Akiba'STrip+



「このバカ!さっさと…」
「舞ぁ那っ」
「愛情表現です」

−ダブプリ姉妹の会話
 


侍道のエンジンを使用した現代版侍道とも言えるアクワイアのゲーム。吸血鬼モノとしては、珠玉の出来。洋物吸血鬼をスライドさせた安易なモノではなく、日本古来の吸血鬼として「カゲヤシ」を設定したこと自体が賞賛に値する。ゾンビとバンパイアは、 もはや説明不要の存在であり、それに頼りきる設定は多い。ただ一言「やつらはゾンビなんだぜ」「奴らは吸血鬼なんだ」と言うだけで、設定説明が 済んでしまうにもかかわらず、あえてカゲヤシという別個の存在にしつつ、吸血鬼のジレンマを、うまく日本のアニメ的なライトな設定へ昇華させている。 そしてその背景設定も深い。

吸血鬼と狼男をそのままを利用しながらも、何の説明も補追もないオペレーションダークネスに、爪の垢でも飲ませたいところだ。 表に出てこないからこそ、しっかりとした設定が必要であり、縁の下の土台がしっかりしていないと、ちゃんとした家は建たないモノだ。


タイトルの通り、アキバの町並みをそのままマップにしてあり、実店舗の実名使用の許可を得て おり、ローディング画面に広告が入る提携ぶり。私は、田舎モノなので数えるほどしかアキバに行ったことはないが、その私でも、あーこの路地あったあった。ここにこの店あった。と思い出せるので、通っている人はなおのことだろう(それが故に、粗も見えるかもしれないが)。 しかし、Docomoが協力しなかったのは分かるが、ソフマップが協力しなかったのは不思議だ(作中では、ソフマックになっている)。

それはともかく発売当初は、アキバを舞台にして店とタイアップし、脱衣格闘というノリから、オタクに媚びただけのゲームと思っていたのだが、それはもう「すんませんでした」としか言いようがない

ストーリー設定、ストーリーライン、 脚本力と、どれを取っても高レベルであり、PSPを買って良かったと思えるゲームだと私は思う。実際にPSPを買って良かったと思えるのは、ときメモ4、Akiba'Strip、ととものfinalぐらいだろうか。ただ、私は+から入ったので、無印版では至らないところがあるのかもしれない。

・脚本の上手さと疾走感

地の文、情景描写や心理描写はほぼ皆無であり、基本会話だけで進む(時折、相手の心の声が飛び込んでくるのが問題だが)。と言うのも、没入感を高めており、高く評価する。セリフ回しで相手がどう感じているかを伝えられるのは立派(ワタシ的には、それが基準点なのだが)。 逐一「学徒補欠隊は教室へ入った」とか書いてしまうチーム村正は参考にするべきだろう。基本脚本とは、会話だけで成り立たせるためにあるのだ。

その没入感と適度な戦闘という障壁、高いストーリー力と相まって、ストーリーの疾走感は高い。特に後半の差し足はすばらしく、日本のゲームでは後半になるほど、手間をかけさせるべきだ。と言う風潮(ラストダンジョンは広大で難敵ばかりでエンカウント率が高いとか)があるが、ストーリー性を重視するならば、盛り上がり、興奮が冷めないうちに駆け抜ける方がいい。

ただ、残念なのは、三つどもえでありながらイベントは固定なので展開力に乏しい。選択によって方向性は変わるモノの、それは結局のところ、最後の最後でどの勢力の友好値に加算するか。でしかなく、展開と言うには心許ない。 イベント的にはリニアの一本道。言うなれば「私鉄、市営地下鉄、JR、どれで次の駅に行くかの違い」で、どのルートでも結局は同じ駅、同じ場所に着いて、同じ展開になり、次の駅という次のイベントを目指すことになる。 で、最後に付くのが、JRの駅なのか、私鉄の駅なのか、地下鉄の駅なのかと言うエンド分岐になると。

選択肢も、基本的に勢力への加算でしかないので、最終的なルート分岐につながるとはいえ、展開に寄与しているとは言えないのが残念(小さくは関与している、とあるイベントの選択肢でエンディングの会話が微妙に変わってきたりする)。

