ケータイによる電子メール急増とその影響

1.「ケータイによる電子メール」急増の実態

 ケータイによる電子メール利用者が急増している。野村総合研究所が全国一五〜五九歳の男女を対象に二〇〇〇年三月におこなった調査(『第7回情報通信利用者動向調査』)によれば、「自宅のPCではインターネットを利用しないが、ケータイを用いてインターネットを利用する人」が五・七%となっているという(ちなみに、自宅のPCでのインターネット利用者は一六・七%である)。その多くは、ケータイでのみインターネットを利用する人々であろう(1)。
 この数字は驚くほど多い。なぜなら、ケータイ単体で電子メールを送ったり、専用ウェブサイトを見ることのできるサービスは、一九九九年二月下旬、NTTドコモグループのiモード発売から始まったからだ。その後、他の事業者も同種のサービスを開始し、わずか一年で、ケータイ単体でインターネット利用できるサービスの契約数は七四九・九万台(『平成12年度版通信白書』,郵政省編, 2000年)、総ケータイ契約数に占める割合は一三%を越している。ならば、自宅のPCでの電子メール利用者数をケータイによる電子メール利用者数が追い越すことは、そう遠い将来のことではないように思う。
 さて、「ケータイによる電子メール」と一口に言うが、類似サービスも含め多少複雑なので、まずは、本稿の分析対象とする「ケータイによる電子メール」を明確にしておこう。
1.ショートメッセージ・・ケータイ事業者のホストコンピュータ経由で文字メッセージ交換をおこなうこと。同じ事業者に加入しているケータイ同士のみ利用可能なサービスと、他事業者のケータイとの送受信も可能なサービスがある。
2.ケータイを用いた電子メール・・ケータイ電話を用いて、インターネットを経由した電子メール交換をおこなうこと。現状では次の3パターンに区分できる。
 2−1.ケータイ・電子メール・・ケータイ単体でおこなう電子メール。
 2−2.ケータイ・インターネット・・ケータイ単体での電子メールの送受信やウェブ閲覧。iモード(NTTドコモ)、EZWeb/EZaccess(ツーカー、au)、J-スカイ(Jフォン)など。
 2−3.モバイル・インターネット・・ケータイに別の機器を接続し、インターネット利用すること。ドコモのポケットボードなどメール送受信にのみ特化した機器ではメール送受信のみしかできないが、ノートPCなどを利用すれば、外出先でもあらゆるインターネットサービスを利用できる
 本稿が考察対象とする「ケータイによる電子メール」は、「2−2 ケータイ・インターネット」を中心に、「2−1 ケータイ・電子メール」を含むものとし、両者をあわせて、「ケータイメール」と呼ぶことにする。
 このケータイメールは、異なる論理で展開してきた二系統のサービスの交差点にあると考えられる。一方は、ページャーからショートメッセージに至る系統であり、もう一方は言うまでもなくインターネットの利用形態の一つ、電子メールである。
 まずは、ページャーからショートメッセージへの系統から検討しよう。

