ファイアーエムブレム紋章の謎

(厳密には、第一部しかプレイしていないので「暗黒竜と光の剣」)


レゲーに浸っていたおり、知人に勧められて購入。ま、いわゆるシミュレーションRPGって奴。で、シミュレーションRPG制作時に陥る罠に全てはまったと言ってもよい作品でもある。

根本的な事だが、シミュレーションRPGって、間違いな気がする。タクティカルコンバット(戦術戦闘)RPGと言うのが正しいのではないか。まぁ、タクティカルコンバットと言うと、分かりにくいから、シミュレーションとしたのかも知れないけど。

ぶっちゃけて、戦闘時に、ヘックス戦を行うのは、テーブルトークゲーマーとしては、ごく当たり前のこと。敵倒して、経験値稼いで、レベルアップすればRPGってご認識が生んだ弊害かも。

さて、まだ、第一部16章なのだけど、どうにも命中率が、敵側有利に調整されているようだ。敵の命中50%は、やたら当たるクセに、こちらの70%はやたら外れる。加えて、クリティカルの発生率がやたらと高く、敵味方共に即死を引き起こす。

敵を倒す分には、良いじゃないか。と思うかも知れないが、このゲーム総じてHPや防御力が、攻撃力に比べて遙かに低いため、壁ユニットであっても、二回か三回の攻撃しか耐えられない。その為、壁として置いておいたのに、クリティカルで相手を倒してしまっては、敵の移動攻撃、撃破、次の敵の移動攻撃と、順次攻撃されて、自ユニットが撃破される。敵ターン時には、双方からクリティカルが出ないことを祈るばかりだ。

さらには、難易度調整を敵ユニット能力でこなしている節もある。まぁ、これをしないシミュレーションRPGは存在しないだろうけども。同一ユニットでも、レベルが違うから。と言って誤魔化せるし、納得もさせられるので、戦術面での難易度調整が、下手な日本人にとって、非常に便利なシステムではある。

このゲームの総評は、シミュレーションとは名ばかりの、ギャンブル・リセットゲーである。

ハッキリいって戦術要素は低い。どんなに完全な戦術を立てても、クリティカルで粉砕される。そして、キャラクターの死亡で、ゲームが詰んでしまう可能性を秘めているとなれば、なんと言って良いのやら。途中セーブ(中断セーブはあるが)も無いので、誰かがクリティカルで即死したら、一からやり直しだ。もうすぐクリアの段階で、クリティカルで即死されるとカセット投げたくなる。

命中率は、確率だし、確率が公平でないことは知っている。だからといって、敵側を有利にしたり、ユニット能力を強力にすることで、調整するのはシミュレーションではない。ここら辺が、モンスターの能力値でのみ難易度調整し、それを良しとしてきた、日本の歪んだRPG体質に起因するのだろう。

命中判定が目に見える、単ユニットの戦術級(FEは戦法/小部隊作戦級だが)では、命中率が直接見えるだけに、非常にはらただしく、また、HPが攻撃力に対して低すぎるので、一度の攻撃の失敗が、即リセットにつながる事も、しばしばだ。軍団や大隊規模の集団戦ならば、気にならない。と言うか、分からないのだが。

話はそれるが、その規模のゲームになると、兵員がHPとして処理されるのが関の山。つまり、武将がキャラ、兵数がHP。と言うのも良くある日本のSLGだ。

FEでは、ユニット(キャラクターの死亡)が、ゲームを詰む(クリア不能になる)危険性を孕んでいる割に、レベルアップ時の成長率が異常に悪い。また、成長項目のばらつきも甚だしい。リセットで繰り返し、成長を見るハメに陥るのだが、全ての能力が上がるときも、なにも上がらないとき(単にレベルが上がっただけ)の傾向もないもない気がする。

