下蒲刈の風物史
下蒲刈で見られる風景の記録 
 島の風土に根付いた独特の伝統漁法や石碑・自然の保存

「去りし者は,日々に疎し(うとし)」という言葉があります。島に残るどんなに貴重なものでも,無くなってしまえば日に日に忘れ去られてしまいます 
       
イカ壺(つぼ)
平成23年9月7日撮影
竹と糸で作られ,周りに網をはった円筒形のかごの中央に「ツゲ」の枝を入れ,周りには直径約10cmほどの穴があります。ツゲの枝を海藻に見立て,産卵にきた「甲イカ」をつぼの中にさそいこむこの漁は,伝統的なイカ漁(イカかご漁)のしかけで『イカ壺(つぼ)』といわれています。地域によっては『イカかご』『イカ玉』『イカ巣』とも呼ばれています。かつては,1つぼで20匹以上も入っていたそうです。船に50つぼほど積み,沖合に沈ませ,漁をします。
ボラの墓
昭和4年3月15日建之
大地蔵の「尾の鼻」に,ボラ網を引いていた浜がありました。山の上には「取山の矢倉」があり,ボラ網漁の期間中は20〜30名の人がこの浜で働いてにぎわっていました。浜の山ぎわには「元小屋」といってご飯をたいたり,食事して休んだりする8坪ほどの小屋がありました。そして,その裏山にはボラの霊を慰める「ボラの墓」が建てられました。その墓の周りの清掃に出かけました。きちんと整備しなければ,すぐにでも流れてしまう危険性があり,早急に保存しなければならないでしょう。
石碑の周りは,赤松の倒木や枯れ葉でおおわれ,今はもう誰も拝む人はいないのでしょう…。当時の漁師さんたちは,海の恵みを感謝する心を忘れないよう石碑の表に「華蔵界(けぞうかい)」と彫り,祭ってきました。かつての大地蔵地区はボラ網漁が大変盛んに行われ,元小屋で煮炊きをして食事をしている間は,この石碑に毎日御神酒(おみき)を供えておがんでいたそうです。「華蔵界(けぞうかい)」というのは「蓮華蔵世界」,仏様の浄土のことで,漁師さんがとらえたボラたちが華蔵の宝利(浄土の立派なお寺)に向かってくれることを祈願したものです。この文字からも,大地蔵地区の当時の漁師さんたちの信仰心の厚さや心の優しさがうかがわれる貴重な石碑と言えるでしょう。しかしながら,その文化的な遺産も,知る人も少なくなり,朽ち果ててしまおうとしています。その石碑の正面は,南にある下黒島に向かって正確に建てられています。やはり,下黒島は,私の見たボラの大群が集まる貴重な入り江なのでしょう。下黒島に残るわずかな砂浜の調査やボラの墓の文化財としての保存が必要です。そう考えながら,お墓に御神酒を供え,かつてこの地区にあった歴史が忘れ去られないよう願い,拝みました。
野草  川や田の生き物    
       
「サフランモドキ」
別名「グランディフローラ,レインリリー」開花期6月〜9月。花言葉は,「純潔な愛,陽気,喜び,歓喜」。
ヒガンバナ科でタマスダレ属…帰化種で中央アメリカ,西インド原産。花は直径約6p。鮮やかな桃色。花披片は6個。雄しべ6個。雌しべ1個、柱頭は3〜5分岐。江戸時代に鑑賞用として導入され,サフランと呼ばれていたが,後にハーブの本物のサフランが導入されてから「サフランモドキ」と呼ばれるようになった。鱗茎は直径約2p。葉は叢生し,長さ15〜30p,幅6〜8o,やや多肉質。平成24年5月18日
「モクズガニ」
別名「「毛ガニ」甲幅は7-8cm、体重180gほどに成長する。川に住むカニの仲間では大型種。オスはメスに比べたくさん毛の生えた大きな鋏脚を持ち、歩脚の長さは長い。
       
キノコ
       
平成24年5月18日