2.ページャーからショートメッセージ、そしてケータイメールへ


 この系統の主人公は若年層だ。
 九〇年代半ばに女子高校生を中心に高い普及率を示したページャーは、ケータイの普及によって加入数を減らした。ただし、それは一方的にメッセージを入れ、相手からの電話連絡を待たなければならないページャーより、直接会話できるケータイの方が便利だったから「ではない」。文字送受信にはケータイの方が便利であり、その上会話もできるためだ。ページャーの場合、メッセージを受け取ることはできても、相手に送るためには自宅の電話や公衆電話が必要である。しかし、ケータイのショートメッセージであれば、受け取ったメッセージにその場でそのまま返事を送ることができる。「ケータイで話せば高くつく、しかし、ショートメッセージ交換ならお小遣いの節約になる。」若年層の懐事情に合っていることもあり、ページャー利用者はメッセージ交換においてより便利なショートメッセージ利用者になったのだ。
 実際、先の野村総合研究所の調査でも、全体でのショートメール利用率は二八・五%だが、一〇代においては七〇%を超えている。では、その利用はどのようなものなのであろうか。
 一番多いのは、電話で話すほどの急を要さない用件だ。待ち合わせの場所や時間を決めたり、相手の予定を尋ねたり。なかには、母親から「今日は何時にかえるの?」とメッセージが入る若者もいる。調べてみるとわかるのは、「意外なことに」何らかの用件があってショートメッセージを交換するケースが多いことだ。
 もちろん、かつてのページャーのように、取り立てて用件のないメッセージも多い。ただ、「おはよう」「おやすみ」といった短い挨拶より、文字数にゆとりがあるだけ、「わざわざ言うほどではない。けれどもちょっと知らせたい、聞いてほしい話題」が中心だ。
 「駅に出かけたところ、警官がたくさんいる。なぜだろう。」「街を歩いていたら、芸能人にあった。かわいかった。」「交通事故を目撃。」
 こういったイマココ目撃情報は、家に戻ってから家族にしてもよい。その晩、長電話の途中で友達に聞かせることもあるだろう。後日、友達に話すことも多い。なにより、誰かと一緒にいるのなら、その場で必ず話題となることだ。
 しかし、一人で体験した場合も、できれば「イマココの気持ち」を誰かと分かち合いたい。とはいえ、その程度のことを電話して伝えるのは、相手に迷惑だ。相手にだって事情があるはず。ならば、ショートメッセージだ。どんな状況であっても、ちらっと読んで気持ちを共有してくれる。時にはすぐに返事をくれる。あるいは、後日同じような「イマココの気持ち」を送ってきてくれる。
 もっとも、若年層すべてが、このような「イマココの気持ち」を交換しているわけではない。ケータイを持っていても通話利用が中心で、「メール嫌いな人」も案外多い。つまり、親しい友人であれば誰にでも「イマココの気持ち」を送るのではない。むしろ、「イマココの気持ち」を交換する相手は、こちらから送った「イマココの気持ち」に返事をくれ、同じように「イマココの気持ち」を送ってくる相手だ。「メール好き」であれば、必ずしも日常的に会う相手でなくてもよい。
 ページャーが全盛期の頃、ページャーを通じてのみつきあう友達関係が「ベル友」という言葉で注目された。しかし、インタビュー調査をすると、同じように若者の口からよく出てきたのは、「中友(ちゅうとも=中学の時の友達)」「ジモトモ(地元の友達)」といった関係性だ。ページャー以前なら、違う学校に進むとなかなかつきあいを維持できなかった。しかし、「日常的にはページャー交換で、時には顔をあわせて」といったつきあいなら、違う学校に通っていても大丈夫だ。ページャーは、今は違う環境にいる友達との関係性維持に貢献していたのである。
 今日の若年層にも同様に、ショートメッセージを通じてのみつきあう友達が見られる。しかし、より多いのは、ショートメッセージ「でも」つきあう友達であり、ショートメッセージで「活性化した」友達関係だ。対面や電話のような同期的メディアとはまた別の位相の友達関係が、ショートメッセージにより維持されているのである。
 ショートメールでは対面とは少し異なる関係性が築かれているもう一つの原因は、ショートメッセージ交換のためには、基本的に同じ事業者のケータイを持っている必要があるところにある。かつては、ショートメッセージは同じ事業者のケータイでのみ交換可能であった。その後、異なる事業者間でのショートメッセージサービスが始まったが、それぞれの事業者のホストコンピュータに電話をかける必要があるなど手間がかかる。つまり、親しい友達であっても、違う事業者のケータイをもっていると、ショートメッセージ交換は「面倒」なのだ。
 では、このようなショートメッセージ利用者がケータイメール利用者に変わるきっかけはなんだろう。
 一つの契機は、端末の買い換えである。一昨年のデータではあるが、三年以上ケータイを利用している人だと半数が二回以上の端末買い換え経験を、一年以上二年未満のケータイ利用者でも四六・一%の人が一回以上の端末買い換え経験を持つという(『平成11年度版通信白書』,郵政省編 , 1999年 )。つまり、二年程度で新しい端末を手にする人が多いと考えられるのだ。若年層なら、高校・大学入学といったライフステージ上の変化が買い換えのきっかけとなる。「これを機会に新しい端末、新しいサービス」というわけだ。
 もちろん、そのような消極的な採用ばかりではない。ケータイメールにすれば、違う事業者のケータイを持つ友達とのメール交換もおこないやすい。PCからの電子メールも送受信できる。また、同じ文字送受信なら、長いメールも可能なケータイメールの方が便利である。現状でのショートメッセージの最大の弱点は文字数であろう。「少し長めのメッセージは二回に分けて送らなければいけない。」「ケータイメールを受信すると途中で切れてしまう。」周りにケータイメールの利用者が現れ、ケータイメールの便利さを目の当たりにすると、ショートメッセージの利用者はケータイメール採用を考える。「友達が持っているから」という理由の背景には、こんな事情がある。

