「自立生活センター新発田」のこれまで(歩み)

障害者の自立生活

IT革命がもたらすもの

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「自立生活センター新発田」のこれまで(歩み)

 95年10月に自立生活支援センター新潟の安積遊歩さんの講演会へ行った。この時に「自立」という考え方に触れ、自立生活支援センター新潟を知った。96年に自立生活支援センター新潟の会員となる。98年に運営委員を引き受ける。こうした中、下越地方=阿賀北地域にも自立生活センターがあればと思い、仲間を探すがなかなか見つからない。そのまま1年半が過ぎるが生活は何も変わらない。親に依存したままである。99年10月に「卵が先か、鶏が先か」わからないのと一緒で、「仲間が見つかってから始めるか、始めてから仲間を見つけるか」で仲間が増えないまま始めないでいるよりも、失敗してもいいからやってみようということで、知り合いの不動産屋さんに賃貸物件を紹介してもらい、事務所を11月から賃貸する契約をした。これで集まる場所ができたので、あとは人を集めればよいことになった。
 11月は家族しか手伝ってくれなかった。エアコンを取り付け、通帳を作り、電話を引いた。テレビとラジカセとコーヒーメーカーを家から持って行った。週に1回程度事務所をひらいている。
 12月は障害者ひとり(新発田市在住)と介助者ひとり(豊浦町在住)が顔を出すようになった。この二人は自立生活支援センター新潟に紹介してもらった。石油ファンヒーターを貸していただけた。以前から知っている障害者ひとり(豊栄市在住)に声をかけたら顔を出してくれるようになった。この人は自動車の運転ができて、よく灯油を持ってきてくれる。週に2回程度事務所をひらいている。
 年が開けて1月に、以前から知り合いのボランティアひとり(新発田市在住)が顔を出してくれるようになった。この人は毎週欠かさず来てくれる。机を貸してもらえた。チラシ1000枚ができた。いとこに造花の花束をいただいた。中古のノートパソコンを自立生活支援センター新潟にいただいた。「社協だより」に2月の自立生活セミナーのお知らせを載せてもらった。看板を知人に作ってもらった。週に必ず2回事務所をひらいている。
 2月は自立生活セミナーを行った。
「自立生活セミナーin新発田」
『自立生活セミナーin新発田の御報告を致します。2000年2月19日(土)、この季節には珍しい晴天の中、新発田市ボランティアセンターにおいて行われました。開催するにあたりまして当日それなりの数の参加者に集まってもらえるのかが一番の心配でしたが、CIL新潟のスタッフ6人(風邪で1人早退)、CIL新発田のスタッフ3人、介助者1人、手話通訳1人、参加者19人(介助者2人を含む)の総勢30人で行われました。参加費を500円としましたので関心のある方の参加でした。
 このセミナーは「重度障害者の地域での自立生活を知ってもらうこと」と「自立生活センターの役割を知ってもらうこと」と「新発田にかまえた事務所を宣伝すること」という3点を目的としていました。そのための内容は「CIL新潟を取り上げたビデオ2本の上映」と「ピアカウンセラーの小田秀則さんによる講演」でした。ビデオは障害者の自立生活をまったく知らない人にはとてもわかりやすい内容でしたが、少し長過ぎたかもしれません。小田さんの講演は、ユーモアをまじえながら生い立ちから施設での生活状況、家族の考え方、施設職員との関係、新潟で自立生活を始めるまでの経過とそのときにCIL新潟が果たした役割等をわかりやすくお話していただけました。「自分で決めて、その責任は自分が取る」ということの大切さを再認識致しました。参加者も熱心に聞いていました。自立生活を知ってもらうにはどちらも適当な内容であったと思います。CIL新潟のスタッフの皆さんの御協力で無事終えることができました。この場をかりてお礼を申し上げます。手話通訳の方もお願いしましたが、聴覚障害を持つ方の参加はありませんでした。
 当日は新発田市障害福祉課長さん、新発田市議会議員さんの出席もあり、顔合わせの機会となりましたし、障害者の自立生活に対して多少なりとも問題意識を持って下さったようです。当日参加できなかった人からの講演ビデオの貸し出しの依頼もあります。
 この講演のお知らせを新潟日報下越版で取り上げてもらいました。この記事を見た人が1人(新発田市在住)、講演に参加した人が1人(新発田市在住)、計2人が既にCIL新発田のスタッフとして事務所の運営を手伝ってもらっています。この他にもセミナーに参加した人がぽつぽつと事務所を訪れてきます。また、広報等で情報を得た人も事務所に訪れてくるようになってきました。これらのことから考えまして新発田での自立生活セミナーの開催は大成功であったと言えます。事前の準備は、講演の打ち合わせ、会場の確保、チラシの作成、宣伝活動、機材の用意くらいでした。こんなことから、セミナーはいつでもすぐに簡単に開催できますし、それなりの効果もありますのでIL通信読者の皆さんの住んでおられる地域での開催をおすすめします。仲間を作って住み良い地域にしていきましょう。
 今後も新発田での仲間づくりと基盤づくりの活動を展開していこうと考えておりますので、是非、皆さんの御協力をお願い致します。近くに住んでいなくてもお知り合いの方にお知らせ下さい。』

