火焔聖母(ドリームキャスト)


◆横田守原画つーことで発売日に購入。「慟哭、そして…」ぐらいの出来だろうと認識してました。覆りませんでしたが

◆購入以前パンフレットの紹介文『ネットワークから工業用チップまで、全てが単一のOSで制御されるインテリジェントシティ(中略)街の全てのシステムを凝縮したような聖骸高校に(後略)』から、話の大筋を察知。その予想を裏切って欲しいとプレイしたのですが…ほぼ、定番の展開でした。誤差はありましたが、予想を裏切るものではなかったです。

ちなみに、私の推測は、AIすなわちコンピューターの暴走ともとれる、自我(人格)の発生でした。

超古代史の解釈も、比較的きれいにまとまっている物の、今までに手垢が付いたモノのを、つぎはぎした感じで、目新しさがなかった。つーか、私が、その手の話を知り過ぎなのかもしれないけど。

推理AVGつっても、かなり、しょっぱい物だったし、フラグ立てを強要するのでねぇ。一発入力できるの、コード入力ぐらいだし。ミステリーハウス時代に戻ったかのような、一本道デストラップAVG。と言うのが、正直な感想です。


◆細かいツッコミ入れますと、日本神話における、厳密なハイヌウェレ型神話というのは、オオゲツヒメかウケモチの神の話だと思うなぁ。ハイヌウェレ型って言うのは、穀物の女神の死体から、五穀(その土地の主食)の種、もしくは親木が生まれるという話です。

古事記では、スサノオとオオゲツヒメが、日本書紀では、ツクヨミと保食神(うけもちのかみ)が、それに当たります…保食神をトヨウケヒとする書物を見た記憶があるのですが、文献が見つからないので、混同かも…。

まぁ、イザナミもヒノカグツチを生む前に、保食神を生んでいるので、広義の意味では、ハイヌウェレ型に当てはめることも可能だと思います。が、イザナミの死に関しては、ハイヌウェレ型神話と言うよりも、どちらかと言えば、火神生誕による大地母神の死、つまり、冥府下りにつながる物語の要素の方が濃厚であると思います。

私個人としては、イザナミの死によって山川草木の神が生まれたというのは、マルドゥクがティアマトを裂いて天地を作ったがごとく、イザナミの死によって天地自然が生まれたと言う、世界創造に入るのではないかと思っています。

なにより、イザナミが五穀を生んだと言うのならば、オオゲツヒメや保食神の話を載せる必要はないと思います。なにより、遺体から直接、植物が生まれるのがハイヌウェレ型の外せない条件だと思っていますので。

ヒノカグツチが死んだときに生まれたのは、鉱石や山岳、水に関係する神々で、ヒノカグツチの死=炎を征服した。と言うことで、火の神抹殺神話の意図は、治金技術の習得と一般には言われています。あと、焼き畑農業ね。

ゲーム内では、ヒノカグツチのツチは、隕鉄を含んだ土のことでは。と推論されてますが、ふつうに考えれば「つ」すなわち「津」は、助詞の「の」に当たります。チは神霊である事を指します。すなわち、勢いよく燃える火の神霊です。


◆へらい村も、いまさらって感じだし…それなら、皇族の16菊花紋はモーゼの家紋と同一とか、伊勢神宮などにある六芒星もまたヘブライ神族の印とか、言って欲しかったなぁ。

あと、東北の方々には、白人種のDNAが二割程度混じっている。と言う話ですね。秋田美人の肌が白いのは、日照条件と、遺伝子的な理由らしいですよ。とか。とか書くと日ユ同祖論者が喜びそうだなぁ。私は同祖論者とは違います。肌の色や、血筋は関係なく、その土地に根付いたときから、その民族になるのだと思います。ネイティブアメリカンの発想に近いですね。

結局、浄化の炎。つまりメギドの火で、焼かれるとなぜ豊穣となるのか、説明不足な印象です。人灰を蒔いていたのかなぁ。単なる外敵や異分子の排除による秩序の維持なんかな?。竜脈と人体発火の関係も、いまいち納得できませんし。レイライン、竜脈を電磁波の通り道という定義なんでしょうかねぇ。

ソドムとゴモラの例を見ても、破壊による再生と言うより、メギドは、裁きであり、怒りの炎です。焼け跡からの復興。と言うシヴァ神的な死と再生ではなく、失敗したから、1からやり直すと言うリセットボタンに等しい扱いです。

キリスト教徒としては、メギドの火に焼かれることは、破門と等しい扱いだと思うのですが…少なくとも、浄罪にはならないと思うのだけど。メギドよりは、洪水伝説の方が、再生にふさわしいと思う。

感覚的な印象ですが、キリスト教とユダヤ教を混同しているような、印象を受けました。あと、クムランの写本は、実在します。15洞窟の物があるかどうかは、知りませんが、11洞窟から出た物は、一般に死海文書と呼ばれています。銅板ではなくて、羊皮紙ですけどね。ま、でも主人公がオリジナルは、エルサレムにあるって言ってますから、混同はしてないのかも。

