ヤギの品種・体・習性・特徴 
ヤギは どんな動物?
1 ヤギの分類と品種 
◆ヤギは,偶蹄(ぐうてい)目に属し,ひづめが2つに分かれています。反芻亜目で胃袋が4つあります。一度食べた食べ物は口の中にはき出して再び口にもどしてかみ直します。これは,分解されにくい繊維(せんい)をより細かくする働きやだ液を多量に第1胃に送りこんで微生物が生育するのによい環境をつくるためです。ウシ科のヤギ属で,その7種の内1種がヤギに属します。
◆ヤギの品種は,現在
世界中で216種類あると言われ,中国が43種,パキスタン25種,インド20種,ネパール7種といわれています。 
2 「ヤギ」の名前の由来 
◆山羊(ヤギ)は,その姿が牛に似ていたことから「野牛(ヤギュウ)」が転訛(てんか)したという説と羊(ひつじ)の朝鮮音「jang(ヤング)」がyagi(ヤギ)に変化し,その音を漢字で「野牛」をあてたという説があるそうです。 
3 歴史及び来歴 
 
【パサン】
ヤギが人間に飼われはじめ,家畜化された時期は不明です。牛や豚と同じ紀元前7000年頃ではないかと推測され,中東や中央アジア辺りから家畜利用が始まったのではないかとされています。家畜としてさまざまな品種のヤギが飼育され,それらは「パサン」別名を(ノヤギ)を起源をもつというなどの説もありますが,野生と家畜種の区別が難しく,現在のヤギの野生原種は,ベゾアール,マーコールおよびアイベックスといわれています。また,「パサン」が家畜化されたという説とヤギ属他種との種間雑種に由来するという説があります。日本にはもともと野生のヤギは存在しておらず,江戸時代ごろから飼われてきたとされています。ヤギは交易のあった中国及び朝鮮半島を経て日本に渡来した説やフィリピン,台湾から沖縄を経て持ち込まれたと考えられていますが明らかではありません。日本ではヤギの数がしだいに減少し,昭和32(1957)年,ヤギ全体の飼養頭数は,66万9200頭(沖縄を除く)をピークにして,平成12年の農林水産省畜産統計では,わずか2万1134頭(沖縄を含む)となってしまいました。最近,日本の食料自給率,食の多様化,農業や畜産をする人の高齢化が進んできて農地が荒れるなど,「食の問題」が心配されていますが,ヤギを利用した除草などで見直されてつつあります。 
4 ヤギの主な品種とシバヤギ
ザーネン種
乳用として最も広く飼われているヤギです。
ヌビアン種  乳用としてアメリカで多く飼われていて,乳脂率が高いという特徴があります。 
ボア種  肉用として有名な品種です。 
ピグミーヤギ  ペット用等として飼われる小型のヤギです。
日本在来種のシバヤギは,家畜ヤギの日本在来品種で,長崎県西彼杵(にしそのぎ)半島の西海岸および五島(ごとう)列島で肉用として古くから飼育されていたヤギから,明治以降に品種改良を進めて作り出された小型のヤギです。
 
5 ヤギの身体の特徴
 
生理データ 心拍数…70〜80回/分,呼吸数…12〜15回/分,体温…平熱39.5℃
@胃  胃袋は4つあり,4番目の胃袋が消化液を出す普通の胃袋と同じものです。胃の中の微生物(原虫;プロトゾア)が繊維を食べて増殖し,それが4番目の胃でタンパクとして消化,吸収されます。微生物の働きによって,かれ葉でもエサにすることができます。胃袋は,腹の左側にあるので左側がふくらんでみえます。
妊娠(赤ちゃん)ができると右側の腹もふくらんできます。
 
A歯  ヤギ,ヒツジ,ウシの歯数は32本です。上あごには切歯がなく,かたくなった歯床板(ししょうばん)があります。乳歯の生えかわりを見ることで,おおよその年齢は知ることができます。見分け方は,前歯上あごには歯はないので,下あごを見ます。前歯下あごが乳歯だけなら1歳未満,中央の一対のみが永久歯だと1歳,2対が永久歯だと2歳,3対が永久歯なら3歳,4対(前歯は全部で4対です)とも永久歯なら4歳以上です。歯がすれていたり,歯と歯の間にすき間があると高齢(こうれい)ということになります。