このころは、週に必ず2回(火水の午後)事務所をひらいている。
 3月はひとり手伝って下さる方(新発田市在住)が増えました。「I Love You」という聴覚障害を持つ主人公の映画の公演会場でチラシを配った。ノートパソコンとプリンターを貸していただけました。カンパ箱を作りました。全国自立生活センター協議会代表の樋口恵子さんが講演に来られ、お金と書籍を寄付して下さいました。この講演のビデオを貸し出しています。講演会の依頼が1件あった。平日の午前中と週に2回(火水の午後)事務所をひらいている。
 4月は暖かくなってきたので、以前から声をかけていた障害者ひとり(新発田市在住)が顔を出すようになりました。新発田市の広報に取り上げてもらった。またチラシを1000枚作った。講演会の依頼が1件あった。平日の午前中と週に2回(火水の午後)事務所をひらいている。
 5月は印刷機が入りました。これで印刷を請け負います。冷蔵庫と留守番ファックス電話を自立生活支援センター新潟からいただきました。。デスクトップパソコンをいただきました。運営費を作るために商工会主催のフリーマーケットにも参加しました。平日の午前中と週に2回(火水の午後)事務所をひらいている。
 自立生活センター新発田の目的は、障害者の選択肢を増やすことです。具体的には、日常の介助者不足や外出に付き添ってくれる人の不足、公共交通機関の使いにくさ、外出機会が少なく人と触れ合うことが少ない、学校はどうすればよいのか、日中やることもなく過ごす、仕事を見つけられない、友達がいない、福祉制度が分かりにくい、日々進歩する福祉器機を知らない、自分の存在理由はあるのか?健常者と障害者が触れ合う、などを補うために何か自分達にできないかを考えた結果、自立生活センターが浮かんできました。
 事務所を開いてから平均すると月にひとりくらいづつ手伝ってくれる仲間が増えています。あせらずゆっくりと活動を広めていきたいと思っています。相談も電話と来所といくつかあります。相談の内容は、行政に聞けばもっと詳しく教えてもらえることや私たち障害を持つ者にしか答えられないこともあります。日中行くところがなかった障害者が来ています。移動手段が確保できれば事務所に来れる方がまだ何名かいます。事務所を開いている日時を増やしてほしいという要望もあります。これは人を確保できればすぐにできます。パソコンが増えたので使い方の指導もしています。今は運営費の作り方を検討中です。事務所の賃貸料金、電気料金、水道料金、電話料金、灯油料金、備品購入費、人件費、各種保険料金などです。現在はスタッフ個人個人の持ち出しと寄付とカンパです。人件費はまったく支払っていないです。
 障害者の問題はみんなの問題です。(新発田市の障害者の人数(平成10年)=身体障害者1899人、知的障害者397人、精神障害者?人、人口約8万人、なので2・9%くらい、高齢化率は65歳以上の人数が15657人で20%くらい、いつ自分が、家族が、子どもが、孫が、友達が障害を持つかわからない)
 新発田市には知的障害者の日中通う所と精神障害者の日中通う所はありますが、身体障害者の日中通う所がありません。重度身体障害者は家に閉じこもりきりです。自立生活センターは障害の種別には関係なく相談を受けます。
 障害者が街に出る効果としては、商店街の空き店鋪対策、健常者が障害者への理解を深める、障害者が自立する、障害者を消費者と意識する、街のバリアフリー化がすすむ、高齢者も外に出やすくなる、高齢になっても働ける、障害者が仕事を持てる、ものを購入する、税金を納める、商店街が活性化する、街の活力が続く、個人を尊重する心が育つ、自立した市民になる、住み良い豊かな地域になる。