何にしても、火を生むことが豊穣につながるというのは、少々いただけません。死と再生。ならば、通常は、「冥府下り」が主題となるはずで、豊饒神の死、つまり冬の到来と、豊饒神の復活、春の到来になるワケです。火神を生むことでの冥府下りならば、モロに焼き畑を指すと思われます。んー、火を生む。焼き畑で、豊饒?。しかし、ゲーム内では、観念的な火ではなく、人体発火までいく直接的な火を生む訳ですからねぇ…

定番の冥府下りを外して、火神抹殺型神話を持ってきたのだから、さぞや、と期待を寄せたのですが、今ひとつでしたねェ。多くの神話で、火神は殺される運命にあります。それは、火を支配したという事につながるのでしょう。火神を殺し、火から神性を取り払い、人間の物とした証拠なのかもしれません。現代において、魂の神性を奪ったように。

ちなみに、古代遺跡のほとんどが、洞窟にあるのは、洞窟が冥界の入り口であり、産道、つまり、死と再生を再現しているからです。洞窟に入る事で一度死に、洞窟から出ることで生まれる。と言うわけです。


◆ヴァチカンサイドの目的も今ひとつ理解できません。結局なにしに来たんだか・・・電脳世界に神を作るってさ、教義違反なんじゃないのかな。絶対他力の権化、一神教において、能動的に神を作るというのは冒涜かと…聖胎の概念も今ひとつ…キリスト教に、火神崇拝なんてある訳ないし、拝火儀礼は存在しないハズだし。

そもそも、男性優位論者のキリスト教において、女性の地位は非常に軽い。例え聖母といえどもね。実際に、聖母崇拝が始まるのは、四世紀以降で、イシスやキュベレのいた東方に端を発している。マリア崇拝、特に黒き聖母と言われれるモノは、キリスト教が抹殺したはずの、地母神崇拝の復活だったのですね。それに伴い聖人崇拝も始まります。聖人、すなわち祖霊崇拝であり、キリスト教の多神教化とも言える出来事です。

それ故、統括OSに聖母の名を冠することはまずなく、シャダイとかエロヒムを当てるでしょうね。ザフキエルかも。逆に、聖母の名を冠することで、ああ日本人の作ったゲームだなと、実感してしまった(笑)。

まぁ、あのエンディングを見るに当たり、荒らぶる神(earthシステム)を鎮め、マドレーヌは聖母(m−earth)になったのでしょうね。って、メシアの誕生はどうなった?。つーところにも、キリスト教に対する解釈ミスがあるかと。思います。

ちなみに、ローマ・カトリックではイエズスと発音し、Amenはエイメンと発音しますな。細かいけど。プロテスタントだと、イエス。アーメンと発音します。ちなみに、キリストはギリシャ語で救世主の意でーす。

あまり知られていないことにびっくりしてしまいますが、神父(カトリック)と牧師(プロテスタント)は、神主と僧侶ぐらい別物です。さらに、細かく言うと、カトリック、プロテスタント、ギリシア正教会、イギリス国教会は、全くの別物です。仏教で言うところの、浄土真宗、真言宗、とかと同じぐらい別物なんですよ。


◆私は、大門氏をラスボスで、やめといた方が無難だった気がしますね。そこから先の話は、とってつけたような、余談扱いにも等しいもので、どうでもいいやって感じでした。

火焔聖母と先にタイトルを付けたのでしょうか?。無理矢理『聖母』たらしめるために、キリスト教を持ち込んだ気がします。しかも、そのキリスト教が調査不足で、萎えさせる原因になってます。別に、神母としての存在は各地にあるのですから、無理しなくても良かったんじゃないかなぁ。

大門氏の謎解きの盛り上がりに比べたら、最後の謎解きは、明らかに盛り上がりに欠けてましたし。

…ふと、ゲーム内の論で行くと、人の運不運って、地電流とか電磁波に影響されるのかなぁ。聖胎って、つまりはその電磁波の流れを感じられ、操作できる人でしょ?。その人が繁栄をもたらすなら…人の運不運も電磁波なのかなと。まぁ、元々、竜脈はクレーターの円上に入るような、簡単な流れじゃないしね。東京魔人学園の「菩薩眼の娘」の方が、もっともらいしいヨなぁ。


◆しかし、遮光土偶をカエル女神としたのは、興味深いです。アラハバキも女神である可能性が出てきました。縄文期は、間違いなく母権社会であったはずだし、母神崇拝が行われていたはずだったので。私の月神崇拝論とも符合します。つーことは、ツクヨミも本来、女神だったのに、男性におとしめられたのかな?。アマテラス男性神とする古史古伝もあるし。入れ替わったのかも。

ともあれ、アラハバキは門前客人神として、祀られており、出自不明の神なのですが、日本全土に広がっていた最古の主神と言う説が出てから、音沙汰ナシ。最近は、学説とかに目を通していないので、新発見あったのかな?。亀ヶ岡遺跡の調査の進展なんかで、縄文ブームだったのにねぇ。その辺は、ノータッチなんだよなぁ。