式 
   乳切歯 乳犬歯 乳 前臼歯


ご 
0  0   3


ご 
4   0  3
ヤギの永久歯の歯式   切歯 犬歯  前臼歯 後臼歯 


ご  
 0 3 


ご 
3   1 3 
このようにヤギは,上の切歯(前歯)はなく,歯がぬけたように見えますが,歯ぐき(上あごの歯茎の部分が固くなった歯床板というものになっています。この歯ぐき(歯床板)は,「草をおさえてちぎる」のに適しています。ヤギの乳歯は,人間と同じように永久歯に生えかわりますが,永久歯は生えかわりません。7〜8歳になると,永久歯が抜けてくるので,その時は,固いエサは,小さくして与えるようにします。 
B目 ヤギの目は顔の横についていて,瞳孔(どうこう)の形は横長になっています。眼球(がんきゅう)が黄色の中に茶色の瞳孔(どうこう)があって,貯金箱の入り口のように見えます。明るい所では横に細くなり,暗くなると真ん丸くなります。明るいところで瞳(ひとみ)が横に長くなるのは,視野を広くして外敵に気づき,広い範囲が見渡せるためだとされ,ほぼ360度が見えます。
Cあごひげ シバヤギは,肉ぜん(あごからぶらさがっている肉のかたまり)はなく,あごひげはオス,メスどちらにもあります。 
D角(つの) 無角が優性。オス,メスともに角があります。(無角の場合もある)角は,少しわん曲していてメスの角は細長く,オスの角は太くて大きいのが特徴です。成長とともに,後ろへ伸びていきます。ヤギはよく首を横に振るので,ヤギの横に立つ時には注意します。   
E足の指 ヤギの足の指は,進化の過程で,中指(第3指)と薬指(第4指)が残りました。副蹄(ふくてい)と呼ばれ,人差し指と小指はその上についていて,ウシやヒツジも同じです。ヤギの2つに分かれたひづめは,中指と薬指です。ヤギは高い所が好きなので「登り台」を設置してあげます。ストレス発散と運動をすることで蹄(ひづめ)が伸びすぎるのを防ぎます。ひづめがのびすぎると,姿勢(しせい)が悪くなることや足に障害(しょうがい)が起きるので,定期的にのびすぎた蹄(ひづめ)は切ってあげるようにします。
Fヤギの蹄  ひずめの外側は固くて伸びが早く,中側が柔らかく,岩場や木にひずめを引っかけやすいようになっています。ヤギを地面や小屋,囲い(かこい)の中で飼っている場合にはひづめが伸びすぎて,感染(かんせん)が起きたり,快適(かいてき)に歩くことが難しくなります。 ひずめは,1ヶ月に約2mm伸びるので最低6ヶ月に1度は万能ばさみか剪定ばさみなどで削蹄(さくてい),つめ切りをしてきれいに取りのぞきます。メスの場合は2ヶ月に1回オスは体重が重いので1ヶ月に1回は削蹄,つめ切りをします。ひづめが変形(へんけい)している場合は,のびている方を先に切り,その高さに合わせて切り,つま先側をかかと側より少し多めにけずるようにします。妊娠したメスヤギは,分娩前(お産)の1ヶ月以内は,削蹄(さくてい)はしません。 
G耳・聴覚 ヤギの耳は,赤ちゃんの時たれていますが,成長すると立ってきます。耳の形は細長く,よく動かせます。聴覚に優れて,音にすごく敏感です。ヤギの耳は,小さな音も見のがさないよう長くて,ぴんと張っています。遠くで何かの音や声が聞こえただけで「ピクッ」と耳が動き,ピタッ!と体の動きが止まり,すぐに危険の存在を感知することができます。  
Hウンチ  ヤギは,歩きながらでもパラパラとまんまるのウンチを落としていきます。草食動物(ヤギ,ヒツジ,シカなど)は,ゆっくりウンチをしていると肉食動物にねらわれ,危険にさらされるからだと考えられています。ヤギの食べる草は,繊維分(せんいぶん)が多くふくまれているのでウンチの量は多いです。健康な時は,ころころと黒豆のようなウンチがでますが,時々くっついて出てくることがあります。これは病気か濃厚飼料のやりすぎです。こんな時は,濃厚飼料や青草(生の草)から,柿の葉やビワの葉などの木の葉,干草(ほしぐさ)を与えるようにします。ギのウンチは,家畜の中でも特に水分が少なく,堆肥(たいひ)は短期間で利用することができます。我が家では,ミカン栽培でヤギのウンチを堆肥として土壌改良(どじょうかいりょう),肥料として使い,良い効果がでています。 
Iオシッコ  ヤギの腎臓(かんぞう)が正常で,適切に機能している時は,オシッコがすんだ黄色をしていて健康です。
 
