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anomaの粋酒酔音

(8)

ジン:GIN

 ウォッカだとあまりにアルコール補給という感じがしてちょっと、

という向きにはジン。

辞書によれば

「穀物を分解酵素で糖化させてから酵母菌で発酵させ,

蒸留し草根木皮の香料成分で再蒸留させた無色透明の酒」


とまったく愛想がないが、

これがストレートで呑んでも結構いけるんです。

どちらもカクテル・ベースとして重宝がられていますが、

やっぱり呑むならロックかストレート。



 といってもここで取りあげるのはいわゆるドライジン。


発祥の地オランダでは単式蒸留のほのかに甘い酒。

共通項はジュニパーベリー(杜松の実)を使うことだけ。

名前もオランダ・ジンと言うよりジュネヴァといった方が分かりやすいほど。



これがイギリスに渡るのはオレンジ公ウィリアムスが国王として

オランダから迎え入れられた17世紀末。


もともとライデン大学で造られた薬酒。

これが思いのほか旨かったから、酒呑みの間に広まったわけですね。

 19世紀になって産業革命を迎えたイギリスでは連続式蒸留機が登場。

モルトにブレンドするグレーン・ウィスキーじゃないが、

ついでにジンも連続式でクリアなジンを造り出したのです。


これが言うところのロンドン・ドライ・ジン。

限りなく度数の高いアルコールに

杜松の実やキャラウェー、アニス、オレンジピールなど加えて、

さらに単式蒸留機で香付けしたもの。



だからメーカーによってレシピが違うし、また個性も豊かになるのです。


 ちなみにドイツ特産のジンはちょっとマイルドで

シュタインヘーガーと呼ばれています。

なかでもJaga HAGER はカレー香が立つという不思議なタイプ。

変則ジンではフィリピンのサンミゲル社のジン。

原料が100%サトウキビというからさすが。

 といっても主役はやはりドライ・ジン。

タンカレー10の芳醇さは

ケネディやシナトラを虜にしたというのも納得の旨さ。


個人的には英海軍御用達のプリマス。

ドミニコ派修道院のレシピを受け継いだという味わいは独特。

特に57度ものの旨さは格別です。


同じ57度のピムリコの濃厚さとはまたベクトルが違うんです。

この二つを超えるものは出ないだろうと思っていたら

スコットランドのブラックウッド、スペシャル・エディション60

という凄い新人が登場しました。

製作所があるシェトランド諸島、

北緯60度にちなんだアルコール度数60。

島民の数に合わせた限定品=スペシャル・エディションなのです。

この度数に加えてキャラウェーなどのボタニカル香が

どこか北欧のアクアヴィットを思わせる逸品。


ぜひストレートかロックで。

 で、最後にもう一つ珍品を。

ジャンルが「ベルギージン(ジュネヴァ)」となっているのですが

名前はビールブロム(ビールの花)。


ホップの生花を使った複雑な香りと味わいのオードビー。


つまり以前に紹介したビールの焼酎の仲間なのですが、これもジン?


(このコラムで紹介したお酒は、運が良ければANOMAで、飲むことができます。)

筆者:星川京児

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