディたちは離陸していた軍輸送機に逃げ込むがパパは頭部を負傷して意識不明になってしまう。 輸送機に乗っていたのはスマイト准将(ウォルター・マッソー)率いる一隊。有事に備えて24時間体制で飛び続けているのだ。 地上に戻れず禁欲状態のスマイトはキャンディに襲いかかる。キャンディは逃げたはずみに非常ボタンを押してしまった。 緊急指令が下され兵士たちは次々と降下していく。遅れてなるかとスマイトはパラシュートを残したまま飛び降りていくのだった。 輸送機は伯母さんの操縦で無事着陸。パパは病院に運ばれ緊急手術が始まった。 執刀するのは名医クランカイト(ジェームズ・コバーン)。観客席に囲まれた円形の手術室に喝采を受けながら登場。天才として当たり前の手術などしてもつまらないので動物でしか実験されていない技法に挑戦すると宣言、わやくちゃな手術の末に何故か成功する。 打ち上げパーティでクランカイトとダンラップ院長(ジョン・ヒューストン)の口論に巻き込まれたキャンディは気絶。クランカイトは個室に連れ込んで一発決める。 気付いたキャンディが病院内をさまよっていると一室ではクランカイトを信奉する看護婦たちが集会を開いていた。クランカイトの名を身体に刻む看護婦たちの無気味な姿にキャンディは病院を脱出。 映画監督ジョナサンの撮影でトイレで水浸しになった後、せむし男(シャルル・アズブール)と出会う。せむし男はキャンディを邸宅を連れ込むが、実は泥棒の親分、部下たちが現れて美術品を盗んでいく。 キャンディは駆けつけた警官に逮捕されてしまうがパトカーが事故った隙に脱走。 逃げ込んだ先はヨガの伝道師グリンドル(マーロン・ブランド)のトレーラーだった。グリンドルに性感マッサージみたいなヨガを施されたキャンディは、そのまま体力の限界に挑戦したセックスに突入。トレーラーが大陸を横断する間もし続ける。トレーラーは吹雪の中に突入、後部扉を閉めようとしたグリンドルは氷柱となってしまう。 砂漠にさまよい出たキャンディは顔に泥を塗りたくった賢者を発見、地下道について行く。 地下道は都市下の神殿へと続いていた。突然の地震に崩れる神殿。思わず賢者に抱きついて達するキャンディ。 地下水で泥が落ちた賢者の正体はパパだった。 オッサンばかり相手にするストーリーはファザコン・キャンディの幻想とも受け取れる。 オープニングとエンディングのキャンディの魂が宇宙空間を飛翔する視覚効果はダグラス・トレンブルが担当した。 ジェームズ・コバーンは得意とする自信家の役をカリカチュアライズさせて怪演。顔もなんだか白っぽくメークしている。まあ今回は全員が怪演なのだけれど。 余談その一=監督のクリスチャン・マルカン、あまり良く知らなかったのだがジャン・コクトー、ルキノ・ヴィスコンティ、ロジェ・ヴァディムに起用されたこともあった大物俳優らしい。監督作品は本作と「太陽は傷だらけ」の2作のみ。 余談そのニ=「荒野の隠し井戸」のデイヴ・グルーシンがちょっとサイケデリックな音楽を作曲。ザ・バーズの歌う主題歌もなかなか良いのだが、個人的には大好きなバンド・ステッペンウルフの2曲が劇中曲として使用されているのが嬉しい。ステッペンウルフは日本では「ワイルドで行こう」一発屋のハード・ロック・バンドと思われているが、実際には幅広い音楽性を持っており本作で使用された「マジック・カーペット・ライド」は当時のサイケデリック・アートの代表作として「オースティン・パワーズ」にも使われた。独特なキーボードの使い方には日本のシンセサイザー奏者・難波弘之も注目していたという。今年リバイバルした際のプログラムではステッペン・ウルフと記されているが中黒は不要。バンド名はヘルマン・ヘッセの小説「荒野の狼」にちなんでいる。 |