 
 
  
 
6 ヤギの性格 
   性格  ヤギは,それぞれの個体ごとに性格が違います。とてもおとなしいヤギがいる一方で,とてもやんちゃなヤギ,乱暴なヤギ,人に触られるのがあまり好きではないヤギがいます。シバヤギは,どちらかというと性格が温順で,好奇心や自立心が強く,なかなかガンコな性格です。産まれて早い時期から子ヤギを世話すると,良く人になつきます。

 
ヤギのオスは,メスに比べて臭いがきつく,力が強くて,気性も荒いようです。オスは,後ろ足で立ちあがり,「威嚇のポーズ」をとったり直立して強く頭をぶつけたりして,頭突きをします。これは,群れの中での順位を争う行動です。しかし,あまりヤギを叱りつけると,トラウマになって,かえって人になつかなくなる場合があります。子ヤギの時だけでなく,大人になってもスキンシップや言葉かけが大切です。 
ヤギは人のように言葉をしゃべることはできませんが,表情や鳴き声,しぐさで感情を表現し,飼養者とコミュニケーションを図ろうと様々なサインを送ってきます。信頼関係が強くなればなるほど表現力が高まります。その時,特定の部分や鳴き声だけに注目するのではなく,その時の状況や体の全体を観察して何を表現しているのか読み取るようにします。
 

さ 
 
ヤギをよく観察すると「ボディーランゲージ」がみられます。子ヤギに母ヤギがミルクを与えると,尾をパタパタと左右に振りながら喜んで飲みます。また,子ヤギがうれしい時体をくねらせたり,飛び跳ねたりします。大人になっても,うれしい時には,同じように尾をパタパタと振り明るい声で鳴きます。また,叱られると怖いと感じ体全体を固くすることがあります。体がかゆい時は,身体をすり寄せ甘えた声で鳴きます。好きなエサがそばにあると,「グウッ,グウッ」と,のどを鳴らし,てこでも動きません。 


ヤギは「メ〜」と鳴きます。ヒツジは「ベ〜」と鳴きます。ヤギの鳴き声を聞いていると,自然にヤギの気持ちが伝わってきます。例えば,「メェ−ッ!メェ−ッ!」と大きな声でたて続けに鳴く時は,何かが欲しいと要求している時や発情している時です。また,おこった時短く「メ!」と鳴きます。そばに来てほしいと思う時は「メェ〜ン,メェ〜ン」と細く長く鳴きます。さみしい時弱々しくか細い声で切なく「メヘェェェ…」と鳴きながら,上目づかいで見たり,飼養者の身体に寄りそおうとしてきます。うれしい,甘えたい時,甘えている時は「ンメェェェ−」とやわらかく鳴きます。
7 シバヤギの特徴
 



 
個体によって差はありますが,シバヤギの産まれた時の体重は約1,251gです。産まれてくる子ヤギの数によって生時体重は変わってきます。産まれてくる子ヤギの数が多いと生まれた時の体重も小さくなります。シバヤギは,成長すると体重がメスで18ヶ月で約19.3kg,2年目になると約29.2kgになります。オスは,18ヶ月で約29.3kg,2年目では約30kgになります。体高は,2年でメスが約54.1cmオスは約54.8cmです。子ヤギの内に人が育てるとなつきやすく最近では,愛玩動物(ペット)のミニヤギとして飼養する人もいます。シバヤギ,トカラヤギの体は強健で,粗食にも耐え,腰麻痺(ようまひ)に対する抵抗力(ていこうりょく)があるので飼育しやすく,寿命は,個体差や環境にもよりますが,約5〜10年とされています。   

