7.獣族


神獣
 神の使いや、神に匹敵する力を持った獣たち。獣の姿にをとった神々である場合もあるが、多くは神の乗騎であったり、敵対者との戦いで神とともに戦うものである。

アヌビス(Anubis)  出身地:エジプト
 エジプトの神話で死者を裁く役割を持った冥府の神。頭部はジャッカルのものであり、手に持った天秤で死者の心臓の重さを量り、その罪の重さが羽根よりも重かった者の魂はアーマーンに食われるとされている。また、ミイラの神でもあり、セトに殺されたオシリスをミイラにしたのもアヌビスである。

ウカノミタマ(Uka-no-mitama)  出身地:日本
 宇迦之御魂神。五穀と食物を司る日本の神。稲穂が神格化されたものといわれ、所謂「御稲荷さん」として各地にある稲荷神社の祭神となっている。

カイメイジュウ(Kaimei-ju)  出身地:中国
 開明獣。道教において、天帝の住まう崑崙山の宮殿の正門である開明門を守護する門番。九つの人面を持った頭に、虎のような体をしている。

カマプアア(Kamapuaa)  出身地:ポリネシア
 “豚っ子”を意味する名を持つポリネシアの豚の姿をした神。好戦的かつ、好色な性格をしており、火の女神ペレに求婚して断られると、ペレと戦ってこれを打ち負かして妻としたとされている。

キマイラ(Chimaira)  出身地:ギリシア
 エキドナとテュポンの間に生まれた異形の怪物。頭は獅子のものであり、胴体は山羊、尻尾は大蛇しかも口から炎を吐く。リュキアで人々を苦しめていたが、ペガサスに乗った英雄ベレロフォンによって倒された。

キリン(Kirin)  出身地:中国
 麒麟。平和と繁栄の前兆とされる中国の聖獣。麒は雄、麟は雌であり、ともに鹿の体に牛の尾、馬の脚、頭は狼あるいは羊のものとされるが、雌にはさらに角が一本生えているといわれる。黄帝の下でシユウを倒した応龍の血を引いており、あらゆる長い毛を持った獣の先祖であり、王であるとされる。

ゲンブ(Genbu)  出身地:中国
 玄武。四方を守護する四神の一であり、北方を守護している。五行では水に対応しており、亀とそれに絡みつく蛇の姿で描かれる。

スフィンクス(Sphinx)  出身地:エジプト
 人間の頭に獅子の体を持った怪物であり、王家の墓の門番とされている。ギリシア神話では、顔と乳房は人間の女性だが、ライオンの体と猛禽類の翼を持った怪物とされた。テバイへと続く街道に陣取って、そこを通る人に謎をかけ、解けなかった人間を食い殺していたが、オディプスに謎を解かれると崖の上から身を投げて死んだ。『真・女神転生』ではメガドライブ版にのみ登場する。

セベク(Sebec)  出身地:エジプト
 ワニの姿をしたエジプトの水神。水を支配し、洪水を起こすだけでなく、人々の心に恐怖を引き起こすことも職務としていたため、悪神とされていた。セトによってオシリスの体が引き裂かれた時には、河に投げ込まれたオシリスの体を集めてイシスの下に届けている。

テンホウゲンスイ(Tenhou Gensui)  出身地:中国
 天蓬元帥。『西遊記』に登場する猪八戒のこと。天界にあっては、天の川の水軍を率いる大将であったが、女癖が悪く宴で仙女に戯れかかったために天界より堕とされ、猪の体に入ってしまった。三蔵法師の取経の旅に従って天竺へ行き、旅を終えた後は元の位に復し、さらに浄壇使者の役職を加えられた。

ナラシンハ(Nrisinha)  出身地:インド
 →ヴィシュヌ

ナンディ(Nandi)  出身地:インド
 シヴァの乗り物である乳白色の雄牛。乳海攪拌の際に生まれた神牛スラビの子であり、四つ足の獣の王とされる。多産と豊穣の象徴である雄牛はヒンズー教では神聖視されており、聖なる動物として崇められている。

ハクタク(Hakutaku)  出身地:中国
 白澤。黄帝がシユウを征伐後、東方を巡幸した際に桓山の近くの海岸で出会った神獣。人語を解し、この世の全てのことを知っている。黄帝はこの世の鬼神について質問し、ハクタクが語った一万以上の妖怪の絵図を描かせてこれらによる害を未然に防ごうとした。この図は『白澤図』と呼ばれて後世に伝わり、妖怪の正体を暴くのに使用された。

