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(2)

酵母が香るビールの花

Fleur De Biere

 ビール・スピリッツ、ビールの焼酎ってご存知ですか。
生ビールの酵母を生かしたまま、素朴なポットスティルで蒸留するので、
素材そのものの香りが楽しめるスピリッツ。

ビールは大麦が原料ですから、酵母が生きている発酵液=醪を蒸留するというのは、
形を変えたウィスキーともいえます。
とはいえ、その味わいはまったく別物。

 フランスはアルザスから2種類出ています。
残念ながら今のところ手に入ったのはウオルフベルジュール(Wolf Berger)社の一種類だけ。
その名もFleur De Biere、ビールの花というオードヴィ、【命の水】ですね。

 これが美味いのなんのって、原料が生ビールとは思えないほど華やかな香り。
加えて、舌を軽くマッサージするような軽い刺激。
これが生ビールかなあ、と問わず語りに思わせるのが偉い。
やっぱりきっちりと親を立てているところなんざあ、
昨今の臑かじりに見習わせたい。

同じアルザスで造られている同名のチーズと合わせれば最高。
ビールで洗うウオッシュ・タイプですが、ワインよりもこの酒に合いますねえ。

 いいとこ尽くめのビール焼酎ですが、これがなかなか手に入らないのが欠点。
輸入代理店があるロットを仕入れ、それが切れたらおしまい、
というのは酒だけでなく嗜好品の輸入にはありがちなことだけど、
それにしてもこんな美味い酒がもったいない。
どこかで見かけたらぜひお試しを。

まあ一期一会の酒というというのも格好良いのですが。

 醸造酒を蒸留して造るといえば葡萄酒のブランデー、シードルのカルヴァドス、
なかにはアプリコット・ブランデーなんてものもありますが、
どれもチョイとばかりお高くとまったところが鼻につく。
樫樽で永年貯蔵熟成させましたといわんばかりの、
箱入娘ならぬ樫樽娘の傲慢さ。

そこは庶民の酒ビール。
それも樫樽熟成なんて手間は
かけない、素材の鮮度を生かした旬の味。
この潔さが心情。
江戸っ子の酒はこうでなくちゃあ。
もとい、拙は四国っ子でした。

出汁で喰わせる大阪うどんではなく、
麺をいかに美味く喰うかの讃岐うどんってところですか。
ますます判らなくなった?。

 ちなみに、葡萄酒の粕取焼酎グラッパも、樽熟よりは透明の方が好きです。
 それにしても、どうして日本酒をそのまま蒸留した焼酎を造らないんだろう。
米焼酎ではありません。
あくまで日本酒。
八海山でも十四代でも、そのまま蒸留したらどうなるんだろうって思いませんか。

 そういえばこのアルザスの会社、樅の新芽のエキスを抽出したその名も
「サパン」なんていうおしゃれな酒と同じメーカー。
これまた鮮烈な緑の香りがたまらないリキュールでした。
個人的に付けたキャッチ・コピーが「呑む森林浴」
呑んだ人がけっこう同感してくれましたもの。

いずれにせよ、ちょっと目の離せない酒屋であることは確かです。

筆者:星川京児

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