シバヤギ・トカラヤギは,過酷な環境にも耐え,雑草や木の枝などでも命をつないでいくことができます。また,運動神経も良く,繁殖(はんしょく)能力が高い動物です。ヒツジが草食(グレイザー)なのに対して,ヤギは芽食(ブラウザー)であり,ヤギは草よりも低木の葉や芽を好んで食べます。そして,ヤギはひざを折り曲げて器用に低い草も食べることができます。草を食べる時は舌にからませるようにして食べるため,ある程度伸びた草しか食べることができません。なんでもよく食べるヤギと言われますが実は,かなり好き嫌いがあり,好きな草から,選んで食べます。草以外には,葉っぱ,新芽,若枝,かれ葉,樹皮を特に好んで食べます。草がなくなると枝を前足でふみたおして,葉や樹皮を食べたり,前足をあげて後ろ足立ちになり,高い枝も食べることができます。
ヤギは,水分の要求量が低く,あまり水を必要としません。一度水を飲むと数日間(約3日)は,水がなくても生存することができます。しかし,よく水をよごすので,毎日新しい水を与えるようにします。 
毛  は,あらくて,固い直毛です。毛の色は,白毛が多く,他に黒や褐色,茶色や黒色などがあり,雑種化が進んでいます。 


子ヤギは産まれて30分もすると自分で立ち上がり,母親のおっぱいを探してつんつんつついて母乳を飲みます。(シバヤギのメスは,初産でミルクの量は,約1リットル位)この時はまだ草を食べることはできず,ミルクを飲むだけで第1胃も発達していません。しかし,生後10日を過ぎたころから,母親のまねをして乾草(干し草)や枯れ葉,濃厚飼料(のうこうしりょう)に興味を示し,なめたり,引っぱったりして遊び,少しずつ食べ始めます。生後1カ月を過ぎたあたりから,乾草(干し草)や濃厚飼料を食べる量が増え,第1胃も発達して,生後3カ月になると,親ヤギと同じようなエサを食べるようになります。
※子ヤギの時に特に注意すること
は,はしゃいで母ヤギの周りを離れず追いかけたり飛び回ったりします。その時リードが首にからみ,まきついて窒息死することがあるので絶対に長くしないようにします。我が家では小屋に入れたら必ずリードをときます。外で放牧する時は,ロープが360度動けるようにしたり,ホースを通してからまないようにしたりすることが必要です。 

日本在来種であるシバヤギやトカラヤギは,早熟で季節を問わず,1年中繁殖することができます。性成熟年齢(動物の生殖器が発育し,繁殖ができる年齢)は,3〜4ヶ月と早く,5〜6ヶ月過ぎれば交配できます。メスが発情したら,妊娠の期間は,約150日(約5か月)で,1回に平均1〜2頭の赤ちゃんヤギ(三つ子もある)を産みます。分娩(ぶんべん)は,日中に多く,1年に2回出産する(我が家では,だいたい9月と1月の年2回)こともあります。メスは,副乳頭(ふくにゅうとう)を持ち,三つ子が生まれても同時に哺乳ができます。(我が家では,無理でしたから人工哺乳をしました)泌乳期間(ひにゅうきかん)は短く約90日位で子ヤギが飲みにきたら飲まないように角でつついて近づかせない行動をとります。シバヤギは乳量は少ないです。
◆オス
は,発情期になると活動的で元気になり,臭いがきつくなります。しきりにメスヤギを求めて追いかけ,お尻の臭いをかいで興奮(こうふん)して笑ったような表情をみせます(フレーメン)。発情した時には,柵やかべ,柱などへ頭突きをしてこわすので,できればオスヤギとメスヤギとの間に頑丈(じょうぶ)で高い柵(さく)か金網を設置するようにします。オスは,1年中交尾をすることができますが,メスが発情して鳴き始めると性的に活発になり,メスを追いかけたりするからです。メスの妊娠を確認する時は,交配の約3週間(21日間)後に,メスの発情がみられるかどうかを観察します。※季節繁殖…妊娠(にんしん)の期間が寒さの厳しい冬で,暖かくなるころに赤ちゃんを産んで,エサの豊富な季節で子育てをする特性です。   

ヤギは臆病(おくびょう)で,気が小さくて,さみしがりやです。新しい環境になれるまで多少時間がかかります。子ヤギを母親から離すと,さびしくなって2〜3日くらい鳴き続けます。我が家でも悲しい声で親を捜すので大変でした。母ヤギも同様ですが,子ヤギほどではありません。メスは,発情期になると落ち着きがなくなり,よく鳴くようになります。飼育する時には,飼育場所など,近所の人の理解や近隣への配慮が必要です。 
オスは,発情期になると体臭が臭くなります。この臭いは,皮脂腺から分泌される脂肪酸で他にも足におしっこをかけたりします。これは,メスヤギに発情をひき起こさせるフェロモンとしての働きがあります。メスと同じように,近所の人の理解や近隣への配慮が必要となります。獣医さんに去勢(きょせい)してもらったらオスは,臭いもなくなり,性格もおだやかになりました。でも力は強く,メスを追いかけたりします。
 
