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秋の船形山(御所山)(1,500m)を登山して  (05.10.16)
大滝キャンプ場登山口〜三光の宮分岐〜湯谷地分岐〜御来光岩分岐〜船形山
10月16日、秋の船形山(1,500m)に登ってきました。
船形山は宮城県と山形県の境に位置する秀峰です。
船形山という名前の由来は宮城県側から船を伏せたように見えることから船形山と言い、山形県側からは御所山と呼び山頂には御所神社があります。それぞれにいわれのある山のようです。

■3年越しの船形山へ

今回の登山は3年越しの念願でした。3年前に古川市へ新幹線通勤をして以来、車窓から見える船形連邦を見て一度は登ってみたいと思っていました。また、ブナ林が美しい山ということも聞いていました。紅葉のシーズン到来ということもあり燃えるブナ林や山頂から蛇ヶ岳や泉ケ岳、遠くは月山の眺望を楽しみたいと思っていました。
船形山登山コースは升沢コース、色麻コースなど8つのコースがあるそうですが、今回、最短距離の大滝キャンプ場を登山口とする色麻コースを登ることにしました。

■午前4時半起床、午前5時出発

当日、午前4時半に起床。自宅を出たのが午前5時でした。登山は早い時間の行動がベストと聞いていたことから早朝に出発することにしました。まだ、夜明け前の出発でヘッドライトを点灯して車を走らせました。途中、コンビニで朝食と昼食を買い求め、ペットボトルの補給も忘れずに準備をしました。
大滝キャンプ場へは大和町吉岡から升沢方面の小荒沢林道と色麻町から色麻林道の2ルートがありました。今回は仙台から一番近いという小荒沢林道を通っていくことにしました。車高の低い普通乗用車でデコボコの林道を走れるのか心配しました。

■小荒沢林道の分岐点

天気予報は晴れのはずが途中から雨模様になり雨の中の登山になるのかと心配しました。
国道4号線大和町吉岡から升沢方面へ左に折れ暫く車を走らせると「ふるさと緑の道」と書かれた表示塔が見えました。左手は升沢林道、右手は小荒沢林道経由大滝キャンプ場へ続く標識もありました。林道の分岐点に着く頃にはすっかり雨も上がっていました。
車を停め小荒沢林道分岐点の写真を撮っていたところ1台の車が停車しました。朝の挨拶を交わした後、船形山登山なのか、どのルートを行かれるのかと尋ねました。古川から来る人と大滝キャンプ場で落ち合い、最短距離から登る予定になっていると言っていました。一緒に登りますかと有り難いお誘いの言葉をいただきました。学生も一緒で初めて山に登る人もいるのでと言っていました。こちらも素人の山登りですからと答えました。

■小荒沢林道の砂利道と紅葉

小荒沢林道は普通車で大丈夫かと尋ねました。その方も初めて通る道なのでよく分からないという返事でした。くぼみや落石等の心配をよそにここまで来たからにはとりあえず行くしかないと意を決しました。林道に入ると直ぐデコボコの道になりハンドルを取られないようにしっかり握り締め慎重に車を走らせました。高度を上げていくと山深い林道の両脇の木々は色づき始めていました。途中、名水の場所があり早朝というのに水を汲んでいる人がいました。船形山から流れ出る湧き水は冷たく美味しいだろうなと思いながら先を急ぎました。
■大滝キャンプ場へ到着

デコボコ道を慎重に走りながら車の下腹をこすることもなく無事大滝キャンプ場に着きました。駐車場には既に数台の車が駐車していました。登山の準備をする前に大滝キャンプ場の周りを散策しました。朝靄に包まれたキャンプ場は静かなたたずまいを見せてくれました。
■船形山登山入口とブナ林

船形山登山口の標識を横に見ながらいよいよ登山を開始しました。
ゆるやかな斜面を歩いていくと直ぐブナ林の登山道に入りました。紅葉も始まり黄色く色づいたブナ林は美しく秋の山の魅力をたっぷり見せてくれました。
登山道は前日降った雨の影響かドロドロのぬかるみもあり、今日の登山は悪路に悩まされることになるのかと心配しました。

