ピリカヌプリ トヨニ岳屋 その2
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2日目:Sa氏の夢が叶えばと密かに用意した紙片(北海道100名山118座完登/夢を運んだピリカヌプリ)をザックにしのばせる。
素晴らしい眺望が日の出と共に広がり、険しい尾根筋に続く北峰・どんぶりの縁を歩くような極めて細い稜線が続く奥側にはピリカヌプリの山容が「北峰」左側に聳え、Sa氏と間近の目標に半信半疑でテント場を後にして北峰を目指す。
高度感に威圧を受ける稜線歩きから北峰に立ち、地図標定をするとピリカヌプリに間違いなく、意外な程近くに感じるが…結果はやはり遠かった。
顕著なピークである北峰からは、春別岳・神威岳・ソエマツ岳等が一望されるも、ピリカヌブリへと続く細い稜線が気懸かりであり、私達はどこまで辿れるのだろうと一抹の不安は消えない。
前日、北峰の西側直下にテントを張った先行者を稜線上に小さく遠望しつつ、Sa氏を先頭に両側が深く切れ込んだ日高特有の地形を実感する。
早朝の固い雪面にアイゼンが噛むも、気が抜けない時間が続き、1512北側ピークから高度を140m程下げた広尾根で一息…ここまでは順調である。
1338北側の最低コル(C1315)からビリカヌプリ山頂までの標高差310mのルート細部を眼で辿る…2人で山頂に至れる確率が高いと確信する。
先行者を見上げつつ、滑落したら絶対に止まらない斜面が終始続き、突然に歩幅程度のナイフリッジが2度程出現して、私が先頭に出る事もあったが、Sa氏はポール使用の3点支持が体を安定させると順調に高度を上げ、先行者3人組の一人に追いつくと最後の急斜面である。
一気に高度を上げ、2年越しの念願であったピリカヌプリ山頂間近で、Sa氏に前に出ていただき、喜び溢れるSa氏の後ろを感無量で辿り胸がつまる!!…私は目頭が熱くなり…頂きでガッチリと握手…感動そして感謝である。
ついにやりましたね…この瞬間を夢に描き用意した「紙片」にSa氏が驚きつつ照れながら、写真をと…Sa氏が一緒にと誘われるも、私には118座達成は該当せずと辞退するも、お言葉に甘えて感激の一枚である。
羨望であった頂きからは、昨夏にSa氏と共に強烈なる薮漕ぎ・Sa氏の眼の負傷・私の肋骨ヒビ・台風に追われた尾根下降と綱渡りの沢渡渉等のドラマの末に神威岳・ソエマツ岳で夢破れたと感慨深く眺める。
実に幸運な晴天下に1839峰・ペテガリ岳・カムイエクウチカウシ等振り返ると南方には辿った稜線越しにトヨニ岳・野塚岳・楽古岳そして海岸線が眼下に広がる。
見飽きない全周展望にも、無事下山してこそ登頂なりとの思いが常に念頭にあり、やはりこのピリカヌブリの険しさを実感する。
下山へと、気温上昇で緩んだ急雪面にピッケルで支点を確保しながら、慎重・確実に一歩づつ高度を下げ、斜度変換点でSa氏は相性の良いポールに変える。
何度も山容を振り返りながら、順調に細い稜線を再び辿ると、上空に丸い虹が出現、Sa氏に「暈」と教えてもらい、雨が降る前兆と知る。
風が急激に強くなったテント場に正午過ぎに到着する。
当初は2泊3日の行程計画であったが、順調に山頂を踏む事ができ、明日は天候悪化の予報もあり、時間的には下山も充分余裕ありと昼食を摂る。
一夜のテント場からトヨニ岳(南峰)へと重装備で上がり、昨日は濃霧で視界が効かなかった東峰へのナイフリッジを再びの緊張感に渡り終えると山場は過ぎたとホッとする。
正面谷地の「博清橋」を眼下に急斜面の尾根を下降すると、長靴をぶら下げた二股に出会い、幾度かの沢渡渉に野塚トンネルの駐車場に到着する。
疲労度はあるが、お互い達成感溢れた表情で無事下山を喜ぶ…やりました。
同行者Sa氏「一人歩きの北海道百名山」の山行記録へ
1 北峰とビリカヌプリ
2 ナイフリッジのSa氏とビリカヌプリ
3 ビリカヌプリ
4 北海道100名山「118座登頂」達成のSa氏(ビリカヌプリ山頂)
5 山頂(筆者)
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