 
 
ヤギを外でつないでおく時に気をつけること
@屋外でヤギを2頭以上つないでおく場合は,絶対,互いのロープが触れ合わないように十分に離してつなぎ,互いのロープが首にからまないようにすること。
Aロープをつなぐ杭を打つ場合は,杭がぬけない長いものを使う。また,ヤギがその周りを回っても,ロープがからまないようクルクル回る道具を工夫すること。
B首輪につけるロープ,首に直接ロープを縛りつけないで,よりもどしの付いたナスカン(ホームセンターに売っている)を使用すること。
Cヤギが鳴いたら聞こえる範囲に人がいるようにし,2〜3時間おきには必ず,ヤギの安全(野犬はいないか,ロープはかんでいないか)を確認すること。
Dヤギを1匹だけ飼う場合,さみしくて飼い主を鳴いて呼んだり,ヤギが
発情する時期(3週間に2〜3日)になったりすると,普段より鳴き声が大きいので,住宅地ではあらかじめ断っておき,ご近所の方たちの理解をとっておく。
E毒草をみつけたら,あらかじめ刈っておき,放牧する。
 参考文献;@『新特産シリーズ ヤギ』萬田正治著 農文協A『ヤギの飼養管理マニュアル』独立行政法人 家畜改良センター発行B「ヤギってどんな動物?」「熱帯地域のおける山羊の飼養マニュアル」社団法人畜産技術協会から  引用;「ヤギ」ウィキペディア
8 動物とのふれあいや飼育活動を進めていくために  
飼育を通した学び
  ◆子どもたちにデジタル画像や動画を提示し,バーチャルな世界で生き物を考えさせる前に,教育で大切にしてほしいことがあります。それは,飼育や栽培を通した学びです。学校では,いろいろな生き物や小動物を飼育しています。
飼育は,生き物に水やりやエサなどを与える当番活動ではなく,言葉が通じない生き物たちが気持ち良く暮らせるように,生き物の気持ちを考えながら接する学びと考えます。例えば,子どもたちが飼育小屋の掃除や水やエサを与えながら話しかけたり,優しく触れたりと,自分から生き物に働きかけていく。すると…,生き物は,気持ちよさそうな反応をみせてくれる。それを見て,「うれしい」と思ったり,「かわいい」と感じたりする中で,自然に愛情がわいてくる。そして,生き物に興味を持ち,表情やしぐさ等を観察し,「どうしたら喜ぶかな?何か変わったことはないかな?」と相手の気持ちを考え,気づかうようになる。生き物とふれあうことで,体の温かさや心臓の鼓動,触れた感触など,今,この瞬間にも生きている生命を実感していきます。そして,飼養する責任をもつようになります。
   ◆ヤギの飼うということは,飼養者がヤギの習性や行動を知り,ヤギの行動を理解し,表情や鳴き声から何を要求しているのか日常の観察を通して,よく観察する習慣を身につけていくことが大切だと思います。動物は,人と同じ言葉をしゃべることはできませんが,表情や鳴き声,しぐさで豊かな感情を表現し,飼養者とコミュニケーションをはかることができます。
◆動物を飼育することは,飼育をする意味やボディーランゲージ(動物の心情),社会性,生理や病気,習性(本能)への理解,衛生面,動物との交流方法などの知識・理解が必要です。そのために,獣医師さんとの助けや協力,連携が必要です。
◆「動物愛護法」において,動物の飼養の基準で「教育施設等の管理者は飼育に際して,専門家などの指導のもとに飼うこと。」と示されています。 
◆シバヤギやトカラヤギは人なつこくて,身体が小さく,ヤギの目線と同じ高さで子ども達は接することができます。
シバヤギの飼育を「親しみやすく,体が小さくて取り扱いがしやすい,草などのエサで飼える」の理由から小学校の現場で実践してきました。そして,ヤギ
との出会いから,子どもたちに笑顔がもどってきました。学校へ来にくかった児童が「母さん,ヤギに会いに行ってくるね」と,学校に行くのが楽しくなり,世話をしている内に,自然に学校へと戻れるようになってきた子どもたちもいて,心の癒し効果もみられました。
 ヤギの情報について,間違いやアドバイス,付け加えがありましたらご指導ご指摘いただけたら幸いです。