■「三光の宮」の分岐点

「三光の宮」の標識が見えてきました。右手に折れると「三光の宮」経由で升沢コースに入り山頂へと続くルートですがそのまま直進することにしました。

■「湯谷地」の分岐点

「湯谷地」の標識が見えてきました。湿地帯があることから湯谷地というようですが、山頂へと急いでいたことから立ち寄ることもなく素通りしました。

■「ナラタケ」のきのこ

暫く歩いていくと登山道の脇できのこを採っている男性に会いました。何を採っているのか尋ねたところ「ならたけ」と言っていました。他の呼び名で「オリミキ」「サワモタシ」とも言うと話していました。傘の下に輪をしたつばがあるのが「ナラタケ」ということで、その輪が無いものは「ナラタケモドキ」と教えてくれました。どちらも食べることができると言っていました。小さなナイフを使い採っていました。綺麗に採るためと次の機会にまた採れるようにするためのようでした。気の利いたきのこの採り方と感心しました。記念に写真を撮りたいとお願いしたところ快く承諾してくれました。

■「展望所」の標識

少し小高いところに「展望所」と書いた標識のある場所に出ました。
初めての休憩で水分の補給をしました。「展望所」と言っても見晴らしの良い場所とは言いがたく何処を展望するのかと思いました。小高い丘からブナ林を展望する絶好の場所ということで「展望所」の標識があるのかと勝手に解釈しました。早速、紅葉したブナ林の記念写真を撮りました。

■「鏡ケ池・小野田コース」の分岐点

暫く歩くと「鏡ケ池・小野田コース」という標識に出ました。こちらも素通りして山頂へと急ぎました。この分岐を過ぎると本格的な傾斜のきつい登山道になりました。至るところにロープを張った急斜面があり一歩一歩細心の注意を払いながら登っていきました。
雨の降った日の登山道は滝のように水が流れ容易に歩くことができないのではないかと思いました。

■「船形山頂0.3km」の分岐点

ようやく船形山の尾根に到着しました。そこは岩肌のある「御来光」というところで「船形山頂0.6q」という標識がありました。一息ついてから一気に山頂へ行くことにしました。

■船形山(1,500m)初登頂

尾根伝いを歩いていくとうっすらと霧のかかった山頂の標識が見えてきました。山頂付近は木が無く360度の眺望を楽しめる場所でしたが、風が強く立っていられないほどで山頂避難小屋へ向かいました。

■船形山避難小屋

避難小屋のドアを開けると正面にトイレがあり、更にドアを開けると蒔きストーブが配備された10畳ほどの大きい部屋でした。入口の左手に階段があり、2階は屋根裏を活用した休憩室になっていました。階段下には沢山のまきを積み上げていました。冬山に備えて重いまきを運んでくれた人がいたと思いました。後で聞いた話ですが、森林再生事業に取り組む「船形山のブナを守る会」のメンバーが船形山のふもとで間伐したスギを使ったまきを山頂小屋に運んだということでした。厳冬期の登山者の緊急避難用で約200キロが備蓄されたそうです。小屋の中には緊急用に配備された寝袋や毛布、飲料水などがありました。いろいろな人たちの恩恵を受けながら登山できる幸せをあらためて思いました。

■2階の屋根裏で休憩

既に1階は団体客で一杯だったので2階へ行き休憩することにしました。少し急な階段を上るとそこは屋根裏の休憩室になっていました。
2階には朝に小荒沢林道で会ったグループともう一組のグループが休憩をしていました。
少々早めの食事をしていたところ小荒沢林道で会った方から一緒にどうぞとお誘いを受けました。お言葉に甘えて仲間に入ることにしました。
グループの若いメンバーは私に声をかけてくれた方を「先生」と呼んでいました。
小荒沢林道で会ったときに学生と一緒とも言っていたことから県内の学校の先生と思いました。
先生はガスボンベでお湯を沸かしコーヒーを入れていました。一つの大きなナベを回し飲みしていました。私にもと差し出されましたが、流石にそのまま飲むわけにはいかず持ってきたコップに入れてもらいました。山頂小屋で飲む温かいコーヒーはミルクがたっぷり入ったまろやかな味で美味しくいただきました。
コーヒーを飲み干したグループは食事をしようということになり、先ほど飲んだコーヒーの鍋で今度はインスタントの味噌汁を作っていました。冷え込んだ身体に暖かい味噌汁は格別かと思いました。一人の女子生徒が、「適当に塩分の補給もできて美味しい。」と言っていました。汗をかいた後の味噌汁は少々塩分が効いて身体に良い食べ方と感心しました。次回は、しっかりと味噌汁のスープを携えて登山している自分がいると思いました。

         《後日、メールをいただいた先生のホームページ 『休日のページ』(沢登り・テレマーク)

