![ホームページの開設にあたって](logo211.gif)
このホームページは製作者の研究活動を中心に公表するために2009年に作成したものですが,これまで
更新を怠っていましたので,心新たに最近の状況をお伝えしたいと思います.製作者の
宮西正宜は2003年まで大阪大学に在籍し,2003年
10月より関西学院大学に移籍しましたが,2009年3月で定年退職しました.関西学院大学を退職する前に
数理科学研究センターが発足しましたので,
センターの客員研究員として研究を続けています.また,ほぼ同時期に,関西学院大学の大阪梅田キャンパス
の施設を用いたアフィン代数幾何学研究集会
を年2回(3月と9月)のペースで続けて,すでに12回を数えました.2014年度の第13回は3月の開催を取りやめ,
京都大学数理解析研究所で国際研究集会
2014Kyoto Workshop on Algebraic Varieties and Automorphism Groupsを7月に開催します.
(趣意書を参考にして下さい.).興味をおもちの方は是非ご参加ください.今後とも,
研究成果をできる範囲でこのページに上梓するつもりでいます.広くご意見を頂きますようにお願いいたします.
![具体的な研究分野](logo3.gif)
![ジャコビアン予想](logo4.gif)
複素アフィン空間の不分岐自己準同型射が自己同型射であるかというのが問題ですが,多項式環の言葉
でも言い換えられます.次元が1の場合は簡単に成立することが確かめられますが,2次元以上になると
途端に難しくなって未解決の問題です.3次元以上はさておいて,2次元の場合にもっぱら考えています.
世界でも多数の研究者が挑戦している問題です.難しさの根源は,結局,2変数以上の多項式の取り扱い
に決定的方法が見つかっていないところにあると思っています.この予想を複素アフィン空間から一般
の複素代数多様体に拡張した「一般化されたジャコビアン予想」というのが考えられます.すなわち,
複素代数多様体の不分岐自己準同型射は有限射になる.」というのが予想です.この予想には非常に
少数の反例が存在しますが,多くの場合には成立しています.非特異アフィン代数曲面がアフィン直線
のファイブレーションをもち,ただ1本の既約な重複ファイバーをもつとき,その代数曲面をアフィン
擬平面と呼びます.アフィン擬平面について一般化されたジャコビアン予想が成立するかどうかは
未解決の問題です.ジャコビアン予想は,代数多様体の構造や性質を判定する基準としても使えます.
![ユニポテント幾何](logo511.gif)
3次元以上の高次元代数多様体の構造を詳しく調べるのは容易なことではありません.なかでも,(対数的)小平次元が
ー∞の場合には,代数多様体の有理性問題が関わってきます.興味深いことですが,新しい考え方が必要になって
くるところです.一方,代数多様体の構造を調べるのに代数群Gの作用を使うことができます.従来は群Gとして
簡約代数群(reductive algebraic group) の作用を使うことが一般的でした.理由は,簡約代数群による不変部分環が
基礎体上有限生成になることから商多様体の構成ができ,商射を使って代数多様体を低次元のものに分解できる
からです.簡約代数群の例としては代数的トーラスがあります.このような幾何はトーリック幾何と呼ばれます.
しかし,代数的トーラスの代わりに加法群に代表されるユニポテント群の作用を考えることがどうしても必要に
なってきました.これまでユニポテント群の作用を避けていたのは,ヒルベルトの第14問題に反例が存在して
不変部分環が必ずしも基礎体上有限生成にならず,商射による分解をうまく使えなかったからです.加法群が
アフィン代数多様体に作用している場合には,その作用が多様体の座標環上の局所冪零な微分作用素として
言い換えることできます.加法群の作用は3次元の場合に有効に使えますから,最近,研究は大きく進展しています.
他にも,アフィン直線やアフィン平面によるファイブレーションの構造を持つ多様体の構造もかなり分ってきました.
このような手段を使って,小平次元が―∞の代数多様体の構造の研究を総称してユニポテント幾何と呼ぼうと
提唱しています.
![アフィン代数幾何学](logo6.gif)
アフィン空間の自己同型群の構造,ジャコビアン予想,または,代数群による商多様体の性質や特異点の配置
などを代数幾何学的手法で研究する分野は代数幾何学の分野の中でアフィン幾何と称されています.
(これはアメリカ数学会のMathematics Subject Classificationによる分類です.) しかし,アフィン
代数多様体に代表される非完備代数多様体の研究や,必ずしも局所環でない大域的な環の性質を
代数幾何学的手法で研究することなどを含めて,アフィン代数幾何学と呼称することが定着してきています.
フランスやロシアを中心に多数の若手研究者が育ってきており,毎年,世界のどこかで,国際的な研究集会が
開催されています.しかし,アフィンや射影的など代数多様体によって幾何学を分けることは避けるべきことと
思われます.従来,代数幾何学は近接の研究分野の手法を自由に吸収して発展してきました.もう一度,このような
研究の在り方に戻る動きがアフィン代数幾何学から生まれてくることを願うものです.