ただこれは、ハード的な問題が大きく関与していると思う。PSPというのもあるし、マップを同一にすることで容量も稼げるだろうし。侍道シリーズでは、同じイベントを逆の立場で見るとか、別イベントが発生する(侍道4では、荷担する勢力でカジノへの襲撃、防衛と変わる。やることは斬るだけだが)とかやっていたので、ハードスペックの限界と思いたい。

反面、選択肢の見えにくさ(物理的にではなく、分岐路としての効力)は、少々問題で、情報皆無でベストルートは、ほぼ無理だろう。まぁ、侍道からのクセとも言えるし(例えば侍道4では、チュートリアルバトルの三番目で、背景にとけ込みがちな砲手を速攻で倒すと言う「知るかボケ」みたいなのがベストルート 入り口だったりする)、ピンポイントを渡り続けたからのベストルートとも言えるが、他者からの情報が前提となるのはどうなんだろうか?。

このAkiba'Stripでは、ネタ選択肢とマジ選択肢の配合が絶妙であるがゆえに、ルート選択としての基準をかなり難解にしている。と思う。私がヘボなだけかも知れないが。

・残念なシステムはアクワイアの限界なのか

侍道エンジンらしく、エンディングはそれぞれの勢力に併せて分岐する。ただ、ライトよりになっているので、侍道2で言うなら、幕府勢力(ヤクザかなぁ?)に当たるNIROに大儀がないので、 共存を夢見るヒロイン瑠衣を振り切ってNIROに行くのは心が痛い。まぁ、カゲヤシにも大儀はないのだが、 虐げられた少数種と、自分の過ちを繰り返そうとする娘を見る母などが免罪符になっている。

繰り返しになるが、 脚本やセリフ回し、選択肢の分岐も非常に良くできており、ゲームとストーリーの融合もかなり高い。やっていて面白いし、引きこまれるストーリーだし、脚本力である。これだけでも、カルト作品に入れて間違いないのだが、システム、ひいては侍道エンジンの粗が前面に出ているのがそれを躊躇させる。

侍道シリーズの共通の欠点である、壊れるカメラワークと、歪な追尾能力が、最悪な形で表面化している。PS2コントローラーならば、カメラは右スティックで動かせるのだが、PSPでは十字キー、完全にアナログスティックから手を離す必要があり、アクションゲームで移動キーから手を離すのがどれだけ致命的かは言わずもがな。

侍道2以上に乱戦が主体なのだが、歪な追尾性能と脆弱な自動ターゲッティング力のせいで、意図しない敵に掴みかかる、殴りかかるが頻発し 、かなりのストレスとなる。 複数の敵が一斉に攻撃してくるので、囲まれるとはまる(正面の敵をガードした瞬間に、脇の敵が大振りモーションに入ると避けようがない。敵は自チームメンバーを殺すことになっても巻き込んでくる)。距離の近い敵にオートで切り替わるため、中学生のじゃれ合いのような、殴られて振り向くを繰り返す事も多いし、基本が多対一なので、サシで勝負>後ろから大降り攻撃とか、突然の割り込みとか、とにかくストレス(ケンカはそんなモンとも言えるが)。30人斬りのミッションなど、もうストレス物質が耳からあふれ出そうになること請け合い。

また、これはプログラム的なミスだと思うのだが、ミッションの場所が重なったり、特定条件ででるキャラが居ると、ミッションが攻略できなくなる。例えば、最終版のメイド30人斬りと、ダンボール戦士をまとめてうけると、メイドが29人で止まってしまうし。シズナが退院していると、秋葉原四天王サブミッションで、黄色が出てこない。居ない黄色に向かって、赤が文句を言うのはかなりシュールだ。

このゲームの肝である脱衣技(相手が吸血鬼なので日光に弱く、服を脱がすことで日光に当たる面積を増す)なのだが、乱戦になると、明後日の方向へ服をはぎ取りに行く。それ以前に、乱戦になると、通常のコンボ途中に向きが変わったり、割り込まれてクルクル回り出したりと、アクションゲームなのにアクションがお粗末という残念な結果。かなり、大目に見てPSPの限界と言うことにしても、かなりお粗末。と言わざるを得ない。