■ステーキを焼いているグループ

暫く休憩をしていると1階の方がざわつき始めました。団体の登山グループが休憩に来たようでした。間もなくしてジュージューと音がしバーベキューでもしているような美味な匂いが2階の屋根裏にも漂ってきました。帰り支度をして1階に下りていくと10数名のグループがガスボンベを使いステーキを焼きインスタントラーメンを大きなナベに入れ茹でていました。香ばしい匂いが部屋一杯に充満していました。思わず「美味しそうですね。」と声をかけました。満足した笑いが返ってきました。月2回、登山をしている山行会のメンバーで仙台から来たと言っていました。ステーキを山頂で食べるとはなんて贅沢な登山だろうと思いながらいろいろな登山の楽しみ方を知っているグループに感心しました。私のように登山慣れしていない者にとっては新しい発見でした。

■きのこの採取と勉強

帰路は先生のグループと一緒に下りることにしました。
御所神社にお参りした後に下山しました。相変わらず山頂付近は霧と強風で悪天候でした。
先生はきのこを採りながら下山しようと話していました。
ブナの木やナラの木を見ては藪の中を掻き分けて入っていきました。きのこを採るというよりもきのこを観察しているようでした。私も先生の後を追い藪の中へ入っていきました。斜面のブナの木にびっしり生えたブナハリタケを見つけました。それは見事に成長したブナハリタケでした。早速、写真を撮りました。先生はブナハリタケを採るわけでもなく、私も沢山採っても食べきれないと思い一掴みを採って帰ることにしました。

ブナ林の紅葉が鮮やかに

下山していると太陽の光がブナ林に差し込み紅葉も一段と鮮やかになりました。遠くの山もうっすらと見えるようになりました。今頃、頂上付近も晴れて眺望も素晴らしいだろうと思いました。

■きのこが一杯入った重そうなリック

朝、登山道で会ったきのことりの男性と再び会うことができました。きのこで一杯になったリックを重そうに背負っていました。それでもきのこの生えていそうなブナの木を見て藪の中へと消えていきました。藪の中から写真を撮ってはどうかという声が聞こえてきました。どんな状態できのこが生えているのかと期待しながら声のする方へと入っていきました。それは枯れたナラの木に見事に生えたナラタケの群生でした。なかなかこういう場所に遭遇することはないと言うほどのナラタケでした。手の届かないところに生えたきのこは竿にカマを取り付け採っていました。
一緒に歩いているとあの木にはきのこがあると言っていました。遠くの木を見て話しているところから森の中のきのこ採りは双眼鏡を持参した方が良いのではと話したところ、「双眼鏡は車の中に置いてきて今日は持ってきていない。」と言っていました。いろいろな道具を準備してきていることを知りこれがプロのきのこ採りと感心しました。

大滝キャンプ場は車・車

下山はあっという間に終わりました。
大滝キャンプ場に着くと朝の車とは違ってびっしり駐車していました。
日曜日の船形山は登山客のラッシュでした。
既に先生のグループは帰り支度をしていました。ご一緒できたことのお礼と色麻大滝を見て帰ることを話し分かれました。

■色麻大滝と紅葉

落差41mという色麻大滝は小荒沢林道に抜ける分岐のすぐ近くにありました。
普段は2段にわかれていて、春の雪解け時には一直線に落下する滝を見ることができるそうです。秋の季節でも水量が多く豪快な滝を見ることができました。
白く糸のように流れる大瀑布と紅葉のコントラストが美しく感動的な自然を見せてくれました。

■小荒沢林道の湧き水

小荒沢林道の名水の場所に立ち寄りました。冷水をタンク一杯に汲んでいる人がいました。美味しい水を求めてこの山奥にいつも来ているのかと思いました。船形山から湧き出る水は冷たくキューンと喉を潤してくれました。
大滝キャンプ場にも立派な冷水の場所がありました。蛇口をひねると勢いよく冷たい水が出てきました。そこでもペットボトルの大瓶に何十本となく水を汲んではトラックの荷台に積んでいる人がいました。自然の恵みをふんだんに利用できることに感謝しなければと思いました。

■充実した船形山登山

今日の船形山登山はいつになく充実した1日になりました。
素晴らしい出会いやきのこの採取などいつもと違った楽しい経験をしました。
自然との触れ合いを求めて「そこに山があるから登る。」というだけでなく、人と人との素晴らしい出会いを通じながらよりコミュニケーションを深めていく幸せを感じた登山になりました。

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