ユニット自体も、どれを使っても大差なく、弓兵ユニットの射程と、投擲(手斧、手やり)の射程、果ては魔法の射程までが、二ヘックス固定では、あまりにお粗末だ。

武器に使用回数が設定されているのに、買い物は戦闘中しか行えず、輸送隊(アイテム置き場)の管理は、主人公しか行えない。そのため、店には、主人公を送り込まねばならず、また、勝利条件地の制圧も主人公しか行えないので、無駄な手間がかかりすぎる。

発売時期の前後は分からないけれど、その点、シャイニングフォースは、良くバランスが取れていた。成長傾向も目に見えたし、キャラクター(ユニットの、ではない)の特性も目に見えていた。インターミッションによる買い物も出来た。シャイニングフォースは、シミュレーションRPGとして、一つの完成型と言って良いだろう。

ストーリーは、小・中学生向けのファンタジー小説の王道であり、目新しくもなければ、感慨もない。手垢で真っ黒ではあるであるが。ただ、歴史上の国名を使うのは、何だかなぁ…ギリシア辺りが好きなようだ。マケドニア、トラキア、なんつー国名だし。ただ現実では、オルレアンであって、オレルアン(ゲーム中表記)ではないと思うぞ?。それとも、オレルアンと言う国でもあったかのかな?。

インターミッションが無いので、キャラクターの個性を掴むヒマも、表現するヒマもなく、FEを崇める人間達は、よくぞそこまで感情移入出来るものだと感心するばかりだ。それとも、第二部「紋章の謎」では、そうした個々のキャラクターのドラマも存在するのだろうか?。まぁ、触りだけプレイしたが、セリフ数は多くなっており、マシにはなっているようだが。

欠点ばかりをあげ、酷評がすぎるような気もするが、実際のところ、ゲームとしては良作である。それは、間違い無く、誰もが認めるところだ。それなりに作り込まれているし、よく遊べる。だが、なまじ遊べるが故に、欠点が目に付く。そして、その欠点は、致命傷足り得るモノばかりだ。

ゲームにおけるリアリティと、爽快感、そのバランスが悪い。ゲームは所詮、虚構。苦しむためにプレイするのではない。楽しむために、プレイするのだ。楽しさとは、苦しさの向こう側に在るもの。だか、苦しみと喜びが釣り合わないのは、現実だけで充分だろう?。

私は、決して温ゲーマーではない。ミステリーハウスやダイヤモンドアドベンチャーと言ったテープ世代の生き残りだし、アドベンチャーと言えばシエラオンラインと言う時代の生き残りでもある。その私があえて言う、FEの苦しみに対する見返りは、喜びではなく虚脱だ。その虚脱も、クリアした喜びと言うよりも、なんとか終わったという安堵である。

良作か、次第作ではある。だが、決して名作ではない。

まぁ、単に私が小うるさいだけかも知れないが。実際問題として、シミュレーションRPGほど、難易度調整が難しいゲームもないのではないだろうか?。なまじ、ユニットがキャラクターである為、感情移入、心理的な犠牲に出来ない。と言う感覚が生まれる。これが、通常兵器ならば、歩兵ユニット三つで、戦車潰せたら上出来。と駒と割り切れるハズだ。

反面、通常兵器なら、性能は同じハズで、純粋に戦術が勝敗を分けるはずで、制作側は骨が折れる。感情問題は、結局プレイヤーサイドのプレイスタイル問題なので、制作側には関係ない。難易度調整が楽。と言う安易な方向に走っているせいだろう。

結局、これもファイアーエムブレムと言うブランド名で保ったにすぎないのか。その証拠に、名前だけ違ってシステムまるで同じのティアリングサーガは、エムブレムファンは、みな冷遇している。反面、ファイアーエムブレムの名で出した、外伝の売れ行きは好調のようだ。

制作スタッフも愕然としただろう。つーか、もっと早く気が付け。まぁ、それは全ての話題作に言えることなんだけど。スクエアは、その辺を理解しているようで、ファイナルファンタジーの名を冠し続けている。



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