原題 ; FLIC OU VOYOU(1978)
 監督 ; ジョルジュ・ロートネル
 脚本 ; ジャン・エルマン、ミシェル・オーディアール
 音楽 ; フィリップ・サルド
 出演 ; ジャン=ポール・ベルモンド、マリー・ラフォレ、ジョルジュ・ジェレ
フランス映画際では「警部」のタイトルで上映された。
原題は「刑事か無法者か」。前半はベルモンドが正体不明の男、という設定なので、どちらの邦題もちょっぴりネタばれ。
南フランスはニースのモーテル、プラタニアでベルトラン警部と娼婦が殺される。警部の死体は運び出され、車の運転手席に置かれて銃弾を撃ち込まれる。というのが導入部。
白いクラシックのオープンカーに乗り、マフラーをなびかせた謎の男セルッティ(ジャン=ポール・ベルモンド)。
セルッティは警部の未亡人宅に車で突っ込む。
未亡人に、事件は車内ではなくモーテルで起き、一緒に殺害された娼婦は自分の妹リタだったと言って金を要求する。
次にセルッティはリタの母親を訪問、ポン引きのマリオの名を聞きだす。
セルッティはマリオとモーテル管理人を脅し、悪徳刑事マサール(ジャン=フランソワ・ベルメ)とレイ(トニー・ランドール)が死体を運び出したことを知る。
暗黒街の黒幕テオドール・ミュザール(ジョルジュ・ジェレ)に目をつけたセルッティ。ミュザールを裸で公衆電話の置き去りにして時間を稼ぎ、カジノに乗り込んで時限爆弾で爆破。敵対する組織のボス、アシルの仕業と勘違いしたミュザールは抗争を始める。
帰り道セルッティは作家のエドモンド・ロスタン(マリー・ラフォレ)と知り合う。
セルッティが未亡人の家に押しかけると、そこにはアシルとマサール、レイが待ちかまえていた。
殴られて意識を失ったセルッティは銃を持ち、マリオの死体とともに発見された。
警察に拘束され尋問を受けるセルッティ。そこに英国に留学させていた娘シャルロットが押しかけてきた。
セルッティの正体は、事件を捜査するためパリから派遣された警視スタニスラス・ボロウィッツだった。
セルッティは、グリモー署長や検事と打ち合わせて現場検証中に逃亡。シャルロットと2人でロスタンの邸宅に転がり込む。
モーテル・プラタニアを焼き払うセルッティ。
ようやくセルッティがリタの兄でないことを掴むアシル。
一方、セルッティは空港で密輸の現場を押さえ、麻薬をトイレに流させる。更にミュザールの事務所も爆破。2大組織の抗争は激化した。
組織を手玉に取るセルッティことボロウィッツだが、思春期の娘には手を焼いたりする。
悪徳警官マサールは、セルッティの正体を突き止めた。相棒のレイはボロウィッツ殺害を企てサウナで襲撃するが返り討ちとなる。
ボロウィッツは、アシルを逮捕。
マサールはミュザールと組んでシャルロットを誘拐した。
グリモー署長にアシルとシャルロットの交換を断られたボロウィッツに、マサールが接近する。
検事をだましてアシルを連れ出すボロウィッツ。
だが、誘拐はアシルではなくミュザールの仕業だった。
ミュザールの要求は、ボロウィッツに賄賂を受け取らせ、手書きの領収書を書かせるというもの。
人質の引渡し現場に現れたのはマサールとシャルロットだけだった。
マサールはミュザール一味を皆殺しにした。自分だけ助かろうというのだ。
だが、ボロウィッツは真相を見抜いていた。
マサールはアシルを乗せた車で逃亡しようとして警官隊に銃撃され車は炎上、橋から落下した上に列車に激突されるというボロボロな最期を遂げる。
監督は「狼どもの報酬」のジョルジュ・ロートネル。この作品以降「道化師/ドロボー・ピエロ」「プロフェッショナル」「恋にくちづけ」でベルモンドとコンビを組むことになる。
ストーリーはちょっと「用心棒」を思わせるのだが、さばききれずガチャガチャした印象が残った。もう少し単純明快にしたほうが良かった気がする。
アクション・シーンの激しさと私生活のユーモラスさも少しチグハグしている。それぞれは悪くないのだが。
シリアス・ドラマでも実力を発揮するベルモンドだが、こうして久しぶりにアクション・コメディを見てみると、ジャッキー・チェン主演作に似ているな、と思えた。
それは本人自身ががスタントをこなしている、というだけではなく、この二人の主演作は作品自体の完成度がそれほど高くない場合でも、見終わった後に憎めない印象が残るということではないかと思う。
警視コマンドー