『北京便り(弐)』


古賀 久美子


 私のいる中央民族大学は三楼あって、今いるところははずれにあり、私の
足では教室までかなりかかります。                  
 となりに舞踏学園が道をはさんであり、そちらに行く方が近いことが分か
りました。民族大学も音楽・舞踏科があるので、どうしてこんなにも長い足
に生れるのか不思議な体形の若い男女が学内をかっぽして、パイナップルの
串刺しなどかじってるのをみると、いかにも楽しそうです。       
 毎朝六時には校内放送の音楽で叩きおこされ、中国の学生にまじって一緒
にラジオ体操をする短期留学の岐阜教大の娘さんたちがいるのと、四と五号
楼の中間の遊園地らしきとこで、太極拳があり私はこれに参加し、思い出し
ながらやってます。この班には熱心なアメリカ娘がいて、先生は五号楼受付
係の大爺が指導してくれるので、指導料なしでいいのですが、そのかわりお
気に入りの娘を中心にやられるので一つの動きで止まったり、何度も何度も
やらされたり、面食らう場面が必ず有ります。             
 留学生の数は全部で二百人位でしょうか。岐阜と沖縄から短期の人達が大
量に来てますし、アメリカ人も多いです。               

  近くにある日本料理店「加藤屋」で内モンゴルから日本語を学びに来てい
る馬頭琴奏者と偶然知合いになり、伴奏してもらって歌いました。今度は二
人でジョイントをやろうとモンゴルの子守唄を教てもらっています。ただ、
中国語の発音はなんとかなるのですが、モンゴル語は彼がきびしくて不対!
 不対!!の連続で、さてどうなりますか。課外活動も民族大学ならではの笛、
二胡、民族舞踏、水墨画、書法とあり、個人的にいろんなことをやっている
みたいです。寮は少し不便な所にありますけど、卓球室ができてビリヤード
台もあるのです。でも度々シャワーが出なくなり五号楼にもらいシャワーし
に行ってます。                           
 年輩の人は少なく女二人(私ともう一人)男二人(一人は中国人の妻有)
位です。                              

  相互学習が盛んで、特にモンゴル人とのやりとりが多いみたいです。留学
生は圧倒的に日本人が多く、ついで韓国、米国、オーストラリア、モンゴル
共和国で、私のクラスのウランバートル出身の、伊琴は記者になるために留
学しています。北大に行きたがっていたのに同班(クラスメート)の日本学
生が班長はじめ面倒見がよいせいか最近は来期もここで学ぴたいと宣言して
 いました。留学生の教室は太学の中心にありそこの掲示板に音楽会、講演会、
展示会等々の案内が常にあり、メモしてこないとつい忘れて行きそびれてし
まいます。映画は、近くの北京図書館でみれます。やはり香港映画が人気の
ようです。語言大学、精華大学、北京大学へも自転車で出掛けます。本の購
入、友人づくり、買物などにふらっと出掛け、これくらいの所が行動半径で
す。                                

  せまい学内のグランドはいつもバスケット、バレー、陸上、テニスで大に
ぎわいです。                            
 学生食堂は全部で四つあって、そのうち一棟は、ずらっと窓辺に米飯とお
かずがならびその横を例の洗面器を小さくしたようなホーローびきの容器を
持った学生達が品定めをしながら鈴なりとなるのが、朝・昼・タ方の校内風
物詩で、ここでいろんな人と出会ったり知り合ったりする社交の場でもあり
ます。                               
 学生食堂の他にも校内には四川、新彊、胡北、という名の食堂があるので
すが、私はまだ入ったことのない所もあります。            
  また、一歩門をでると、皆がちょくちょく行く韓国料埋の店、赤店、青店、
高級となん店かあり、新彊の店はナンを焼くのと食堂とが別々で、この手の
店もたくさんあって店の前を通るとあやしいチャンポンの言葉で呼びこみの
かけ声がかかります。                        

   タイ料理の店もあって、バナナのてんぷらが気に入って何度か行きました。
このバナナのてんぷらはなかなか美味で特に女性に人気があるようです。 
 こちらへ来て環境が大きく変わるせいでしょうかやはり若い人の多くは風
邪をひいたり、腹具合を悪くする人が後をたちません。見ていると、男性は
なぜかどんどんやせていき、女性はふっくらしてくるから不思議です。ビー
ルのせいではないかとにらんでいます。どうもやせている人程よくビールを
飲んでいるように思えます。関係あるかどうかは分かりませんが・・。  
 もうすぐ休みに入るので、休み前のこの時期にまじめにテストに備えて勉
強しようとしているのに、みんなはやめとけ!とうるさいです。     

  もうひとつは、馬頭琴伴奏で私の歌のコンサートを開こうと準備していま
す。こちらはテストより大切ですので何としても実現させようとあちこち走
り回っています。馬頭琴大好きの彼は先に書いた民族大で日本語を学んでる
包興安(モンゴル語読み、ヒンガン)といい、二十四歳になったばかりの将
来が楽しみな演奏家です。彼は呼和浩特芸術学院を首席で卒業し、卒演のテ
ープも聴きましたがピアノ伴奏でなによりも彼自身の音楽感性を持ってるの
が魅かれる理由です。何度か宿舎内で蒙古民歌や蒙古子守唄をモンゴル語で
歌ったり、竹田の子守唄は私のつたないキーボード伴奏で馬頭琴との試演会
をやったりしている仲です。                     
 人柄もよく本当に馬頭琴が好きで好きでたまらないといった青年です。 
 北京では日本人会に入ったので、機会があればそちらの方にも働きかけて
彼に、馬頭琴を指導する仕事、もしくはホテルで演奏する仕事を見つけてあ
げようと考えてます。現在二人でするコンサートに向けて練習に入ったとこ
ろです。                              
 とりあえずこの辺で、                       
 再見!                              
 民族大学留学生寮にて                       
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