パピルサグ(Pabilsag)  出身地:バビロニア
 人界と冥界を隔てる門の番人で、蠍と人間の融合した姿をしている。その異質な姿は見るものに恐怖を与えるという。ティアマトの生み出した怪物の一人であり、マルドゥークとティアマトが戦った際にはティアマトの陣営についている。パピルサグがギリシアに伝わってケンタウロスの原型になったとされている。

バロン(Balong)  出身地:バリ島
 バリ島の森に住む聖なる獣。体は白い毛に覆われているが、顔は真赤である。バロンは善と光の象徴であり、悪と闇の権化である魔女ランダとは不倶戴天の敵でありため永遠に決着のつかない戦いを続けるとされている。

ペガサス(Pegasus)  出身地:ギリシア
 ギリシア神話に数多く登場する翼を持った白馬。数多の英雄をその背に乗せているが、特にメデューサから生れ、ペルセウスの乗騎となったものが有名である。ペガサスは気性が非常に荒く、女神アテナの持つ黄金の手綱が無いと御することはできないと伝えられている。

マカミ(Makami)  出身地:日本
 火事や盗難などの厄を払ってくれるとされる神。狼が神格化されたものである。


聖獣
 聖なる力を持ち、人々に加護をもたらす獣たち。神獣よりも能力的には劣ったものが多い。

アイラーヴァタ(Airavata)  出身地:インド
 ヒンズー神話の雷神インドラの乗騎である四本の牙を持つ白い象。乳海攪拌のときに生まれ出でてたとされる。太古には翼を持ち空を飛んでいたが、呪いによって翼を失ったという。

アピス(Apis)  出身地:エジプト
 エジプトの原初の神プタハの代理とされる聖なる牛。全身に29の特徴があり、その全てを満たす牛がアピスとして崇拝された。新しいアピスが発見されると、前のアピスはナイル河に投げ込まれて殺されていた。

アンヴァル(Aonbarr)  出身地:ケルト
 ケルトの光明神ルーグの乗騎である白馬。その名は「輝く鬣」という意味であり、春風のように素早く、海の上でも陸上と同じように走ることができる。ルーグが育ての父親である海神マナナンの下からダナーンに戻る際に与えられたものである。

ウルスラグナ(Ulthragna)  出身地:ペルシャ
 ペルシャの軍神で、信奉者には勝利を与えるが、邪悪な者には罰を与えるとされる。ゾロアスター教においては、神霊ヤザタの一人とされ、勝利を司るものとされている。

カイチ(Kaichi)  出身地:中国
 一本の角を持った羊に似た中国の瑞獣。事の善悪を見抜く力を持ち、正しい者の前に姿を現すとされている。日本にも狛犬の一種として伝わり、東京日本橋に守護像がある。

キニチ・アハウ(Kinich Ahau)  出身地:マヤ
 マヤの太陽神。イツァム・ナーや、ケツアルカトルとも同一視されることもある。

グリンブルスティ(Gullinbursti)  出身地:北欧
 北欧神話の神フレイの持っている光り輝く牡猪。その名は「黄金の剛毛」という意味であり、陸海空をどんな馬よりも速く走ることが出来た。トールの妻シフの髪を切ったロキが、ドヴェルガーに代わりの髪を作ってもらった時に、ブロックとエイトリというドヴェルガーの兄弟が作り上げたものである。

シーサー(Siesai)  出身地:琉球
 沖縄で、魔除けとして家屋に置かれている焼き物の狛犬。中国で街の守護神であったものが、火災からの魔除けとして伝わったものである。「獅子さん」がなまってシーサーになったとする説もある。

スレイプニル(Sleipnir)  出身地:北欧
 北欧神話の主神オーディンの愛馬である八本足の馬。地上で最も早く、空も海も駆けることができる。アースガルズの城塞を築いた巨人族が飼っていた牡馬スヴァジルフェーリと、ロキが変身した牝馬が交わって生まれた。

