必然は、常に偶然を装ってやってくる。
デミウルゴス。と言うかグノーシス派は扱いが難しく(と言うか、私自身が正確に理解できないと言うだけですが)、半端な知識で、デミウルゴスをネタにしていると、大抵、単なる魔王扱いで終わってしまう事も多いのですが、本作では、グノーシス派を正しくと言うか、性格に認識しているようで、歪みはほとんど無くプレイできました。
デミウルゴスというか、グノーシス派を、滅茶苦茶にかみ砕いて(そして、やや誤解曲解して)言うと、キリスト教で「光あれ」と世界全体を作った神と、地球を作った神は別物。と言う事だと、私は認識しております。
そんでまぁ、地上世界を作り上げたデミウルゴスは、自分こそが唯一の神と増長し、自分が作った奴隷生物である人間が知恵を付けて、自分と台頭の存在になるのを恐れ、デミウルゴスが物質界しか作ってない事を知っている、セツの子らを大洪水で滅ぼしたりするわけですわ。セツというのは、アダムとイブの第三子、エジプトの蛇神セトと同一視されたりもしております。上の二人は、有名なカインとアベルで、兄弟殺しで呪われたカインの子が、今の人類である。と言うのがグノーシス派の言い分。
まぁ、その辺の事は、作中で語られているので、割愛して(とは言え、ノアの洪水の当たりまでは触れてないですが)。グノーシス派では、世界は呪われた場所で、肉なるものは、否定しなければならない。とか、まぁ若干の差違はありますが、ネタソースとして、崩壊してなきゃ、十分OKなんで。
その他、脳科学とか、色々出てきますが、書物転載丸写しという感じではなく、一度、知識として吸収してから、使用している感があり、好感が持てます。
◆さて、ダメ出しですが、シナリオに破綻がないのは、非常に高得点ですし、一元的な時間軸で進行しているので、別シナリオ(と言うか、別ヒロイン)に起こったイベントが並列に進行していたりして良く出来ています。
が、その反面、やや盛り上がりに欠ける。と言わざるを得ません。その原因を考えた結果、親玉との直接対決が無いに等しい。と言う状況がそう感じさせるのでしょう。イーリス編で対決がありますし、イーリス編は一度他のヒロインでクリアしないとダメみたいなのですが、アレで盛り上がれと言うのも、ちょっと無理ですね。
あとまぁ、デミウルゴスとの対話、序盤での対決など、ほとんど無いのも、盛り上がらない原因かなぁ。もう少し、能力を使ったら、原始欲求との葛藤というか対決があっても良いのでは。などと思ったり。能力者同士の対決で、インナースペースつーか、精神戦闘レベルまでやっても良いような。
んで、一番、失敗なのは、本編中で上手く告白すれば、一番盛り上がるであろうポイントを、エピローグ1、エピローグ2と、オマケの形でショートストーリーとして出しちゃってる事かなぁ。まぁ、確かにバックストーリーで、本編に組み込むと説明臭くなるかも知れませんが、匠の正体など、本編中に告白してもらわないと、インパクトがなぁ。と私は思います
最終オチであるエピローグ2で、やや論理矛盾というか、難解すぎるというか…結局、主人公は叡智だったとして、玉依が同列におるのは、なぜじゃ?。彼女は日本という場所に特化した存在のハズ。あと、イーリスという光を得て、つーのも解釈に困る。
まぁ、人間には、光も闇も内在している。どちらに寄るかは、生活態度次第…と言う事なんかな…
しかし、始原神にとっては、人間もデミウルゴスも手駒に過ぎない。その気になれば、デミウルゴスもろとも、失敗した世界にリセットをかけるのは容易い。呪われしカインの子が氾濫する、狂気の創造神デミウルゴスの世界を滅ぼすのは、セト(アダムの第三子セツ)と言う考え方もある。真メガテン2で、セトとサタンが同一視というか合体するのはこの辺の思想を踏まえてだろう。
グノーシス派では、ヘビが知恵の実を与えたのは、この呪われた世界から位階を登るために、神が使わした使徒と考えている。だからこそ、セトは蛇神であるのだが。グノーシス派でなくても、知恵の実を与える事が堕落でない。と言うのは、ギリシア神話のプロメテウスから見て取れる。実際に、ルシファーとプロメテウスを重ねてみる人もいる。
単純に考えて、デミウルゴスが作った呪われし狂乱のこの世界が、神の理念から外れていない可能性もある。だからこそ、プロメテウスもルシファーも、人に叡智の光をもたらした事で、主神に罰せられたのではないか。
おとと、ゲームのレビューから逸れてしまいましたね。
最後に、簡潔にまとめると、設定やネタなど、ほとんど歪みきしみなく進行します。やや難解な用語が多いですが。それらの設定をもちいたストーリーは面白いのですが、シナリオの整合性、論理性に気を配りすぎたせいか、盛り上がりに欠けると言うのは、結構な減点対象ではないかと。
繰り返しになりますが、最終対決が、さっくりと終わってしまうため、盛り上がらないのが一つ。本編中で、上手く告白すれば、盛り上がるであろう裏設定を、オマケのミニストーリーにしてしまった事が、盛り上がりのピークを低くしてしまった原因ではないかなぁと。
別の言い方をすれば、ストーリー骨子は一つのなのに、全てのルートを均等にしようとするあまり、全てが平坦になった。と言う言い方も出来るかも。
あとタイトルのデミウルゴスの娘つーが一番謎。大神の事か?
今ふと、唯ルートで母親へのプレゼントを買うとき、下着を買って、乗り込んだときに「そのパンツ…」「お前が選んだものだ。勝負パンツにはもってこいだろ」と言う小ネタを思いつきました。いや、それだけです(笑)
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