この点は、ターゲットのロック、手動切り換えが出来ると、それなり回避できると思うのだが。残念ながらPSPではボタンが足りない。PS3とかなら、L2R2でターゲット変更、L3でロック/解除とか振り分けられるのだが。

はぎ取った部位で、ペナルティが出る。例えば、ズボンを取られると移動速度が、上着を取られると攻撃力が下がる、とかあれば、なお良かったが、まぁこれもハードの問題だろう。

ゲーム機本体スペックどうこうもあると思うが、それ以上に侍道エンジンそのものの限界だと私は思う。 それは侍道4をプレイしても感じた。あとは、侍道エンジン丸出しな、高難度でないと出てこないアイテムとか、体当たりでアイテム落とすとか、レア装備持っている奴はひたすら逃げるとか、その辺も何とかならないモノかと。侍道なら、随時抜刀できるのだが、このゲームでは相手がやる気にならないと抜刀できないのだ。


・ゲームとドラマの違い
脚本で残念なのは「PS1時代のフルボイス黎明期かよ」って感じで、声優に助詞を読ませている事。例えば「ナナシが連れてきた」を「…がつれてきた」とやらせる。ちなみにデフォだと名前ナナシになります。そんなんエタメロ(PS1)の頃の作り方やんけと。ソコは、代名詞で誤魔化すか、助詞飛ばせよと。「君が連れてきた」とか「彼が連れてきた」とか、主人公名フリーなのを誤魔化す技量もゲーム脚本力じゃないかと。なんで助詞まで読ませるかと。この辺りが、ドラマ脚本とゲーム脚本の違い。テレビドラマとゲームの違いなのだが。

セリフ回しなんかは、ぐっと来るのとか、プっとなるような上手いセリフ回しが多い。アキバネタなんでオタ会話は随所にあるんだけど、川野口ノブみたいに、単なる列記、羅列になっては居ない。それは、ゲーム内アニメである「ITウィッチマリア」で、それをやっているので、心底理解した上でのネタとしてのオタ会話があり、それが笑いにつながる。そのレベル差は計り知れない。 そのアニメ、漫画知ってる知ってるという連帯感だけで保たせているモノとは雲泥の差だ。

もう一つ残念なのが、ラスボス戦が降って沸いてくる上に、その後の決着が完全にNPCに投げ出してしまうので、何一つ解決した気分にならない。もの凄い消化不良感が残る。逆に、傍観型ゲームだったら、「へいへい」で済ませられるのだけど、そこに到るまで選択肢を積み重ねてきたわけで、自分の意志が、決断が、最後の最後で無視というか、流されるのは、かなり虚しい。まぁ、現実ってそんなもんよ。と言えばそうかも知れないが。

ただ、不出来なレベルではなく、今までが良くできているが故に、残念に思える出来。出来が良すぎるが故に、不出来に見えると言うところか。 加えて、トゥルーというか、きっちりサブミッションをこなしていると選べる選択肢のルートでは、納得の終わり方をしてくれる。


そう言った点を除けば、シナリオ、ゲームとしてのストーリードライヴ具合などはほぼ完璧に近く、 秋葉住民ルートでの「俺たちの街だ」など王道ながら熱くなる展開(と言うか、外しちゃ行けない展開だよね)。ラストバトルも、熱いうちに走りきることが出来る。まぁ、走り抜けるので、解決がおざなりになるという欠陥が出ているが。というか、ダンジョンでないから手間がかからないだけで、全域制圧という雑魚戦はあるのだが。

ゲームであり、選択肢が上手く機能しているからこそ、自分の手できちんと解決したい訳で、黒幕を自分の手で追い詰めたり、黒幕の陰謀を自分の手で暴くなどしないと、尻すぼみになってしまうのも、ゲームの特性だろう。テレビドラマだと、犯人が断崖絶壁の上で解答編(もしくは「親切なオレ様が説明してやろう」)を始めても、あまり違和感は無いのだが(私 には違和感バリバリだが、コメディならともかくミステリーでは…ねぇ?)。


主要NPCの属性もストーリーラインに上手く絡めてあり、いわゆる死にキャラが居ないのもすばらしく上手い 。ときメモ4でもそうだが、面白い物語は、脇役が生き生きとしていることが多い。それは球七の言うとおり「主役だけでは舞台は出来ない。きらりと光る脇役が居なくちゃな」に要約されると思う。

