Top>>>Column>>>
Column 01
雑記
<<< back  Column's menu  next >>>
No.23 <不思議な交流> 2004.05.06
普段持ち歩いている手帳をぱらぱらとめくっていた。
メモ帳部分の一番最後のところに、英数字が羅列されているページがあった。
URL、そして今では使っていないメールアドレス。
freemailのものである。
懐かしいなぁ。

本題に入る前に、少し話は遡る。
大学1年生だった俺。
あの頃はまだ、家にパソコンもなく、自分が自由にインターネットが出来る環境といえばそれは学校だけであった。
4月の授業選択時、自分が興味があった分野の教科を選択した。
専門選択科目の「電算」と、一般教養の「生物」。
当時、大学側も未だ生徒全員に大学の割り当てたメールアドレスを配布していたわけではなく、俺の選択した「電算」等のPC関係授業を選択した者だけに配布(とは言っても、授業料として追加支払いはしたが)されていた。
しかし、このメールアドレスは大学名が明確に入っているので、汎用するにはあまり好ましくない。
そこで兄が、
「フリーメール取得しておくと気軽に使い易い」
とURLと共に教えてくれた末に取得したのが、上記に述べたフリーメールである。

時は移って大学1年の10月半ば。
授業や環境にも慣れ、インターネットにもあまりに馴染んだおかげで学校のカフェテリアに通い始めていた頃である。
各教科の教室は当然の事ながらそれぞれ移動教室である。
同じ授業を取っている友人がいれば大概近い席に座ったりするため、いつも固定の場所というのはなかったりする。
しかし、一人で履修している授業については大抵座る席が同じであった。
まぁ、中央ブロックの前から4,5列目辺りだから、遅れてこない限りはだいたい座れる場所なのであったが。
ほぼ決まった座る位置とはいえ、机の上のラクガキがあまりにひどかったりすると席を移動することもある。
その為、いつも座る前には机上をざっと見る癖がついていた。

「生物」の教室で、いつものようにさして机上が汚れていない事を確認し、席に着く。
座ってからノートと文房具を出し机の上に置いたとき、ラクガキがあるのに気が付いた。
それは、短い英文であった。
"Hello. How are you?"
そんな一文。
傾斜になっている机の上部角部分であったため、掃除のおばちゃんの雑巾によって消されることが無かったのだろう。
シャーペンで濃くも薄くもなく書かれたそれに、なんとなく返事をしてみたくなった。
"I fine thank you, and you?"
お決まりの文句を元の単文の横に控えめに書き添える。
果たして、返事は返ってくるのだろうか?

次の週、「生物」の授業。
いつものように、いつもの席に着く。
ラクガキには・・・返事が来ていた。
そしてまた、書いてある疑問系の単文。
定かには覚えていないが、極々普通の、当たり障りのない内容。
自分もそれに対し、無難な答えを書いていく。

他愛のないラクガキでの交流。
短く単純な英文でのやりとり。
自分も相手も、全く知らぬ同士。
果たして相手はどんな人なのだろうか。
もしかすると対一人ではなく、他の授業で他の人も書いているのかもしれないな。
背景も何も絡まない、純粋なやりとりが面白かった。
たった少しの文章ではあったが、それは週に一度の楽しみとなった。

二ヶ月余りそんなやりとりが続いただろうか。
今回、こんな内容が書かれていた。
「メールアドレス教えて」
そして、その横には一部が黒塗りされた携帯電話の番号が添えられていた。
さて、どうするか。
自分が持っているメールアドレスは学校のとフリーメールの二個。
学校のメールドレスは学生証番号で書かれているため、あまりこういった場に書き記すのに適していない。
また、自分的にもこの手のものに正規アドレスを知らせるのは好ましいと思えない。
そうするとフリーメールの方であるが、不幸にもこの当時まだフリーメールのアドレスをそらで覚えていなかった上、手帳等にも書き留めていなかった。
「来週でもいいかな。」
その旨だけをラクガキしておく。
来週もなんらかの反応があれば良いが。

明くる週。
授業が始まる前にラクガキを確認するが、前の週と変わりはなかった。
一応手帳に書き留めてきたメールアドレスを書いておいたが、その次の週には机上のラクガキは全て消えていた。
机上の掃除がきちんと為されたらしく、前週に書いた物のみならず、うっすらと残っていた他週のものもきれいに消えていた。
丁度区切りが良かったのかな。
なんとなくそう思った。
それ以降も「生物」の授業時同じ席に座っていたが、同じようなラクガキは二度と無かった。


手帳の片隅に書かれた古いメールアドレス。
本当に懐かしい思い出である。


Column 01
No.23 古典的交流法


<<< back  Column's menu  next >>>