フリックの事は夜までに探し出せばいい。今ここで時間を食ってもさして影響はないだろう。そう判断し、ビクトールは大きく頷き返した。
「良いぜ。その挑戦、受けてやるよ」
「ありがとうございます」
不敵な笑みを浮かべながら返した言葉に、マイクロトフは生真面目に頭を下げてきた。
そんなマイクロトフの態度に苦笑を浮かべたのとほぼ同時に、周りの空気がざわりと揺らいだ。
思っても居なかった展開に兵士達の瞳は輝き、先の展開を期待して見つめる眼差しに力が増す。
その痛い程の視線を受けて、ビクトールの口端は更に引き上がった。
「こりゃあ、下手な事は出来ねぇな――――」
クククッと喉の奥で笑いながら場の中央へと進み出て、マイクロトフと対峙する。
真っ直ぐに向けられたマイクロトフの瞳には、いつも以上に真剣な光が宿っていた。ただの手合わせだが、だからといって手も気も抜くつもりはないのだと、その瞳が物語っている。今から向かうのは敵兵士がひしめく戦場なのだと、言わんばかりに。
その瞳を目にして、ビクトールの気持ちも引き締まった。元より負けるつもりなど更々無いから、気を抜いていたわけではないが。
「――――行くぜ」
「いつでも」
軽く声を掛け合って、二人は力強く地を蹴った。










【手合わせ後へ】