セイギュウカイ(Seigyu-kai)  出身地:中国
 道教の始祖である老子、太上老君の乗り物である青い牛。太上老君の目を盗んで下界に降り、大秦国の皇帝と入れ替わって宮廷を支配していたが、正体がばれると大暴れして死者まで出した。太上老君の弟子である徐甲に取り押さえられて仙界に連れ戻された。

バステト(Bastet)  出身地:エジプト
 雌のライオンあるいは猫の頭部を持ったエジプトの神。太陽神もしくはセクメトの子とされ、殺戮と恵みを司っている。『真・女神転生』ではメガドライブ版にのみ登場する。

ビャッコ(Byakko)  出身地:中国
 白虎。四方を守護する四神の一であり、西方を守護している。五行では金に対応している。古代の中国では虎が獣の王とされ、中でも500年以上生きた虎がビャッコになると言われている。

フウタイ(Futai)  出身地:中国
 風泰。河南省にある首陽山に住むと伝えられる吉祥神。虎の尾を持った人の姿をしており、天地を動かし暴風雨を起こす能力を持つ。

ブラーク(Buraq)  出身地:イスラム
 イスラム教の始祖マホメットを天国へと乗せていった天馬。ロバよりは大きく、ラバよりは小さいが、比類なき俊足の持ち主である。マホメットが天国に行くときに倒れかけた壷が倒れる前に、天国と地獄を巡って人界に戻ってきたとされる。

ヘケト(Heceto)  出身地:エジプト
 水を司るエジプトの女神。蛙の頭部をしており、多産と復活のシンボルとされた。牡羊神クヌムの妻とされ、全ての被造物の出生の神であり、人間の体に魂を吹き込んだ神といわれている。

ヤツフサ(Yatsufusa)  出身地:日本
 八房。滝沢馬琴の伝奇小説『南総里見八犬伝』に登場する犬。安房国滝田城の城主里見義実に飼われていたが、戦場で義実が「敵将の首を取ったら娘の伏姫を与える」と言ったところ、八房は敵将の首を取ってきた。八房は伏姫と山中に暮らしていたが、義実臣下の金椀八郎の鉄砲に撃ち殺された。

ユニコーン(Unicorn)  出身地:イギリス
 イギリス文学にしばしば登場する一角獣。角の生えた白馬の姿をしており、その角には万病を癒す力があるとされる。知能が高い上に警戒心が強く、めったに人間の前に姿を見せないが、汚れを知らない乙女にのみ心を許し、わが身に触れることを許すとされる。


魔獣
 人知を超えた力を持った獣型の悪魔。高位の魔獣は神々の乗り物であったり、冥界の住人であったりするが、下位の魔獣は年老いた動物が化生した魔物である。

アーマーン(Aaman)  出身地:エジプト
 『死者の書』に描かれている冥界に住む魔物。姿はワニだが、前足はライオン、後ろ足はカバのものである。アヌビスの裁きによって地獄に落とされることが決まった者の魂を食ってしまう。アーマーンに食われた魂は転生できなくなるとされている。

イヌガミ(Inugami)  出身地:日本
 犬神。「犬神使い」と呼ばれる術者によって使役される犬の霊。普段は小動物の姿をしているが、使役者の命に従って人や家系に取り憑く。家系にとりついた場合にはその家系は「犬神筋」と呼ばれ、犬神を大事に扱えば富貴を得られるが、粗末に扱えば災いをなすとされる。

オルトロス(Orthrus)  出身地:ギリシア
 エキドナとテュポンの間に生まれた双頭の犬。母であるエキドナと交わり、スフィンクスやネメアのライオンを生ませたとされる。エリテュア島に住む怪物ゲリュオンが飼っている赤牛の番犬だったが、牛を奪いにきたヘラクレスに撲殺された。

カーシー(Cu Sith)  出身地:ケルト
 現地語では“クー・シー”とも呼ばれている。“クー”は犬、“シー”は妖精の意味であり、その名の通り犬のような姿をしているが、大きさは子牛ほどもあり、大きな眼はギラギラと輝いている。音を立てずに歩くことができるので、妖精たちはカーシーを番犬や乗り物として利用することが多い。

カソ(Kaso)  出身地:中国
 火鼠。南海の彼方にある火山に住むとされる鼠。体毛は火の中にいるときは赤く、火の外に出ると白くなる。カソは水に弱く、水をかけられるとたちまちの内に死んでしまう。50cmほどの長い毛を持っており、この毛を紡ぐことによって燃えない布、火浣布を作ることができるとされる。

