原題 ; CROSSOVER(1980) |
監督 ; ジョン・ギラーミン |
脚本 ; トーマス・ヘドリー・ジュニア |
音楽 ; ポール・ホファート |
出演 ; ケイト・ネリガン、フィノヌラ・フラナガン、キャンディ・ケーン、レス・カールソン |
「MR.PATMAN」が劇場公開時のタイトルで「CROSSOVER」はビデオ発売時に付けられたらしい。 大作の続いたジョン・ギラーミン監督による異色心理ドラマ。 「タワーリング・インフェルノ」(1974)「キングコング」(1976)「ナイル殺人事件」(1978)本作と2年ごとに作品を手がけてきたギラーミン監督だが、次の「シーナ」(1984)までには4年のブランクがあった。もしかしたら本作がコケてほされてしまったのかもしれない。 ジェームズ・コバーンとしては、現実に適応しきれず破滅していく、「はるかなる南部」「ロデオに命を賭けた男」のシリアス・ドラマで得意とした役柄の延長線に当たる。 パットマン(ジェームズ・コバーン)は精神病院に夜勤で働く看護士。 患者からも医者からも頼りにされる存在。難しい患者をなだめる役は、いつも彼だった。 時には治療中雑談にふける医者とぶつかったり、不眠症の神父に睡眠薬を都合したりもする。 アパートに帰れば話し相手は一匹の猫。大家夫人のアバダバ(フィオヌラ・フラナガン)とは不倫関係にあった。 一見正常な生活を送るパットマンだが、通行人に見張られているという強迫観念に取り付かれていた。 そんなある日、患者の一人モニカが自殺する。その事件をきっかけにパットマンは看護婦のピーボディ(ケイト・ネリガン)とも関係を持つ。 パットマンはピーボディにカリフォルニア行きを誘われるが踏み切れない。 通勤中のパットマンは交通事故に出会い、被害者をピーボディと信じ込む。 彼は昔男の患者に傷つけられたことがあった。それがトラウマとなって、その患者に見張られていると感じ続けているのだ。 すでに精神状態が崩れているパットマンはピーボディから電話が入っても正常に対応しない。 次には患者が実は正常で、精神状態を切り替えて暮らしていると思い込む。 相変わらず親身に治療しない医者に電気ショックを与え、手術を嫌がる患者ベックマン夫人を連れ出してしまう。 突然、ピーボディに一緒に行くと言い出すパットマン。 パットマンを迎えに来たピーボディは、脱走で大騒ぎになっているベックマン夫人がいるので驚く。それでもパットマンに説得され3人と猫一匹で出発。 だが、その車中でベックマン夫人の心臓が止まってしまう。 穏やかな死に顔だ、とあわてもしないパットマン。 ピーボディは、道を歩いているベックマン夫人を見つけ、保護して病院に向かう途中で死んだことにする。 猫を見失ったパットマンは死体保管所で係員に掴みかかり警察に通報されそうになる。居合わせた神父の取り成しで帰宅することができた。 この年で移住は無理だと猫を安楽死させるパットマン。 翌朝、迎えに来たピーボディは、パットマンを病院へと連れて行き入院させる。 喜々として病室に入るパットマン。ベッドに横たわってくつろぐパットマンの姿にピーボディは涙するのだった。 暗くて地味なドラマ展開。印象的な作品ではあるが、観ていて引き込まれるほど深みのある作品にはなっていないのが残念。ギラーミン監督が、かって手がけた「かもめの城」の味わいには及んでいない。 こういう内向的なドラマでも、女性に不自由しないところがコバーンらしいと言えなくもない。 周囲の狂気に影響され、自らも精神のバランスを失っていく主人公というテーマは、「アフリクション白い刻印」でコバーンにオスカーをもたらしたポール・シュレイダー監督の得意とするものなので、その共通点は興味深かった。 |