【1】

『一緒に来いなんて言葉はなぁ、それなりの成果を出してから言うもんなんだよ』
『それなりの成果?』
『そう。まだ高校生のお前に言われてもなぁ。苦労を背負い込むだけなのは目に見えてるぜ。ぜってー頷けねぇよ』
『苦労させないくらい稼げるようになれば良いって事ッすか?』
『う〜〜ん。まぁ、そうだな。……いや、それじゃあ、ちっとお前の本気が見えねぇかなぁ』
『本気?』
『おう。お前が本当に俺を連れて行きたいと思ってるのどうかって事がよ』
『――――本気ッす』
『だから。その本気が見えねぇんだよ。今のお前の言葉には』
『――――どうしたら、分かってくれるンすか?』
『そうだなぁ………んじゃぁ、NBAでMVPを取ったら、お前が本気だって事を認めてやるよ』
『ソレを取れば、良いんすね?』
『おう』
『MVPを取ったら、一緒に来てくれるんすね?』
『取れたらな』
『約束します?』
『おう。約束してやるよ。お前がMVPを取れたら、お前について行ってやる。どこにでもな』
『分かりました。じゃあ、さっさとMVP取って来ます』
『うわっ……お前、馬鹿みてぇに強気だな……』
『出来ないことは言わないッす』
『ハイハイ。まぁ、せいぜいがんばんな』
『センパイも。その時は言い逃れするなよ』
『しねぇよ! ちゃーんとついて行ってやる。安心しろ』




 そんな言葉を交わしたのは、流川がアメリカに渡米する直前だった。
 彼が、高校三年生の頃だ。
 きっぱりと言いきっては居たが、本気で約束したわけではなかった。むしろ、アメリカに行ったら自分の事など忘れるだろうと思って告げた言葉だった。
 その予想通りに、最初は予想外にこまめに来ていたメールも電話も、時が経つにつれてその間隔が広がっていき、ついには全くなんの連絡も来なくなった。自分から連絡を取るつもりはないから、それっきり音信不通になっている。
 今では、お互いどこに住んでいるのかも分からない。

 彼はもう、自分との関係を過去のモノだと考えているだろう。

 自然と、そう思うようになっていた。
 彼の傍らには、彼に似合いの美女が陣取っているのだろうと。
 なんの疑いもなく。

 そう、思っていた。










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[20061122]