カタキラウワ(Kataki-rauwa)  出身地:奄美大島
 片耳豚。奄美大島に現れる片耳の子豚。耳以外にも、眼や足が欠けている場合もある。カタキラウワに股の下をくぐられると魂を抜かれて死んでしまうとされるが、両足を交差させて股の下を通れないようにすれば災厄を避けることができる。

カブソ(Kabuso)  出身地:日本
 石川県の伝承に登場する水の妖怪。尾の先が太くなった子猫の姿をしているが、美少女の姿に化けて男をたぶらかしたり、人間を化かしたりする。河に住んでおり、人語を解するところから河童の一種と考えられる。

カンフュール(Canhur)  出身地:エチオピア
 エチオピアのモルッカ島に住むと伝えられる一角獣。牡鹿に似た姿をしているが、後ろ足は水鳥のようであり、首の周囲にだけ体毛が生えている。額に生えた角を使って獲物を捕えるとされている。この角には強力な解毒作用があるとも言われている。

ギャリートロット(Gallytrot)  出身地:イギリス
 イングランド東部に現れる人の頭を持った巨大な犬。「宝を守る者」という意味の古語を語源に持っており、埋蔵された宝を守護していると伝えられる。また、ギャリートロットに遭うことは死の前兆であるとして恐れられた。

グリフォン(Griffon)  出身地:ギリシア
 ギリシア神話に登場する上半身が鷲、下半身がライオンの怪物。ギリシアの北方にあるスティキアで黄金を守っており、宝物を狙うものには容赦なく襲いかかった。鷲とライオンという、陸と空の王者の姿をしていることから、騎士の紋章や建物の装飾などにもしばしば用いられている。

クン・アヌン(Cun Anun)  出身地:イギリス
 イギリスに伝わる角の生えた猟犬の群れ。眼と口から炎を噴出す馬に乗った狩人とともに現れ、荒野を旅する人間に襲い掛かるとされる。クン・アヌンに遭遇しても、その場で跪いて神に祈ることができれば助かるといわれている。

ケットシー(Cait Sith)  出身地:ケルト
 ケルトに伝わる猫の妖精。犬ほどの大きさで、胸に白い斑点のある黒猫の姿をしており、普段は普通の猫のふりをして人間に飼われていることもある。ペローの童話『長靴を履いた猫』にも登場している。『真・女神転生』ではメガドライブ版にのみ登場する。

ケルベロス(Cerberus)  出身地:ギリシア
 エキドナとテュポンの子で、三つの頭と蛇の尻尾を持つ冥府の門の番犬。三つある頭の一つは生者が冥界に入らないように、もう一つは死者が冥界から抜け出さないように監視し、最後の一つは他の二つの補佐をしている。

ゲンクロウ(Genkurou)  出身地:日本
 源九郎。浄瑠璃、歌舞伎の演目『義経千本桜』に登場する狐。皮を剥がれて鼓にされた母狐を慕うあまりに、源義経配下の武士、佐藤忠信に化けた。正体を暴かれると、大立ち回りを演じたが、最後は義経から「源九郎」の名と鼓を贈られて飛び去っていった。

サンキ(Sanki)  出身地:中国
 恒山の南にある獄法之山に住む獣。犬に似た姿に人の頭を持っており、人を見ると物を投げたり笑い飛ばしたりする。サンキが出現すると、天下に暴風が吹き荒れるとされる。

ショウジョウ(Shoujou)  出身地:中国
 猩々。百年以上生きた猿が化けたものだとされる怪物。普段は山奥に住んでいるが、人里に下りてくると人を騙したり、女を攫ったりする。知能が高く、予知能力を持っているともされるため、ショウジョウを捕えようとした人間を逆に山奥に誘い込んで迷わせたりすることもある。ショウジョウの肉は珍味とされ、食べると足が速くなるという効能があるといわれる。

ストーンカ(Stoneca)  出身地:ブルガリア
 ブルガリアに住む一つ目の牛の怪物。青銅の皮膚を持ち、雷鳴のような鳴き声を上げる。

セルケト(Serceto)  出身地:エジプト
 女神イシスの従者である蠍の女神。頭に蠍をのせた女性や、女性の顔をした蠍の姿で描かれる。冥界に住まう怪物のネケブカウの妻であるとされる。