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障害者の自立生活

 一般的に人間は生まれたときは自分自身で、自分のことは何もできません。食事、排泄、衣服の着脱、移動、入浴等、それらはすべて自分以外の人にやってもらいます。そして、心と体が成長するにしたがって一つ一つできることが増えていって身体的な自立ができるようになります。教育を受けていくことで知識や技術をさらに増やします。就職し、収入を得ることで経済的な自立ができるようになります。精神的な自立についても個人差はありますが、経済的な自立ができた頃には、ある程度は精神的な自立ができているのではないでしょうか。
 障害者の施策について、たびたび「いまは良くなったよね」と同意を求められることがあります。実際に1000年前よりは100年前が暮らしやすいでしょう。100年前よりは10年前が暮らしやすいでしょう。10年前よりは今が暮らしやすいでしょう。これは先人たちの努力のお陰で、自由に生き生きと生活できる障害者が増えています。しかしながら、20世紀のめざましい医学の進歩と社会環境の変化で、より重度な障害を持っても存命が可能になり、その期間も延びています。また、新しい原因不明の病気もあります。現在を生きている私たちには将来を今よりも暮らしやすくする責任があります。これは言うまでもなく障害者だけに限ったことではありません。
 皆さん御存じのように障害には多種多様なものがあります。そして、その程度も誰ひとりとして同じ人はいません。近年、障害者の自立支援の施策が進められています。障害者の自立観について、一般的に身体的な自立あるいは経済的な自立をすることが求められていましたが、障害が重度化することで物理的にどんなに本人が努力してもできないことがあります。新聞やテレビなどで報じられる「奇跡」を引っ張り出してきて「あそこではできていたのでできないはずはない、できないのはあなたの努力不足だ。頑張れ、頑張れ」と無知なまわりの人がせき立ててもできないものはできません。これではただ単に本人を追い詰めて苦しめてしまうだけです。そういった、物理的にどうやってもできないことをできるようになるために訓練して大切な時間を大量に費やすよりも物理的にできないことは人の手を借りて済ましてしまい、他のことに時間を使うことの方が本人にとっても社会にとっても有益です。ただし、人の手は借りますが自分で選択し、自分で決定し、結果については自分が責任を持ちます。これが精神的な自立です。こうすることで本人の行動範囲が広まります。今まで眠っていた本人の能力を生かすことになります。職業を見つけることにもつながります。そうなれば、商品やサービスの消費者として無視することはできなくなるでしょう。経済的な自立については、職業がなくても障害基礎年金が受給できれば最低限の生活はできるでしょう。しかし、人間的な、社会的な生活を送ることはむずかしいです。職業を持つことが生きているという充実感をもたらします。人の手を借りて行動範囲を広めることで、障害のない人と接する機会が増えますので、障害を持つ人と障害のない人の相互の理解が深まります。知らないことでおきる不安やぎこちなさは本を読んだだけでは決して埋めることはできません。実際に接っして、お互いに同じ時間を過ごすことでしか本当の理解はできません。自立のどこかの段階であきらめてしまい家に閉じこもっている人がまだ大勢います。外に出にくい地域であればなおさらです。
 では、どうやってこの精神的な自立を促せば良いのでしょう。今の自立支援で足りないことは何でしょう。人に物事を説明する場合に具体的な事例を示すと理解しやすいことがあります。実際に会って生活を説明してもらうことで納得がいきます。自立支援もセルフヘルプ(当事者による支援)が効果的です。同じ経験をし、同じ問題を抱え、どうやって対応してきたかが率直に相談できます。また、その人を見ることで将来の自分の姿をおおまかに予測できます。そのことで障害を知らないことからくる不安が軽減されます。また、目標とすることもできます。行政が設置する相談員に話せないことでも当事者には話すことができます。なぜならば、同じ苦労をしているからです。これはちょっと考えれば当たり前のことですが、個人情報(プライバシー)の問題で地域で生活していても同じ障害を持つ仲間に出会うことがとてもむずかしいです。そのため当事者が持っている有益な情報を有効に役立てることができにくいです。そのことを補う役割を、自立生活センターが行います。障害当事者が運営の主体となり、仲間づくり、自立支援、権利擁護、ピアカウンセリング、自立生活プログラム等の事業を行います。
 障害を持つ自分を認めることができていない時に、障害を持って外に出る時は玄関に見えない壁があります。明確な理由はありません。たとえてみると小さい子どもと外出する時に似ているかもしれません。でも、同じ人達が集まっているところの場合は壁は小さくなります。その意味で自立生活センターを外出のきっかけとすることができます。友達を見つけ、社会に接します。また、障害の無い人もつどうことで障害者について知らなかった人に理解を深めてもらうことができます。知ることで不便な部分が気にかかるようになります。そういう人がひとりづつ増えていくことで今よりも暮らしやすい地域になっていきます。そして、より多くの人に見てもらい立ち寄ってもらうために場所は街の中心部にすると良いでしょう。誰も来ないところに設置するくらいならば作らないほうが良いです。市街地の活性化のために取り組んでいる自治体もあります。これからやってくる超高齢社会のまちづくりにも大いに役立ちます。

