因数定理と高次方程式(PART-U)


剰余定理
  まず、簡単な割り算ですが、7÷3=2・・・1 となります。この計算の確かめで 7=3×2+1 は誰でも
知っているはずです。ちなみに、7 は割られる数、3 は割る数、2 は商、1 は余りです。
  数値が式に替わっただけで、剰余定理もこれと同じで、
           割られる式=割る式×商+余り  の関係が成り立ちます。
ゴチャゴチャ考えないで、この関係式だけを使えば、ほとんどと解決できます。
ここで、余り=0 となれば因数定理になることが、理解できると思います。

では次の例題を解いてください。(恒等式ですが、この分野と関連があります。どのように解答しますか?)
3 X(X+1)(X−1)+X(X+1)+X(X−1) が任意なXで成り立つように を定めよ。
  解答例
      ここでは、適当な数値を代入するのがよい方法です。(展開して係数比較はここでよくない。)
      まず、X=0,1,−1を代入します。
      X=0 を代入すると、0=0 となりの関係式になりません。
          これは、X=0で与えられた関係式が成り立つことを意味しているであって、不適、解なし、ではありません。
      X=1   を代入すると、1=2
      X=−1 を代入すると、−1=2
      他の値を代入してもいいのですが、ここでは、X 3 =の係数に着目して  =1  となります。
      ここまでの解法は、必要条件で、まだ十分であることがいえてないので、
      Xに 0,1,−1以外の値を代入して、十分であることを示します。(これはここでは省略)

恒等式の数値代入法を用いて解くのが、余りの問題です。次の例題を解いて下さい。
X の整式 P(X)を X−1 で割ると 1 余り、X−2 で割ると 2 余ります。P(X)を (X−1)(X−2) で割った
ときの余りを求めよ。
解答例
    P(X)を X−1, X−2,(X−1)(X−2) で割ったときの商を,Q1(X),Q2(X),Q3(X),とすると、
    P(X)=(X−1)Q1(X)+1 ・・・@
    P(X)=(X−1)Q2(X)+2 ・・・A
    また、P(X)を 2次式(X−1)(X−2)で割ったときの余りは、1次以下の整式であるので
    P(X)=(X−1)(X−2)Q3(X)+X+ ・・・B   
    @,B において、X=1とすると P(1)==1
    A,B において、X=2とすると P(2)=2=2    
        これを解いて、 =1,=0    よって求める余りは、X となる。

   P(X)が  (X−1)Q1(X)+1=(X−1)Q2(X)+2=(X−1)(X−2)Q3(X)+aX+b のように3通りにあらわされている。
           ここで、X=1,X=2 と代入して解いているだけです。基本はあくまで、
割られる式=割る式×商+余り
    また、余りは、割る式の次数よりせいぜい一つ低い次数であることに注意してください。


X の整式 P(X)を X−1 で割ると 1 余り、(X−2) 2 で割ると 2 余ります。P(X)を (X−1)(X−2) 2  で割った
ときの余りを求めよ。

解答例
    条件より、P(X)=(X−1)Q1(X)+ 1 ・・・@
P(X)=(X−2) 2 2(X)+ 2 ・・・A
           P(X)=(X−2) 2 (X−1)Q3(X)+ 2 X+ ・・・B   とおける。
          Bのように表せる P(X)を(X−2) 2 で割ったときの余りは 、a 2 X+c を (X−2) 2
          割ったときの余りであるから、   2 X+(X−2) 2 +2  となるので、
        B式は、 P(X)=(X−2) 2 (X−1)Q3(X)+ (X−2) 2 +2  となる。
        これと、@において、X=1 とすると、   +2=1  より  =−1
        よって、求める余りは、   −X 2 +4X  となる。

           このような問題では、数値を代入するだけでは求まりません。余りの出所を考えてください。
           また、別解として、微分を利用する方法もあります。微分を用いれば、数値を代入するだけです。 


n を X 2 +1 で割ったときのあまりを求めよ。(nは自然数)
解答例
    余りは、割る式の次数より低いので、この場合一次式以下であるから、余りは、X+b るとおける。
    よって、  X n =(X 2 +1)P(x)+X+b  と表せる。
    この両辺に、X= を代入して( は虚数単位)
             n +b
    n=1,2,3,4と順に考えてみれば、見当は つきます。  1 ,=  2 =−1,  3 =−  4=1
     のように、4個ごとに繰り返します。だから、n=4k−3,4k−2,4k−1,4k を考えます。
     なお、ここで、k≧1です。
     (n=4k−3はn=4k+1とも表せます。この違いは、nの最小値n=1を定義するのに、n=4k−3では、k≧1となり、
      n=4k+1では、k≧0となることです。ほかの場合も同じですが、ここでは、4通りどれも同じように定義したいので
      n=4k−3,4k−2,4k−1,4kとしました。)


  n=4k−3のとき
      4k-3 4(k-1)+1 4(k-1) +b となり、,bは実数なので、=1,b=0
           よって、このときの余りは、X である。
         (ここでk=1のとき、 0 =1となるが、指数の定義にあてはまっている。)

  n=4k−2のとき
      4k-2 4(k-1)+2 4(k-1) 2 =−1 = +b となり、,bは実数なので、=0,b=−1
           よって、このときの余りは、−1 である。

  n=4k−1のとき
      4k-1 4(k-1)+3 4(k-1) 3 =− +b となり、,bは実数なので、=−1,b=0
           よって、このときの余りは、−Xである。

  n=4kのとき
      4k =1= +b となり、,bは実数なので、=0,b=1
           よって、このときの余りは、1 である。


方程式 10・9(n−15)=(n−19)(n−7)(n−8) の解の一つは、9以上の整数であることが
解っている。これをもとにこの方程式を解け。
解答例
     (n−7)(n−8)は連続整数の積であるから、右辺にも連続整数の積の部分がある。
     両辺の符号が同一(等式なので)であることに着目すると、9≦n≦14,20≦n の整数、
     また右辺の10・9=2・5・3・3 の部分に着目して(この部分で連続しなくても n−15 を含めて
     連続することもある)
     連続する整数として、1・2,2・3,3・4,4・5,5・6,6・7,9・10,10・11,・・・・などいろいろあり、
     これは場合が多すぎるので「このような形だろう」ぐらいで余り考えないほうがよい。
     まず、一つ等式が成り立つ整数 n を探します。
     (n−7)(n−8)=6・5 のとき n=13となり、これは解となりえる。(確認してください。)

     勘のいい人は、ほかにも見つけたかもしれませんが、ここではn=13 だけが見つかったとして
     説明します。これが解になるのだから、n−13 の因数があるはずです。この因数を無理矢理
     利用します。
         10・9(n−13−2)=(n−13−6)(n−7)(n−8) 
                                (右辺はどの部分でもいいのだが、なんとなく 19 が目障り)
        10・9(n−13)−10・9・2=(n−13)(n−7)(n−8)−6(n−7)(n−8)  より、
        10・9(n−13)+6{(n−7)(n−8)−30}=(n−13)(n−7)(n−8)
        10・9(n−13)+6(n−13)(n−2)=(n−13)(n−7)(n−8)

     後は、移項して(n−13)でくくるか、
     n=13以外の解を求めるのだから(n−13)で両辺を割ってもかまいません。
                                 (割った方程式がn=13を解に持つこともあるが)
     結果は、 n=13,22,1 となります。