タムズ(Tamz)  出身地:スペイン
 スペインに住む蠍の怪物。バビロニアの植物神であり、イシュタルの夫であるタンムーズが変化した姿であると考えられている。

タンキ(Tanki)  出身地:日本
 丹亀。長い年を経て、大地の精を集めた亀が変じた妖怪。

ドゥン(Dawon)  出身地:チベット
 女神ドゥルガーの乗り物である聖なる虎。アスラと戦う際にドゥルガーに授けられ、鋭い牙と爪をもってドゥルガーとともに戦ったとされる。元々はチベットの伝承に登場する聖獣だったものが、ヒンズー神話に取り込まれて、ドゥンになったと思われる。

ネコマタ(Nekomata)  出身地:日本
 猫又。50年以上生きた猫は尾が二つに分かれ、人語を解するようになって、猫又になるとされる。二本足で歩き、人間に化ける能力も身につけ、人間をたぶらかして食うこともある。『鍋島騒動』のように、飼い主が非業の死を遂げた場合、猫又になった飼い猫が主人の仇を討つこともある。

フォーン(Faun)  出身地:ギリシア
 ギリシア神話の牧神パンのローマ神話での呼び名であるファウヌスを英語読みしたもの。山羊の下半身をした人間の若者の姿をしており、快楽を好む。

ヘアリージャック(Hairy Jack)  出身地:イギリス
 真っ黒なむく犬の姿をした妖怪。子牛ほどの大きさをしており、燃えるような赤い目をしている。荒野や人気のない農園などに現れ、人間を襲うこともある。死者の霊が犬の姿をとって現れたものとされ、人間の姿をとることもあった。

マスターテリオン(Master Telion)  出身地:イスラエル
 『ヨハネの黙示録』に登場する「666の獣」あるいは単に「獣」(Beast)とも呼ばれるもの。七つの頭と十本の角を持ち、十個の冠を戴いている。サタンとともに現れて、自分を象った像を崇めるように人々に強制するが、最後には神の軍勢に捕えられる。

メリジェーヌ(Merisienu)  出身地:スコットランド
 泉の精プレッセナと人間の王エリナスの間に生まれた娘。エリナスは止められていたにもかかわらず、プレッセナの出産のときの姿を見たため、プレッセナは生まれた娘達をつれて去ってしまった。母親から、父が禁忌を破らなければ城で平穏に暮らせていたのにと聞いて育ったメリジェーヌは父への恨みから、父を山中に閉じ込めてしまった。しかし、未だにエリナスを愛していたプレッセナはこれを知って怒り、メリジェーヌに呪いをかけ、土曜日が来ると彼女の下半身は大蛇になってしまった。フランスを放浪していたメリジェーヌはある貴族に見初められ、妻となり子ももうけたが、夫に正体を知られてしまい、また生まれた子が異形である上に残忍な性格であったために離縁されてしまった。以来、その貴族の家に連なるものが死ぬときにはメリジェーヌの叫び声が聞こえるといわれている。

ラクチャンゴ(Racchango)  出身地:チベット
 チベットに生息する牛の魔物。血に染まったかのように赤い体をしており、額には悪魔の紋章が刻まれている。

ラタトスク(Ratatoskr)  出身地:北欧
 世界樹イグドラシルに住んでいるリス。イグドラシルの梢に住んでいるフレスベルグと、根元に住んでいるニーズホッグの間で交わされる会話を中継しており、この2匹の不仲を煽り立てている。その名は「走り回る出っ歯」という意味である。


珍獣
 各地の伝承に登場したり、現代動物学の定義に当てはまらない謎の生物達。伝承に登場するものは滑稽な逸話とともに紹介されることが多い。

アエロファンテ(Aelophante)  出身地:アフリカ
 耳が翼になっており、空を飛ぶことができる巨象。常に雌雄一つがいで行動しており、雄の方が雌よりも二回りほど大きいらしい。飛び立つところをカメラで撮影されたことがある。

イナバシロウサギ(Inaba-shiro-usagi)  出身地:日本
 因幡白兎。同名の民話に登場する白い兎。隠岐島から因幡国に渡るのにワニを騙したために、怒ったワニによって皮をはがれた。そこを通りがかった大国主命に助けられ、手当てを受けた。