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IT革命がもたらすもの

 IT(情報技術)革命が進んでいますが、これは障害を持つ人にとっても生活の革命をもたらしはじめています。特にコミュニケーションの分野です。
 携帯電話とインターネットの普及で電子メールの利用が増えています。これにより今まで電話を利用しにくかった聴覚に障害を持つ人がファックスよりも早く、ほぼリアルタイムで会話ができるようになりました。また、高速のテレビ電話が普及すれば手話で会話ができるようになります。
 パソコンのソフトでは時間はかかりますが、ひとつのスイッチを操作できれば、その繰り返しで文字の入力や様々な電気製品はほとんどすべて操作できます。基本的に「まばたき」ができれば多くのことが自分でできます。
 演算速度の高速化が音声認識ソフトを実用的なレベルのものにしました。このことで手足が不自由でキーボード入力ができなくても、しゃべった言葉が文字になり文章の作成が容易にできるようになりました。電子メールも簡単に送れます。NHKはアナウンサーのしゃべった言葉を瞬時に文字化して画面に字幕で表示する研究を進めており、もう少しすると試験放送を始めるようです。この技術が実用的になれば講演会、学校の授業などの要約筆記が簡単になります。内容もより正確に伝わることになります。
 逆に言葉を話せない障害を持つ場合でも、入力した文字を言葉で発音してくれるので、パソコンを操ることで講演することもできます。視覚障害で文字が見えなくてもホームページや電子メールの文字を音声で読み上げることができます。紙の媒体でもスキャナーで画像を読み取り、それを文字認識し、かなりの精度で読み上げることができます。この道具を使えば、人に頼まなくてもひとりで自分の好きな時に読書が楽しめます。
 これらのことで情報を得ることとコミュニケーションの幅が格段に広がりました。物理的な距離は意識する必要がありません。職業につながる場合もあります。通信講座でプログラミングを勉強して在宅で仕事をしている障害者は確実に増えています。以上のことからこれらの道具を使いこなすことで生活が変えられます。できないことはないと言ってよいでしょう。使いこなせる人と使えない人の情報量の格差はそのまま生活の質にあらわれるでしょう。情報の信頼度と選択と利用方法も身に付けなければなりません。道具には種類がさまざまありますので、気軽に行けて、実際にさわることができて、操作方法を教えてもらえるところが近くにあると良いでしょう。
 どんなことにも共通することですが、どんなに技術が発達しても待っているだけでは良い情報は手に入れられません。本人が自己実現のために常に必要な情報にアンテナをはっていることが大事です。結局、本人の気持ち次第で人生は変えることができます。まわりの人は如何にしてそれを継続的に支援していけるかが重要な課題です。

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