ヤタベさん、ゴンちゃん、ノブ、そしてサラという主要NPCは、おそらくアキバの変遷そのものであり、その時代、時代における秋葉を愛した人たちの象徴なのだと思う。だからこそ、一見繋がりのない彼らが自警団となったのだろう。ちなみに、ヤタベ(老舗ジャンク屋=初期の電気街)、ゴンちゃん(カメコ=アイドル、カメラ)、ノブ(エロゲマニア=PC ・萌え時代)、サラ(メイド=メイド時代?)となっているのではないかと。ちなみに、年齢もその順。サラは不詳だが。

一見、アキバ系を揶揄しているようなところも多いが、その裏には絶対的なアキバへの愛情が隠れているのが感じ取れ、安易な乗っかりではないのが分かる。「このバカ…愛情表現です」と言う 舞那のセリフが、作品の隅々にまで感じられる。と言うか、愛情無くして「この街を好きになってごめんなさい」と言うセリフは思いつかないよね。


あとナゼかは分からないが、良く出来たゲームのオマケは良く出来ているもので、サムライキッチンはさておいて、ITウィッチマリアの横スクシューティングは、まぁ、弾幕構成とかはおざなりだが、同色ショットを打たないと、消せない弾を撃ち返してくると言うのは、面白いアイディアだ。



・まとめ
やってて楽しいゲームであることは間違いない し、やってると時間を忘れるゲームでもある。バッテリー切れ警告のランプ点滅で我に返る事も多いほど。 あとカレーパンの歌のせいで、無性にカレーパンが食べたくなる。

まぁ、ゲーム自体としては至極単調で、お遣いと殴り合いしかないのに、肝であるはずの殴り合いが出来が悪いと言うオチがあるが、それを補えるストーリー力はある。補い切れているかは疑問が残るが。 それほどに、アクションパートは残念な仕上がり。 アクションパートが普通だったら、間違いなくカルト作と言い切れるのだが…それほどに足をひっぱる。

ときめきメモリアル4と並んで、PSPを持っているならば、やらないと損と言い切れるゲーム。もしくは、プレイするためにPSPを買っても惜しくないゲームと言い切れるゲーム。このくらいの密度を、侍道4で見せてくれればなぁ…ほんとに、侍道4ではなく、このAkiba'STripをPS3用にテクスチャ総取っ替えしたほうが売れたと思う。ポリゴンキャラも綺麗にしてな。

記憶で書くと不味いと思い、再プレイしたのだが、ついついズルズルと2周ほどやってしまった。イージーだと気楽に周回できるのもいい。が、イージーとカジュアルだと、カジュアルの方がより低難度だと思うのだが…このゲームではイージーが最低難度だったりする。

しかし、トータルで5-6周はしているのに、三つの勢力から信頼されるってルートが分からんわぁ。侍道伝統の大団円ルートなんだと思うんだけど、正味これを見ずにレビュー書くと評価ずれるんだよなぁ…でも、ネットや攻略本で調べるのも負けた気がするし。で、まぁたどり着いたら、シナリオ関連の総括評価書くと思います。

称号欄から判断するに、エンディングは5パターンで、あと見てないのが、アイドルの警備員、家族愛なので、アイドルはダブプリエンドだろうから、家族愛がハッピーかな?。

補:家族愛…妹エンドでした……ダブプリエンド…設定説明の詰め合わせおざなりエンドでした。ナゼに瑠衣から急に、説明なく乗り換えるか…プラスになってからの追加エンドなんですかね、この二つ…妹エンドはともかく、双子エンドは、ワタシ的に評価下げた、大きく下げた…袋とじで設定説明すんなよぅ。本編でしろよう。 うーん、ベストエンドあるのだろうか?。

妹が、語堂(CV矢作紗友里)で思い出したんだけど、ゆるふわ系モンスターって、柳?柳モロだしなのか?。声でなく、イベントが。つか、キャラ造形もか。まぁ、森泉の方は細身だが…食欲魔人で、がんばり屋だがドジッ子ってのも被りすぎだろう…


 



 


初稿 2013/07/07


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