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秋田 16時12分着⇒16時27分発

 さて、今日の旅のラストランナーは新潟行きのいなほ16号となる。この列車はとりあえずL特急ということになっているのだが、L特急ってどんな定義だったのだろうか。特急いなほはL特急と呼ぶにふさわしいのだろうか。この時間なのに、新潟へ行く特急の最終列車となるのである。
 普通電車ならば、この後17時31分発の快速こよし6号に乗り、途中酒田と村上で乗り換えて、新潟に23時22分に着くことが出来るのだが、さすがにそこまでする元気はない。

 ここでの乗換え時間は15分。新幹線の中間改札を抜けて特急いなほの待つ3番線へ。列車はすでに停車しているが、車内はガラガラ。特に指定席の喫煙車である3号車は先客が1人。席にカバンを置き、駅弁を買おうとホームの売店をのぞくが見当たらない。中間改札口近くに売店があったことを思いだし階段を上がる。
 家族へのお土産に駅弁を約束してあるので、「しらかみ」「秋田まるごと弁当」「おばこ弁当」と3つの弁当を購入。ホームの売店で500mlのアサヒスーパードライを2本買って自分の席に戻る。発車時間となったが、3号車の乗客は自分を入れてもわずか4人。これじゃ列車が少なくなるのも仕方がないのかもしれない。

 列車は定刻に秋田駅を発車。さっそく缶ビールをプシュッと開けて、駅弁を食べる事にする。駅弁を食べまくると出発前に誓った割に、前食から6時間以上経過してしまった。
 まずは仙台の牛たん弁当から。と思ったが、弁当を置くテーブルがかなり小さい。今日乗ったすべての新幹線が、前席の背もたれから引き出すタイプのテーブルでかなり広く、ことのほか小さく見える。しかたがないので、窓際に缶ビールを置き、弁当は手に持って食べることにした。

 さて、今回の旅で楽しみにしていた牛たん弁当。説明書にしたがってヒモを引き、缶ビールを飲みながら待つ事数分。おいしそうな匂いがしてきて、あつあつの牛たん弁当が出来上がり。味はもちろん店で食べるのには及ばないものの、車内で食べるぶんには充分な美味さであった。ただ、量がかなり物足りない。これならあと2、3個買っておけばとくやまれる。
 牛たん弁当を食べた事により私の食欲に火がつき、家族への土産と買った弁当にも手を出すことになる。食欲魔人が選んだのは「しらかみ」。おかずが豊富でビールがすすむ。おこわといい、おかずといい、今日食べた中ではこれが一番。あっというまにビールを1リットル飲んでしまった。気がつくと右窓に私の好きな海が広がっていた。

 列車は羽後本荘、仁賀保、象潟と停車してゆき、左窓に鳥海山が雄大な姿をあらわす。そして酒田に到着する前に右窓から太陽が沈む。
 暗くなってしまうと特にする事がなくなってしまい、今日一日の疲れも出て、ついついウトウトと船をこぐ。車窓の美しい笹川流れも闇の中である。

 村上の手前にデッドセクションがあり、交流と直流が切り替わるため車内が一時非常灯のみとなる。ここも今日の旅の1つのポイントなのだが、以前羽越本線に乗車したときは昼間だったこともあり、特にどうといったことがなかった。軽い気持ちでそのポイントを迎えたのであるが、予想に反してすばらしい車窓が展開。今まで車内が明るくて車窓も見づらかったのだが、デッドセクションに入り車内の電灯が消えたとたんに、窓外のなんでもない夜景が輝き出したのだ。あまりの美しさにしばし呆然と夜景に見入ってしまった。旅のラストに思わぬプレゼントとなったのである。

 列車は村上を出ると、坂町、中条、新発田、そして豊栄に停車。阿賀野川の鉄橋を渡ると、見覚えのある建物が車窓をすぎてゆき、定刻20時01分、新潟駅に到着した。帰宅後、余韻にひたる間もなく事故の処理にとりかかる。幸いたいしたことはなく、バンパーにキズが入っただけであった。というわけで、この文章を書きながら余韻に浸り返しているのである。

 

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