 さて、このショートメッセージ利用は一〇代と二〇代前半が中心で、それより上の世代にはあまり広まらなかった。なぜなら、オフィスでほぼ同時期に電子メールが普及したためだ。ショートメッセージは、送受信できる文字数が限られているだけでなく、当初は同じ事業者に加入している必要があった。電子メールと比べると、汎用性がなく、ビジネスには不向きなのだ。また、ページャーを使った経験のない人にとっては、親指だけでメッセージを入力することもかえって「面倒」である。むしろ、PCを使ってキーボード入力できる電子メールの方が使いやすいというわけだ。

3.電子メールのスネイルメール化・・電子メールからケータイメールへ


 しかし、ケータイメールはショートメッセージと異なり、二〇代後半以降にも広まりつつある。情報通信総合研究所が二〇〇〇年三月にiモード利用者を対象に行った調査(『第1回MIN iモード・ユーザー・アンケート「iモード利用 に関するアンケート」』)によると、iモード購入理由について、二四歳以下と比べ二五歳以上で多いのは、「常時メール受信可」「常時メール受信可」である(図参照)。もちろん、これは単に年齢の違いが原因ではない。いつでもどこでも「電子メール」が交換できるケータイメールを、ショートメールは採用しなかった、ショートメール利用者と比べると年齢層が上の、PCでのインターネット利用者が採用したためである。
 PCを用いた電子メールとケータイメールの一番の違いは、手軽さだ。ケータイ単体でメールの送受信が可能なので、外出先のちょっとした空き時間が有効活用できる。いやむしろ、電車を待つ時間、電車に乗っている時間、人を待っている時間などこそが、メールの時間となるようだ。重くてかさばるPCを持ち歩くことには抵抗があって、モバイル・インターネットを利用していなかった人の中にも、自分あてのメールをすべてケータイに転送設定する人が出てきた。
 ケータイなら自分あてに重要なメールが届いていないか、いつでもどこでも確認できる。その上で、すぐに返事が必要なものは簡単な返事を出すこともできる。込み入った用件や全文を読む必要があるメールは、後でPCで再確認し返事を出す。もちろん、思いついたことを思いついたときに発信することも可能だ。ケータイで話す場合と比較すると、電子メールの最大のメリットはこちらの都合にあわせてやりとりができるところにある。しかし、直接会話する電話と比べると、どうしてもタイムラグが生じる。ケータイメールだと電子メールのメリットは保たれた上で、少なくとも「重要な連絡をなるべく早く入手する」ことと「好きなときに発信する」ことが可能であるのだ。
 先に、ショートメッセージがビジネスユーザーに広まらなかった一因として、文字数の問題を挙げた。確かに文字数が限られているため、PCを用いた場合と比べると、不便な場合もある。しかし、その場合でも「少しでも早く」届いたメールの概要がわかるのは重要だ。さらには、ケータイメールを利用してみて初めてわかったこととしてしばしば聞くのが、「ケータイメールで発信できないほど込み入った用件はそれほどない」ことである。いや、そもそも外出先なので、長い文章を打ち込むことは無理である。最初は工夫して短い返答を心がけているうちに、効率的な返事が可能となるのだ。こうして、PCに慣れた人にとってネックとなる親指一本での文字入力問題も解決される。実際、PC非所有者の方がPC所有者より一回のケータイメール文字数が長目だとの「逆転現象」も見られるようだ(『gooリサーチ結果 i-mode利用状況についての調査結果1』)。ケータイメールを採用したPC利用者は、ケータイメールの不便さと比べると、まとまった時間のとれるオフィスで連絡業務から解放されるメリットの方が大きいと言う。もちろん、このメリットを享受するには、「四六時中メールチェック」という「負担」を負う必要があるのだが。
 「少しでも早く」そして、「返事は短く」これが、PC併用ケータイメール利用者の特徴だ。このような利用者が増えれば増えるほど、電子メール一般も「より早く」「より短く」なるであろう。「スネイルメール」・・電子メールとの比較で郵便につけられたあだ名が、今度はPCからの電子メールのあだ名となるのかもしれない。

