Introduction to 200m Race

200m概論



はじめに
 
200mは100mほどの爆発的な加速力は必要としませんが、最高速度は100mと同程度の能力が必要です。前半の120m弱を曲線路・残りの距離を直線路で走りますので、高速でのコーナーリング技術とスピード持続能力・筋持久力が要求されます。
また、200mのレースには200mを専門とする選手はもとより、絶対スピードに優れた100mの選手やスピード持続力のある400mの選手も出場してきますので、見る側からすればとてもおもしろい種目の一つとなっています。
 
 
200mレースの構成
 
200mレースは100m同様にスタート・加速区間・スピード維持区間・減速区間から構成されます。走る区間が長くなる分、レースを構成する各区間の距離も長くなります。
 
1.200mのスタート
 
200mのスタートは曲走路のスタートになりますが、曲線路でのスタートも最初の8歩程度は直線路のスタートと同じです。ですから、スターティングブロックのセットは、スタートラインから10m前方(4×100mR・第2→第3走者のテイクオーバーゾーンの出口がこれにあたる)の内側のラインから約30cm外側を通る仮想ライン(弧)に対する接線の方向にフロックのバー(本体)が向くようにします。「位置について」 のときの手はスタートラインには触れてはいけませんが、外側のラインは自分のレーンの一部ですので触れても構いません。このときの両手は進行方向に対して垂直に交わる線上にあるようにして地面につきますから、レーンの内側になる左手はスタートラインから離れた(後方の)位置につくことになります。まちがってもスタートラインに沿った形で手をつかないようにしましょう。
ブロック・クリアランス後は9歩目以降から内傾し、コーナーリング技術を使って走ります( 「物理学からのスプリント技術」参照 )。
  
2.加速区間
 
トム・テレツ氏は、 「200mは、100m加速・100mスピード維持」 と論じていますが、実際の200mレースのスピード曲線を見ると85m付近でレースにおける最高速度に到達するのが一般的です。200mの加速区間で重視することは、リラックスして走ることと加速距離を意識して走りを組み立てることです。200mレースでも 「最初から行くレースをしなくてはいけない」 のですが、力んでしまっては後半の失速を増加させます。ですから、 「スピードは上げつつも楽に走らなくてはならない」 のです。加えて技術的には、加速に応じた上体の前傾度合いの変化とコーナーリング技術を組み合わせて走ることが要求されます。また、トラック面にある距離表示(ポイント)を意識して加速するようにします。利用できるマークとしては、80m地点(4×100mRブルーライン)・90m地点(テイクオーバーゾーン入口)・100m地点(4×100mRテイクオーバーゾーン中間点)・110m地点(4×100mRテイクオーバーゾーン出口)などです。

伊東浩司選手が1994年の日本選手権において20秒44で走ったときは、この区間を非常にリラックスしてはしっているのがはっきりとわかりました。あれだけ前半をスピードに乗ってかつリラックスして走っていれば、後半もスピードが落ちないのもわかります。
 
3.スピード維持区間
 
リレーのテイクオーバーゾーンに入ったあたりまでにスピード維持のための動きに切り替わっているようにします。これも100m同様に区間のつなぎ目がわからないように自然に切り替わるようにします。特にコーナーの出口では、出口を通過する前から直線を走る形(あとは内傾を解くだけの状態)ができているようにします。直線路に入ってから切り替えたのでは、既に対応が遅れています。
スピード維持区間とはいっても、実際には徐々に減速が始まっています。意識の上とエネルギー生成系の点から、等速で走っている感覚であることから、スピード区間と位置づけているのです。この区間では重心を高く保つことと、重心移動速度に応じた脚サイクルの対応を心がけます。
 
4.減速区間
 
肉体的に疲労の影響が感じてくる区間です。疲労から上体が前にかぶって脚が後方へ流れ始めますので、極力地面を上から捉えられるように前方での膝の位置を確保するように走ります。
150m以降は筋持久力の差がはっきり出てきますので、ラストが弱い選手はその点のレベルアップが必要になります。
 
 
200mレースのファクター
 
1.レーンの優位性
 
距離が800m以内の種目はゼパレートスタートになります。したがって、外側のレーンの選手は内側の選手よりも前方からスタートすることになりますので、内側の選手は外側の選手を視界に捉えて走ることができます。この点はアドバンテージがありますが、内側のレーンの選手ほどコーナーリングにおいて外側のレーンの選手よりも大きな遠心力を受けるので、コーナーリングが難しくなります。しかも、200mレースでは100mレースのスピードとほぼ同じですから、外側が見れるアドバンテージよりも受ける遠心力のマイナス要素のほうが大きくなります。したがって、200mレースにおいては内側のレーンの選手のほうが不利であるといえます。コーナーリングが苦手の選手は、日頃から1レーンを走るトレーニングをしておけば、ある程度は克服できると思います。
でも、公的な競技場ではトラックが開放されていても、トラック面の保護の理由から、
「1・2レーンは使用禁止」 のところがほとんどなんです。

またレーンのシードは、通常レースを8人で走るときには、上位4名が3〜6レーン、下位4名が1・2・7・8レーンと振り分けられます。現行のルールでは次ラウンドのレーンシードは前ラウンドの着順が優先されるために、順位がよければ次ラウンドでは優先的にレーンシードされ、さらに記録を出しやすくなるというわけです。
 
2.風の助力について
 
200mは前半の120m弱は曲線路を走り、残りの距離は直線路を走ります。レースの風速は、先頭のランナーが直線路に入ってからの10秒間計測され、直線路の進行方向への風速の平均値が風速となります。したがって、曲線路を走っているときの風速はどの方向からの風が何m吹いていようとも記録の公認・非公認とは関係ありません。ですから、ランナーにとって200mレースに最も好ましい風は、できる限り長い時間競技者の後方から吹いていて、しかも直線路の進行方向への風速が2.0m(公認範囲上限)のものです。これらの条件をすべて満たす絶好の風は、直線路の左斜め後方から吹いている場合です。単純計算すると、左斜め45°から約2.8mの風が吹いたときの、直線路での追風は2mということになります。このとき最も向風の影響を受ける1レーンの選手は、スタートから30mの地点で体に受ける風が向風から横風へと変り、90m地点で風の100%を追風として受けるのです。それより外側のレーンの選手は早い段階から追風を受け始めますので、追風の影響は外側のレーンの選手ほど有利にはたらきます。