第三章 偽りのキャッスル

モーコを離れ、ジパングへ着いたハクホウだったが、初めて訪れる異国の地に右も左もわからず、ただ、さまよう日々が続いていた。
そんなある日のこと、一人の天使がハクホウに声をかけてきた
「お兄ちゃん、そんなやつれた顔でさまよってどうしたんだい?」
「私は格闘天使になるためにこのジパングにやってきたんです。」
「奇遇だな。実は俺も格闘天使を目指してるんだ。そうだ、俺が通っている養成所みたいなところがあるんだ。そこならお前も格闘天使になれるぞ。」
「本当ですか!?」
彼の言葉を聞いた瞬間、目の前が開けたような錯覚がしたハクホウはすんなりと言いなりになってしまった。
しかし、そこは養成所ではなく、ただ遊びで天使試験をまねているようなもの、簡単に言えば『天使試験ごっこ』をしている無法者の集団、セッツだったのだ。
セッツの罠にはまったハクホウに待っていたのは特訓という名目のいじめだった。特にハクホウは異国ということで差別され、何度も侮辱を受けた。食事をしようにもハクホウに出されるのはいつも底に余ったほんの少しのおかずと茶碗が大きく見えそうなくらいに小さく盛られたごはんだけだった。
たまにはこんな嫌がらせをされていた。
「よう、異国の坊ちゃん、そんな粗末な食事じゃつまんないから混ぜご飯にしてやるぜ。」
そう言っては彼らは今にもウジが湧きそうなくらい異臭がする残飯をハクホウの茶碗の中に乗せていくのだ
いつまでも黙っていられないハクホウも反撃は見せた。
が、食事も満足に与えられない現状では全く歯が立たず、いつも袋叩きにされていた。
痛む体を丸め、何もしかれていない冷たい地面に毎夜涙を流した。
そのたびにムンフのあの言葉が脳裏をよぎってきた。
「格闘天使に感情は必要ない。」
いつしかハクホウの顔からは涙は消え、表情がなくなっていった。

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