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anomaの粋酒酔音

(14)

 ドイツの甲類焼酎コルン

 イギリスにスコッチ、フランスにブランデー、

ロシアにウォッカ、中国に白酒と、

およそ酒を呑む文化圏でその国を代表する蒸留酒を

持っていない所はありません。


もっと大雑把に言えば、

旧アラブの交易圏にはアラックがあり、カリブにはラム。


細かく探せば、

テキーラやピンガー、アクアヴィットにラキ、ウゾーetc。


 いずれにせよ、葡萄や林檎、米に大麦、甘藷に椰子と、

醸造酒が出来たら、

その先に進みたいというのは万国共通。

第一、度数が上がれば腐りませんから。

後は人類の業とでも言いましょうか、

美味いものを作るために切磋琢磨。

あげく、ナポレオンだの、ザ・グレンリヴェット、茅台酒。

さてはお隣のように人間国宝の造るムンビエ酒などという

復古なのか、創作なのか判らないような酒まで、

なにかとランク付けしては喜んでいるのです。

 ところがそんな酒、誰もが呑めるわけではない。

生産量の問題もありますが、なにより日々呑むには高すぎる。

で、もうワンランク下のスピリッツに走るわけです。


 フランスの映画には、ペリエを呷る労働者の姿があり、

メキシコにはメスカルに溺れる農民。

かつての中国ドラマの晩飯では、

必ずといってよいほど安い白酒を呑むシーンがありました。

私も、最低1本1元クラスのものを呑みましたが、これは酷かった。

当時でも茅台、五粮液だと4〜5百元はしていましたから、

まさに労働者の酒だったのでしょう。


 余談ですが、開放改革後の金持ちは、

高級白酒にいかないで、ブランデーを好んだようです。


香港のXO醤ではありませんが、

ナポレオンのXOといえば、

ブランドとして解りやすかったのでしょう。


実際に、彼らの宴会に遭遇したことがありますが、

呑み方は白酒と同じというのが、

なんとも不思議な感じがしました。

だって、乾杯の連続なんですから。


 ロシアに至っては、およそアルコールが出来るものなら何でも蒸留。

靴墨から酒を造る方法まで編み出すという、

究極の依存症民族です。

これもゴルバチョフの飲酒規制から生まれたものと聞けば、

手お付けてはいけない民族タブーというのがよく分かります。

現在はプーチン・バブルのせいか超高級ウオッカまで登場。

たしかに美味いのですが、この価格は?というものも。


 いわゆる労働者の酒というのは他の国にもあります。



 代表的なのがドイツのコルン

キルシュヴァッサーや、食前酒ならぬ麦酒前酒の

ジンのシュタインヘーガーでもありません。

いわゆる連続蒸留で造る甲類焼酎です。

日本には、このコルンに

キャラウェーや林檎を加えたリキュールが入っていますが、

まあ、サワーの原液のようなもの。

といったら叱られるか。


 日本だって、30年くらい前までは、安酒場で一番安いのがこのタイプ。

今のように割って呑むのではなく、

受け皿付きの分厚いコップに溢れるほど注いで貰ったものです。

当然、味の方は二の次。酔うための酒。

彼の地でもストレートを呷るのが一般的と聞いていますが、

あまり近寄りたくない場所のようですね。

(このコラムで紹介したお酒は、運が良ければANOMAで、飲むことができます。)

筆者:星川京児


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