オリバー君(Oliver-kun)  出身地:アフリカ
 人間とチンパンジーの合いの子とされる直立二足歩行する謎の獣人。染色体の数が人間の46個とチンパンジーの48個の間である47個であるため、首から47と書かれた札を下げている。1970年代には日本に来たこともあるらしい。

クダ(Kuda)  出身地:日本
 管。管狐とも呼ばれる。「管使い」と呼ばれる行者に使役される狐の妖怪。手足の端から人間に取り憑くこともあり、取り憑かれた人間は、あまり飲食をしなくなる代わりに生味噌を食べるようになるといわれる。

チュパカブラ(Chupakabra)  出身地:プエルトリコ?
 プエルトリコに出没したUMA(未確認生物)の一種。牛や羊などの家畜の生き血を吸うといわれており、出現がUFOの目撃情報とも重なっていることもあって、地球外の生命体ではないかとも考えられている。

ツチノコ(Tsuchi-no-ko)  出身地:日本
 槌の子。日本各地の山中で目撃されている蛇のような生き物。全体的なフォルムは蛇に似ているが、頭は丸く、寸胴で、尻尾が生えている。現在のところ、ツチノコの存在を証明するような明確な証拠は現れておらず、ツチノコの目撃情報が多い地方自治体ではツチノコの捕獲に賞金をかけているところもある。

マメダヌキ(Mame-danuki)  出身地:日本
 豆狸。人を化かすことを得意とする狸の妖怪。広さが8畳にも及ぶ巨大な陰嚢の持ち主であり、それを被って様々な姿に変身する。


妖獣
 神獣や聖獣の対極に位置する邪悪な獣。神々や英雄に仇なす存在であり、自然災害の象徴でもある。知能は低いが、強烈な破壊衝動に突き動かされて暴れることが多い。

アーヴァンク(Arvanche)  出身地:イギリス
 巨大なビーバーの姿をした魔物。川に渦を作り、それを覗き込んだ人間をもの凄い力で水中に引きずり込んでしまう。人間の乙女に弱く、乙女に誘われて陸に上がったところを牛の力で取り押さえられたという話が伝わっている。

アツユ(Atsuyu)  出身地:中国
 中国北方の少咸山に住む悪獣。姿は牛に似ており、体は赤く、人の頭と馬の脚をもっている。赤ん坊の泣き声に似た声をあげ、それに引き寄せられてきた人間を食うとされる。

アパオシャ(Apaosha)  出身地:ペルシャ
 旱魃をもたらすペルシャの悪獣。黒い馬の姿をしており、水を断つことでこの世の生命を滅ぼそうと企んでいる。雨と豊穣の神ティシュトリヤとは宿敵同士であり、宇宙の大洋で凄絶な戦いを繰り広げたが、結果はティシュトリヤの勝利に終わった。

カクエン(Kakuen)  出身地:中国
 中国に伝わる妖猿。雄しかおらず、人里に降りてきては人間の女性を攫ってきて子どもを産ませる。子を産んだ女性は、子供と一緒に里に帰される。カクエンと人間の間に生まれた子どもは見た目は人間と変わらず、普通に成長するといわれる。

カトブレパス(Catoblepas)  出身地:エジプト
 ローマのブリニウスの著書『博物誌』に書かれている怪物。ナイルの上流、エジプトとエチオピアの国境付近に住んでいる。頭は豚で、体はバッファローもしくはカバに似ている。動きは鈍重で、重い頭を地面すれすれに置いて屈みこんでいる。普段は閉じられているカトブレパスの瞳を見たものはその場で死んでしまうとされている。

カブラカン(Cabracan)  出身地:マヤ
 マヤの神話『ポポル・ヴフ』に登場する巨人ヴクブ・カキシュの次男。「山の壊し屋」と呼ばれるほどの怪力の持ち主で、双子の英雄神シュパランケとフンアフプーを苦しめたが、この双子に毒を盛られて殺された。

ガルム(Garum)  出身地:北欧
 北欧神話の死者の国ニヴルヘイムに通じる門の番をしている猛犬。その体は真っ黒だが、胸元だけは死者の血で赤く染められている。ラグナロクの時には鎖より解き放たれて神々と戦い、ティールと相討ちになる。

