原題 ; DIE MONSTER DIE(1965) |
監督 ; ダニエル・ホラー |
脚本 ; ジェリー・ソウル |
音楽 ; ドン・バンクス |
出演 ; ニック・アダムス、ボリス・カーロフ、スーザン・ファーマー、パトリック・マギー |
H,P,ラヴクラフトの「異次元の色彩」を映像化した作品。 「MONSTER OF TERROR」の別タイトルあり。 アーカムの駅に青年(ニック・アダムス)が降り立つ。タクシーを捕まえるが、行き先がウィットリー家だと分かると乗車拒否されてしまう。 町の人々に聞いても拒絶反応ばかり。自転車を借りようとしても断られた。 仕方なく青年は歩いていく。途中の森は小立が立ち枯れていた。 門を入ってかなり歩くと霧に包まれた屋敷が見えてくる。青年の姿を見つめる黒いベールをかぶった人物がいた。 ベルを押しても応答がないので男は屋敷に入っていく。そこに車椅子の老人(ボリス・カーロフ)が現れた。 青年の名はスティーヴン・ラインハート。ウイットリー家の娘スーザン(スーザン・ファーマー)と結婚しようとしている。 老人はウイットリー家の当主ナウム.彼はなんとかスティーヴンを追い返そうとする。 スーザンがスティーヴンの声を聞きつけて飛んできた。 屋敷を案内するスーザンは、スティーヴンを病気療養中だという母親レティシア(フリーダ・ジャクソン)にベッドのシェードン越しで挨拶させる。 ウイットリー老人の車椅子を押す執事のマーウィンは具合が悪そうだった。 レティシアはスティーヴンに金のイアリングを見せる。 それはメイドのヘルガのもので、彼女は一か月前に恐ろしい病気にかかったのだという。 ヘルガは人目をさけるようにベールをかぶって暮らすようになり、ある日レティシアの部屋にイアリングを落としていったのだった。 レティシアはヘルガを早く連れ出してほしいとスティーヴンに頼むのだが、お熱いスティーヴンとスーザンはすぐにイチャイチャし始めて深く考えない。 ナウムとレティシアが口論を始める。ナウムは父親の代からの悪魔信奉者であるらしい。 レティシアは娘だけでも助けようとスティーヴンを呼び寄せたのだった。 ディナーのとき、屋敷のどこからか叫び声のようなものが響いてくる。 スティーヴンは屋敷に来る途中、木々が死に絶えた黒い地帯があったことに気づいていた。 食事の最中、マーウィンが倒れこむ。ナウムは彼には持病があるのだという。 スティーヴンは屋敷の古書に目を通す。奇妙な新生物に手を出すものは破滅するとあった。 窓の外から何者かが覗いているのに気づいたスーザンは大声で叫ぶ。駆けつけたスティーヴンは気のせいだと落ち着かせる。 深夜になり下の階からの叫び声を聞きつけたスティーヴンとスーザンは屋敷を探っていく。 行き当たったのはマーウィンの部屋だった。するとナウムが部屋の中から現れ、マーウィンが死んだので中には入るなという。 スティーヴンはナウムの態度に不信感を抱くが、スーザンは今夜はとにかく寝るように説得する。 一人になったスティーヴンは、ナウムが歩いて何かを運んでいるのを見つけ、後をつける。 ナウムは温室に何か隠しているようだった。 ナウムを一度やり過ごしたスティーヴンが再び外に出ると顔の崩れた女に襲われた。 女に逃げられたスティーヴンは、さほど動転した様子もなく町に到着。ヘンダーソン医師(パトリック・マギー)を訪ねる。 スティーヴンは、、なぜ町の者がウィットリー家を怖がるのか聞き出そうとする。 ヘンダーソンからは何も聞き出せなかったが、彼の世話をするベイリー夫人からヘンダーソンの人が変わったのは祖父コービン・ウィルソンの死に立ち会ってからだと教えられた。 屋敷に戻ったスティーヴンは、スーザンとともに温室に忍び込む。中には巨大な原色の花が咲きほこっていた。 何かの鳴き声が聞こえたので二人はさらに奥へと入っていく。そこにはエネルギーを持った光る物質と檻に入った怪生物がいた。 スティーヴンは、物質が放射能を持っており、汚染された動物や植物が突然変異を起こしたのだと推測する。 温室の土には放射性物質の破片が植え込まれていた。 レティシアやヘルガ、マーウィンも放射能の影響を受けたのだ。 そのとき植物のツルが動き出し、スーザンを巻き込む。スティーヴンは、鉈(なた)でツルを切りスーザンを助け出す。 物質の親石を探し出そうとスティーヴンは、地下室を捜索する。 スーザンからそれを聞き出したナウムが追いかけていく。 スティーヴンは、物質をすべて処分するようナウムを説得するが、その力に魅せられたナウムは聞き入れない。 その時、スーザンの叫び声が聞こえた。スティーヴンとナウムが駆けつけると、彼女は何者かに襲われたのだという。 三人は姿を消したレティシアを探す。 スティーヴンとスーザンをモンスター化したレティシアが襲う。やがて力尽き倒れると、レティシアは爛(ただ)れた顔から血を流して死んだ。 ナウムとスティーヴンはレティシアを埋葬した。 ナウムはこの事件の原因を悪魔崇拝主義者だったコービンにあると考えていたが。物質は隕石であるらしかった。 ナウムはその石の力で植物を栽培し巨大に育てて、ウィットリー家の汚名を晴らそうと考えていたのだ。 ナウムが地下室の隕石を処分しようとしていると、鎌(かま)を持ったヘルガが襲ってきた。 ヘルガは倒したが、ついにナウムの身体にも変化が現れた。 物音にスティーヴンが地下室に降りると光る手の跡が点々と続いていた。そこに青白く光る怪物と化したナウムが襲ってくる。 ヘルガに迫るナウム。彼は勢いあまって2階から落ち、火花を放って燃え始める。 スティーヴンは落下しかけたスーザンを助け上げた。二人は炎上する屋敷から脱出したのだった。 1931年の「フランケンシュタイン」でホラー映画界のスターとなったボリス・カーロフ晩年の作品。 最後のころはメキシコに出稼ぎしたB級ホラーが多くなり、不遇な印象の強いボリス・カーロフだが、この作品とピーター・ボグダノヴィッチ監督の「殺人者はライフルを持っている!」があるので、かなり救われている。 前半はゴシック・ホラー、後半はSFホラーとして展開していくが、全体のバランスがうまく取れている。 地味な作品ではあるが、同じH,P,ラヴクラフト原作、ダニエル・ホラー監督でも中途半端なスケールで尻つぼみとなった「ダンウィッチの怪」よりはるかに完成度が高い。 ダニエル・ホラー監督は「深海の軍神」にも製作で参加している。 H,P,ラヴクラフトの作品の一部は、放射能汚染の恐怖を予見していたのではないか、という説を以前読んだことがあるが、この作品がその説の原典なのかもしれない。 |