年度 ; (1961)
 監督 ; 小沢茂弘
 脚本 ; 松浦健郎
 音楽 ; 鈴木静一
 出演 ; 片岡千恵蔵、進藤英太郎、江原真二郎、久保菜穂子、三田佳子、佐久間良子
今回は未見の作品。
今は昔、テレビ東京(もしかしたら東京12チャンネルの時代だったかもしれない)が土曜だったか日曜だったかのゴールデンタイムに邦画専門の番組を組んでいて、石原裕次郎の作品や「切腹」「鬼婆」「男はつらいよ」なんかの名作を放送していた。
その番組に、ある日この作品の予告がかかった。
全部は覚えていないが、総天然色という表現が似合いそうなケバい発色の映像、いかにもセットっぽい牧場の前で、全然似合わないウェスタン・スタイルに身を固めた片岡千恵蔵と進藤英太郎が紋きり調の啖呵を放って決闘しようとする。なんだか茶の間に異世界が発生したような気分になったのを覚えている。
こんな作品、本気でゴールデンタイムに放送する気だろうか。そう思ったが、実際翌週になると他の作品にプログラムが変更されていた。
というわけで自分にとって幻の作品。タイトルも正確には記憶しておらず、片岡千恵蔵のフィルモグラフィーでこの作品だろうと見当をつけていたのだが、インターネットのおかげで間違いなかったと確認できた。
キネマ旬報の紹介によって、想像していた以上に物凄い作品と分かった。
ここにストーリーの概略を要約してみる。
世界中の賭場が不況となり、フジヤマゲイシャの日本市場を狙い世界中のギャンブラーが乗り込んできた。
その中には国定忠治の子孫・ゴールドラッシュの熊吉(進藤英太郎)、祖母に芸者ガールを持つフランス人・スペードのジャック(江原真二郎)、そしてパンチョス・スタイルの無宿者・アマゾンの源治(片岡千恵蔵)がいた。
国際的な内容なのに主要人物が全部東洋系という予算のなさそうな侘しさを感じるが、とにかく人物設定とネーミングのセンスには驚かされた。
香港から日本のギャンブル市場独占を狙って来た麻薬王・竜源昌(月形龍之介)は三人を用心棒に雇う。
そこに竜の秘書・玉琴が発狂して発砲する事件が起きた。
この玉琴、実は正気で竜に殺された恋人の仇を討とうとしたのだ。真相を知った源治は玉琴を助け、彼女の妹・道子(佐久間良子)の経営する牧場へと逃れる。
ここで熊吉と決闘になり、予告編で見た場面となるらしい。
源治は決闘に勝利するが、熊吉はインドから乗り込んできたハッサンと組んで再び現れる。
源治は竜に裏切られ、撃たれて海中に姿を消す。もちろん実は無事で、全ては祖国日本を守ろうとする源治と熊吉の仕組んだ芝居だった。
彼らとともに警官隊がなだれ込み一味は逮捕。
後日、皆に見送られながら羽田空港を飛び立つ源治と熊吉の姿があった。
何が大魔王なのかは分からないが、もう勝手にやってくれと言いたくなるストーリー。
ぜひ一度観てみたい映画ではあるが、二度は観たくない出来という気もする。
上記の他に梅宮辰夫、小沢栄太郎が脇を固めており、日活に対抗して千恵蔵主演の無国籍映画を立ち上げようという意気込みだけはあったのかもしれない。
余談=同年に姉妹編「ヒマラヤ無宿/心臓破りの野郎ども」が製作されている。こちらで片岡千恵蔵が扮するのはヒマラヤから雪男を連れ帰った学者・土門健吉で、無宿者など登場しないらしい。だが、進藤英太郎の役名がボリショイの熊吉、水谷良重扮する謎の女がヨッチィ・三谷とネーミング・センスのすごさだけは衰えていない。
雪男騒動の中、主人公がヒマラヤのプルトニウム鉱山をめぐる陰謀を暴く、というストーリーらしい。
インディ・ジョーンズに先駆けた冒険映画、というわけではなく、あらすじを読むと日本国内だけで展開する内容のようだ。結局日本に連れてこられた雪男は、只のシェルパだった、という意味不明のオチがつくとか。
「海底から来た女」「黄金バット」などに出演した後、ハリウッドに渡りジョー・ダンテ、ジェームズ・キャメロンで「ピラニア」シリーズを製作した筑波久子が出演していたりするので、こちらのほうがマニア度の高い作品かもしれない。
アマゾン無宿/世紀の大魔王