キャス・パルク(Cath Paluc)  出身地:ケルト
 ケルト神話で神々の母とされる地母神ダヌーが後世の伝承で魔女となったもの。青い顔をした老婆の姿をしており、猫のような鋭い爪と牙、瞳を持っている。キャス・パルクとはウェールズ地方での呼び名であり、スコットランドの高地地方ではカリアッハ・ベーラ、アイルランド北部ではキャリー・ベリーと呼ばれている。

ギュウキ(Gyuki)  出身地:日本
 牛鬼。頭が牛で、胴体は蜘蛛のような姿をしており、足と角がそれぞれ八本ずつ生えている。普段は海中に住んでいるが、時折海岸に現れて、磯を歩いている人間を襲って食うとされる。そのため、海岸にある漁村では牛鬼による難を避けるために祭りを行っていた。

(Kudan)  出身地:日本
 人の頭をした牛、あるいは牛の頭を持った人間の姿で描かれる妖怪。世の中に異変が起こるときに生まれて、その異変についての予言を行うが、予言したすぐ後に死んでしまう。

クラーケン(Kraken)  出身地:ギリシア
 ギリシア神話に登場する巨大な海の怪物。エチオピアの王妃カシオペアの傲慢に腹を立てた海神ポセイドンによってエチオピアに送り込まれた。クラーケンへの生贄として王女アンドロメダが捧げられたが、メデューサの首を取った英雄ペルセウスによってクラーケンは倒され、アンドロメダは救われた。

ジャージーデビル(Jersey Devil)  出身地:USA
 ニュージャージー州に出没する怪物。全身が黒い毛に覆われていて、馬のような頭と蹄をもち、背中の翼で空を飛ぶことができる。レオナベ族の伝承によると、ある母親が魔術の真似事をしたところ、子どもが突然ジャージーデビルに変身して、母親を含めた周囲の人間を食い殺して何処ともなく飛び去っていったという。

スイコ(Suiko)  出身地:日本
 水虎。姿形は河童に似ているが、頭の皿や甲羅はない。性格はかなり凶暴で、48匹の河童を子分に従えて、子どもを水に引きずり込み、その生き血や魂を食うとされる。

スキュラ(Skylla)  出身地:ギリシア
 ギリシア神話に登場する海の怪物。元は美しいニンフであったが、海神グラウコスに惚れられたため、彼に思いを寄せていた魔女のキルケによって、腰から下が六つの頭と十二の足を持つ怪物に変えられてしまった。絶望したスキュラは海に身を投げたが、怪物となってメッシーナ海峡に現れ、近づくものを食い殺すようになった。

スナッピー(Snappy)  出身地:オリジナル
 『デビルサマナー ソウルハッカーズ』において、パラダイムX内のVR美術館に登場したイルカの姿をした悪魔。主人公の妹、友子を誑かして彼女の魂をVR美術館内に留めていた。魔法を吸収する能力を持つが、限界を超えて吸収すると死んでしまう。

タマモ(Tamamo)  出身地:中国
 玉裳。元は金毛九尾の狐と呼ばれる狐の妖怪であり、絶世の美女に化けて殷の紂王の寵愛を受け、暴虐の限りを尽くした。その後、周やインドでも同じ事を行った後、平安時代末期に日本に渡って、鳥羽法皇の妃となり、「玉裳の前」の名を授かるが、陰陽師の安倍泰成に正体を暴かれ逃亡。朝廷軍の追討を受け、那須野原で三浦介義純に射殺された。その体は死して石と化したが、なお妖気を放ち、近づくものに害をなした。

チャグリン(Chagrin)  出身地:ヨーロッパ
 ヨーロッパ各地を放浪していたロマ族に伝わる悪霊。黄色い大きなハリネズミのような姿をしている。チャグリンを追いかけたものは、後に大きな災いが降りかかるとされている。

トウコツ(Toukotsu)  出身地:中国
 中国の西の辺境に住んでいる妖獣。虎に似た体に人の頭を持っており、猪のような長い牙と、長い尻尾を持っている。性格は尊大かつ頑固で、戦うときには退却することを知らずに死ぬまで戦う。知能は高く、狡猾であり、常に天下の平和を乱そうと考えている。

ヌエ(Nue)  出身地:日本
 鵺。猿の頭に狸の胴体、虎の手足と大蛇の尻尾を持つ妖怪。黒雲に乗って夜な夜な御所に現れていたが、源頼政によって退治された。

バイコーン(Bicorn)  出身地:イギリス
 額に二本の角を生やしたユニコーンの亜種。純潔を尊ぶユニコーンとは逆に、七つの大罪の一つである「姦淫」を象徴する悪獣である。