4.ケータイ・リテラシー


 前節では、PCでの電子メール利用者がケータイメールを採用することによって起こりつつある変化について触れた。ここでもう一度、若年層の話に戻ろう。ショートメッセージ利用者がケータイメールを採用することで、その利用形態に何らかの変化が生じているのであろうか。
 とはいえ、2節で紹介したような友人関係の変化については、これからの観察が必要である。むしろここでは、「電子メールの論理」がケータイメールにどのように影響を及ぼしうるのか、すでに問題となっている事例を紹介しておこう。それは、チェーンメール、いたずらメールとウイルスだ。
 チェーンメール自体はショートメッセージでもしばしば広まっている。「三人に送らないと不幸になる」といった不幸の手紙から、駄洒落や小ネタ、ネズミ講への誘い、「明日どこそこにタレントが来る」といった偽情報まで種類も多い。
 しかし、ケータイメールでは当然チェーンメールも「進化」している。たとえば、ウェブ閲覧が可能であるがゆえに、「おもしろく、誰もが興味を持つようなホームページ――たとえば、占いや画像――のアドレス」の転送が重ねられている。「三人に送ろう」といったわかりやすいチェーンメールではなく、友達から送られてきたサイト情報を見て、別の友達も興味を持つかもしれない、と転送していると、結果的にチェーンメールとなるだけにやっかいだ。
 あるいは、Phone to機能(画面から簡単な操作で電話をかけることができる機能)を利用した「いたずらメール」――「勇気のある人はこれを押してください ○○」とのメール。○○を押すと特定の番号にかかる――といったメールも広まっており、また、スペインではメールにより転送されるケータイを対象にしたコンピュータウイルスが登場したとも伝えられている(『携帯電話をターゲットにした初のウイルスが登場』。)
 つまり、これまで電子メールで起こっていたような「事件」が、実際にケータイメールでも起こってきているのだ。以前、筆者はショートメッセージでのチェーンメール流行について、ケータイ・リテラシーの必要性を提案した(松田美佐,「情報社会のうわさといかにつきあうか」「スクランブル」『中央公論』1999年8月号)。同様のことが非PCユーザーの多い若年層のケータイメール利用においてもあてはまると考える。以下で、簡単にその趣旨を述べることにしよう。
 電子メールには「一切のチェーンメールの禁止」という「ネチケット(ネットワーク上のエチケット)が存在しており、それがうわさや偽情報の拡大防止にも役立っている。これは、メールサーバーや通信回線の容量といったネットワーク資源の希少性や管理者の労力を鑑み、内容を問わず一切のチェーンメールを禁ずるルールである。初心者がチェーンメールと気づかずに知り合いにメールを転送したり、メーリングリストに投稿したりした場合には、「守るべきネチケット」としてこのルールがその必要性とともに披露され、遵守が求められる。小中学校から市民講座まで、インターネット教育の場では、パソコン操作法と並んで教えられることも多い。実際、このルールをあらかじめ知っているユーザーは、いくら相手のためになる情報、あるいはおもしろい話であっても、チェーンメール的なメールは転送しない傾向があるという。ところが、インターネットよりはるかに多くの人が利用しているケータイに関しては、利用すべきではない場所や状況に関する論議と対策があるだけで、具体的な利用法はすべて利用者に任されている。だが、今日、ケータイは「電話」=音声による特定の個人とのメッセージ交換手段から、不特定多数にもつながりうるマルチメディア情報端末へと変化しつつある。
 ならば、たとえば、「三人に転送してください」「できるだけ多くの人に知らせて」といったメッセージつきのものはチェーンメールとなる恐れがあるので転送を控える・・というルールを制定してみてはいかがなものか。同時に、本当に各人が三人ずつに転送すれば、三の累乗で受信者が増えるというチェーンメールの「仕組み」も学ぶ。ここで重要なのは、単に「ルール」を制定することではない。むしろ、ケータイという身近なメディアとのつきあい方を通じて、主体的に情報やメディアと関わっていく姿勢を支援する「リテラシー」的な考え方の導入である。
 もっとも、メール発信のたびに課金するシステムを採っているケータイ事業者は乗り気ではないだろうし、ルール制定はケータイを用いたコミュニケーションの豊潤さを損なう可能性をはらんでいることは否定できないのではあるが。

