cheap the thief 4



 たぶん、また、言われていることの半分も理解できないままうなずいてしまったのだろうと思う。


 だから、今、こうして、ムショに放り込まれること無く、オヤジと対峙しているのだろうと。





 …エライことになった。

 心の中だけで、タメ息をついた。






「で、名前は」

 やっとこの重たい沈黙を破ったのは、スキンヘッドのオヤジのほうだった。
 さっきは暗くてよく見えなかったが、年のころは30代半ばといったところか。サングラスをしていて、相変わらず形相は拝めない、


「シ、オン・アスター…」
「シオンくん、歳は」
「じゅういち、」
「じゅ…、そんな年端もいかない頃から…。家族が知ったら悲しむぞ」
「もう誰もいねーから、村を出たんだ」

「…そりゃ好都合だ」

 そう言ってカウンターから何か取り出した。


「…、で、組むって何を…」
「ああ、説明がまだだったな。かいつまんで言うぞ、今日からオマエの生業は泥棒だ」
「…?」

「ここはな、なんでも屋だ」
「なんでも屋…?」
「客に依頼されたことはなんでもこなす、『なんでも屋』だ」

 目の前のオヤジは、さっきからずっとカウンターから取り出したもの(地図だろうか?)を眺めている。



「あの屋敷から有名画家のあの絵を3枚、純金のプレートを…」


 血の気が引いていくのを感じた。

 生業が、泥棒?

 たった今目の前のオヤジに威嚇され、二度と盗みなど働くものかと誓ったばかりだと言うのに。


「俺、そんな…」
「ああ、こないだの男は古い写真だったな。まぁ、ブツはいろいろだ」
「オイ、泥棒って…、犯罪だろ!?」
「そうだろうな、今ここでオマエを役人に突き出せばムショへ一直線だろうな」
「言ってることが…」


「当然、バレたらオマエはお縄だ」
「!」
「でも、俺には何の被害もない」
「おい、それって…、」
「ああ、お前を利用させてもらうよ」
「なんだよそれ!」

 シオンは身を乗り出し怒鳴った。

「オマエの前任は、一週間前捕まった。ヘマしたんだ。慣れからくるくだらないミスだ。屋敷の娘に見とれて悲鳴を上げられてな。そうなりたくなかったら、気は抜かないようにするだけだ」
「そうなるもならないも、俺は泥棒なんてやりたかねーよ!」
「…ほう、オマエには選択肢が無いことがわかってないな。オマエには、盗みかムショ行きか、どっちかしかねぇんだよ!」



 それは11歳の少年には、厳しすぎる選択肢で。
 盗みがいけないことなんて当然わかっている。現に、もう懲りた。

 でもそれでも刑務所へなんか入れられたくはない。まだ、11歳。たった11歳で。





「…やるよ、盗み。やったらいいんだろ。俺にはそれしかないんだろ…」



 ここに、11歳の、幼い泥棒が誕生した。




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間があきすぎた…。キャラが、キャラが…。
とりあえず、ここでひとまとめ。
今見直したら短いわねこれ…!