バグス(Bugs)  出身地:イギリス
 ウェールズ地方の伝承に登場するゴブリンの一種。親の言うことを聞かない子どもを食べてしまうとされる。熊のような姿をしていることから、バグベアとも呼ばれる。

ピアレイ(Peallaidh)  出身地:スコットランド
 河や湖、海岸等に住む半人半獣の妖精。孤独になると、人間を仲間にしようと旅人などを一晩中追い掛け回すことがある。

フェンリル(Fenrisulfur)  出身地:北欧
 ロキと、巨人族の女アングルボザの間に生まれた巨大な狼。始めは神々の下で育てられていたが、やがては太陽さえも飲み込んでしまうだろうと予言されたために、それを怖れた神々はドヴェルガーに作らせた魔法の紐グレイプニルでフェンリルを戒めた。グレイプニルによる戒めはラグナロクの訪れによって解き放たれ、フェンリルは父ロキとともに参戦し、最初にオーディンを飲み込むが、オーディンの息子ヴィーザルによって顎を引き裂かれ、心臓に剣を突き立てられて殺される。

フォービ(Porevit)  出身地:スラブ
 炎を吹き上げて野山や町を襲う火の精。原因不明の火事はフォービの仕業によるものだと考えられ、その怒りを静めるためには供物を捧げなければならないとされた。

ブラックウィドウ(Black Widow)  出身地:イギリス
 「黒い寡婦」という意味の名を持つ毒蜘蛛が化身した魔女。頭に黒い蜘蛛を戴いた女性や、そのものズバリ黒い蜘蛛として描かれる。

フン・ハウ(Hun Hau)  出身地:マヤ
 マヤの死の神アフ・パチの別名。フクロウの頭をした人間の姿をしており、電光の運び手である犬を供として引き連れている。

ベヒモス(Behemoth)  出身地:イスラエル
 海の怪獣リヴァイアサンと対になる陸の怪獣。巨大な体に凶悪な外見をしているが、性格は意外に温厚であるらしい。しかし、後世にはその異形ゆえに凶悪な悪魔とされ、最後の審判の後には神によって殺され、生き残った人々の食料にされるという。

ヘルハウンド(Hell Hound)  出身地:イギリス
 イギリスをはじめとするヨーロッパ各地の伝承に登場する魔犬。子牛ほどの大きさをしており、真っ黒な体で、口からは炎を吐くとされている。一匹であったり、群れをなしていたりするが、どちらにしても獲物に対しては容赦なく襲い掛かってくる。

マンガド(Mangado)  出身地:モンゴル
 モンゴルの英雄伝説に登場する多頭の怪獣。500個の頭と50本の角を持っていたが、雷神フヘディー・メルゲンとその息子達が天から降らせた血の雨と岩、雷の矢によって殺された。

マンティコア(Manticore)  出身地:エチオピア
 ローマのブリニウスの著書『博物誌』で紹介されている魔物。ライオンの胴体に醜い老人の顔、コウモリの羽に巨大な蠍の尻尾を持っている。知能は低いが獰猛であり、砂漠に恐怖と悪疫を振り撒く魔物とされる。

ムッシー(Mussy)  出身地:オリジナル
 『ペルソナ2 罰』のゲームセンター兼カジノ「ムー大陸」で目撃された悪魔。「ムー大陸」で出現したために“ムッシー”と呼ばれていた。実はアトラクション用の恐竜形をした人形を警備員が見間違えたものであったのだが、街の噂に上ったことによって現実化したものである。

ライジュウ(Raiju)  出身地:日本
 雷獣。雷雲とともに空を駆け巡り、落雷とともに地上に降りてくるとされる獣。犬ほどの大きさをしており、猫や鼬に似た姿であるとされるが、その姿については諸説があって一定しない。

ワイラ(Waira)  出身地:日本
 山奥に住む妖怪。巨大な牛もしくはサイのような体に、鉤爪を持ち、これで土を掘り返して小動物を食べるとされている。蝦蟇が年を経て霊力を得て化けた姿と考えられ、体色は雄が土色、雌は赤色をしているという。




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