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『明日の記憶』を見て(06.07.01)
■「明日の記憶」の映画鑑賞

5月28日、仙台MOVXにて若年性アルツファイマーの病にかかった渡辺謙主演の「明日の記憶」の映画を見てきました。
この映画は、感涙度95.4%、日本中に絶賛の声があがっているという前評判の高い映画でした。実際に見て感じたことは、感涙度が高い映画ということも頷ける内容のものでした。

「あなたは誰ですか。」
今まで苦楽をともにしてきた夫が若年性アルツファイマーの病にかかり妻に言ったラストシーンの会話です。ここまで進行してしまった病気にこれからどう立ち向かっていくか夫婦の凝縮した姿がそこにありました。
たとえ過去の記憶が失われても二人三脚で明日の記憶を作っていくという二人の生きる喜び、切なさ、人生の素晴らしさが映し出されていました。


■ストーリィを振り返って

ストーリィを振り返ってみると、家庭は妻にまかせっきりで仕事しか頭になかった主人公  がある日突然頭痛に悩まされ会議に遅れたりスッポカしたり行動にも大きな変化が出てきました。それを心配した妻は一度病院で診てもらうように進めました。

新しい仕事のプロジェクトで多忙を極めている主人公は病院に行くのをためらっていました。時間が経過するとともに一段と病状が進行し妻の進めもありとうとう精密検査を受けることになりました。
最初は通常検査。2回目はMRI検査でした。その結果、若年性アルツファイマーと診断されました。それを知った夫は驚愕し病院の屋上にいき飛び降りんばかりの様子でした。担当医師は自分の父が痴呆症にかかったことが医者になるきっかけだったことや痴呆症にかかわる医者の第一人者となり取り組んできたことなど、主人公とともに病気と闘っていこうと話しかけました。

その後の主人公は病気との闘いが始まったのでした。物忘れという初期の段階から生活にも支障をきたし悪化の一路をたどっていきました。

会社へ内緒にしながら仕事を続けましたが、いつも見る町並みの風景を忘れたり、会議の場所がわからなくなったり、時には喜怒哀楽が激しく部下を恫喝したりと病気がだんだんに進行していきました。そのうち会社の上司にもバレとうとう辞職せざるを得なくなりました。

今まで順風万般の人生が若年性アルツファイマーという病で一変してしまいました。退職した後の家計は妻が外に働きに出て償っていました。家庭の中にいるようになった夫は主夫として家庭の掃除をするなど生活環境も一変しました。夫を家において外に働きに出ている妻の苦労も大変でした。友人の進めもあり病気が進行してしまった夫を施設に入れる検討を始めました。しかし、妻はためたっていました。施設のパンフレットをもらい自宅へおいていたところ掃除をしている夫が見つけました。夫はその施設の下調べのため現地へと向かいました。施設の入所者を目の当たりにした夫でした。その後、山間の陶芸教室で妻と知り合いプロポーズをした思い出の窯場へと向かいました。昔懐かしい窯場でした。無断で出かけた妻は夫の居場所を心配しました。夫はふとしたことから自宅へ電話しました。電車の音が受話器から聞こえました。その汽笛を聞いた妻が夫と一緒に陶芸教室に参加した窯場と察しがつき迎えに行きました。鳥の鳴き声が緑深き静かな山間に響いていました。
「あなたは誰ですか。」
夫が迎えにきた妻に言ったラストシーンの会話でした。


■自分が若年アルツファイマーに・・・

若年性アルツファイマーにかかった不治の病の重大さに心が動かされました。患者を持つ家族の並大抵でない苦労を知ることになりました。夫婦の絆とは何なのかを考えさせられました。主人公に置き換えて自分をみる思いがしました。こんなときに妻がどんな対応をしてくれるのか、もし、妻がアルツファイマーの病気にかかったときに自分はどうするのかいろいろ考えさせられました。


■亡くなった母

昨年の春、痴呆にかかっていた母が亡くなりました。母の看病をしていた兄夫婦のことを思い出しました。時間の境が無く深夜でも一人話しこんでいたという母でした。1階に母、2階に兄夫婦の寝室がありました。母の声をさえぎるため枕元にラジオを置き音楽を聴きながら寝ていたと言っていました。母は寝たきりになっていて徘徊することはありませんでした。


■NHKの特集番組「痴呆症」

たまたま、NHKの番組で痴呆症にかかった夫・妻を持つ家族の番組がありました。母の痴呆症を経験した「みのもんた」も参加していました。自治体の取り組みの弱さや政治家の真摯な取り組みが欠如しているなど強烈な発言もされていました。痴呆症の患者を持つ家族しかその苦しみはわからない問題、痴呆症の患者をかかえている家族の生の声が心、それをとりまく近所、ボランティアの方々の話など考えさせられる番組でした。


■「明日の記憶」

「明日の記憶」
たとえ過去の記憶が失われても明日の記憶を作っていく・・・。
明日の記憶は想像のできない記憶でもあり神秘的な記憶の存在でもあります。
誰もが経験しえない明日への記憶ですが、夫婦が手を携えて作っていく「明日への記憶」は順風万般といかないまでも人生そのものの記憶と思いました。人間、全てを失うと純粋な人間に生まれ変わるものなのかもしれません。
例え記憶が失っても二人で作る「明日への記憶」は永遠に輝いていたいものです。

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