 

5.今後の可能性


 さて、今後の展開として興味があるのは、果たして、ケータイメールはPC自体の利用やPCを通じたインターネット利用のきっかけとなるのか、それとも、それらの採用者を減らすことにつながるのか、という問題だ。
 最近しばしば新聞や雑誌などで見かけるのがデジタル・デバイドという言葉である。景気回復の牽引材として期待されている「IT革命」は、一方では情報技術を利用できる人とできない人との間の情報格差(デジタル・デバイド)を拡大させるという。そして、同じくしばしば語られるのが、ケータイが非PCユーザーのインターネット利用を拡大することでこの「格差」を解消する方向に働く、という議論だ。
 もちろん、その方向性は期待したい。しかし、逆の方向性に進むことも充分考えられるように思う。
 PCインターネット利用者の利用状況に関する調査結果をいくつか検討すると、主流は「まずは、電子メールの送受信、そして私的な趣味情報を求めてのウェブ閲覧」だ。友人とメールを交換したいから、マスメディアにはあまり取り上げられない趣味に関する情報を得たいから、インターネットを始めるのである。だとすると、ケータイでのインターネットで「充分」かもしれない。少なくとも、わざわざ高価なPCを購入し、その操作を覚える必要性は低くなる。実際、「iモードで充分なので、PCはいらない」との声を耳にすることがあるが、ケータイによってPC利用を開始する動機がそがれてしまう可能性がかなりあるように思うのだ。
 しかし、現状ではウェブの大半はPCでないと利用できない。ケータイ専用のウェブでも充分情報を入手できるかもしれないが、PCを通じてウェブにアクセスすればより多様な情報を入手できる。あるいは、インターネットを利用したいがために、苦労してPCの操作を覚えることで、PC上で他のソフトを利用することも容易になる。多くの道具がそうであるように、メディアには「ある程度使ってみて初めてわかる便利さ」がある。
 先に紹介した野村総合研究所の調査は、世帯収入が全体的に低迷している中で、パソコン所有世帯の年間収入が上昇に転じたのに対し、パソコン非所有世帯の減少傾向がより強くなっているとも報告している。つまり、「ケータイがデジタル・デバイドを解消する」とはいえ、PCまで含めると、かえって収入による情報格差が広がる可能性が見えるのだ。
 では、本当に「ケータイがデジタル・デバイドを解消する」にはどうすればよいのか。それは、ケータイによって敷居の低くなったインターネットの「便利さ」「おもしろさ」を武器に、ケータイでもPCでもインターネットを利用しようと思う人を増やすことであろう。その環境を整備するためにも「ケータイで充分」では困るのだ。

【注】
(1)「自宅のPCではインターネットを利用しないが、ケータイを用いてインターネットを利用する人」には、他の可能性として、ケータイにPDAを接続したり、自宅以外でのみケータイをPCに接続したりする人が考えられる。

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