ちなみに、壊れて出土する遮光土偶、つまりアラハバキ像は、治療行為の後。と言われています。けがをした部分と同じ場所を、壊すことで、穢れ、すなわち疾病、負傷を像に肩代わりしてもらう。と言う呪術医ですね。人形(ひとかた)は、元来、人間の身代わりとして作られた、呪術用品なのです。

話をカエル女神に戻しますと、エジプトでも、ヘケトはカエルの女神ですし、中国でも「じょうが」と言う女が、月へ行き、ヒキガエルとなった。と言う神話があります。ちなみに、当初は、月にはウサギいると思われており、「じょうが」の話が広まるに連れてカエルになりました。妙見先生、逆ですヨ。卵をポコポコ生むカエルが豊饒神になっても、おかしくはありません。

時に「客人」の発音は、「まれびと」より「まろうど」ではなかろうかと。滅多にこない人と言う意味は同じですけどね。「ホ」ノカグツチと言うのならねぇ。自然境界と山中他界観を持つ日本人にとって、山の向こう側、海の向こう側は、異世界。つまり、死の国、神の国だったワケなんですね。

さらに、隕石、つまり大気圏に突入した流星は、狐ではなく、狗。すなわち天狗です。まあ、日本では天狗を「アマツキツネ」とも読んだため、間違いではないのですが。

九尾の狐も元は瑞獣です。玉藻前だけが妖獣です。しかし、殺生石が隕石で、放射能を出しているとするなら、確かに人を殺す石となり、面白い解釈です。加えて、白狐は霊力が高いといわれ、まさに「お白様」に適合します。大抵の場合、狐であることがバレ、子供を残して去るというのも、ゲーム内のお白様っぽさを醸し出している気がしますね。母親不在の異能者の理由づけ(仲代のように)


◆・・・・ゲームの評価よりも、神話学になってしまいました。申し訳ありません。
超古代史の解釈は、ゲームのウソって事で、認識すれば、十分楽しめると思います。ゲームのウソならウソで、もっと突飛にしても良かった気もしますが…小綺麗にまとまりすぎてて、面白みが…私に、知識がありすぎるのかもしれませんし…一部、面白い解釈がある事は確かです。

賀神探偵長と妙見先生の、原因力とも表現すべき講釈はおもしろかったなぁ。出典があるのかなぁ?。あるなら原本読みたい…因果律の本でも読めばいいのか。


◆ただ、ゲームとしてみると、やはり、推理AVGと言いながら、推理する場所はほとんどなく、コマンドの「推理」も「考える」の置き換えでしかありません。まぁ、たいていの推理AVGというのは「早く気付よ、バカ主人公ッ」って言いながら、フラグを捜す物なんですが…デストラップ(正解以外はゲームオーバー)AVGなので、選択肢の意味は、ヒロインへの好感度調整のみ。

それにしたって、古いシステムのゲームです。基本に忠実と言えるかもしれませんが。日記システムも今ひとつ、使い勝手が判りません。街の移動シーンも無駄。自分で操作しないのなら、場所を選択したら、テレポートして欲しいです。

ラストダンジョンもなぁ…先に入った人がいるのに、なんで、キーアイテムそのままなんでしょう?。先に行った人がいるなら、全トラップは解除されてるはずでしょ?。それとも時間がたつと、元の場所に転送されるのかな?。だったら、大門とにれ。出れないじゃん(笑)。


◆慟哭のスタッフ流入してんのかなぁ。慟哭でも、似たようなミスと言うか、ツッコミポイントがあるのですね。論理性のない隠し方は共通してますね。ギミックとしてはインパクトあるのですが…ま、シナリオの都合ってヤツなんでしょうけど。慟哭は失敗した「遺作」ですが、火焔聖母は失敗した「デ・ジャ」かな?。

人物メモで、好感度がわかる様になっているのには、ビックリしましたけど。好感度が上がると、表情が変わります。
てれてれになってればOK。まぁ、六章のデート出来るかで、もう決まってるんですけどね。

特に、萌えキャラもいないしねぇ。真奈瀬の出雲弁(東北弁は、学術上出雲弁に分類されるのです)はちょっと可愛いと思う(笑)。声優の平松さん好きだしィ(笑)。でも、遠野に行ったときに、地元の爺さんと話す機会があったのですが、2割しか聞き取れなかったな…出雲弁。

ゲームジャンキーの禁断症状が出ているにもかかわらず、飢えを満たすことは出来ませんでした。
特に萌えキャラもいないので、再度のプレイする気が起きない…。

お勧め度は…2点(五点満点)ぐらいでしょうか。


◆スタジオライン(原画と企画を担当した会社)のホームページにて、ゲーム用語解説のページが解説されていました。やはり、よく調べてあるようです。調べすぎて、つぎはぎになるのは、良くあることなんですけどね。私の論調と較べてみるのも一興ではないでしょうか?。しかし、理系、コンピュータ関連に較べると、オカルトや民族学に関しては、丸写しって感じでした。

つーか、ハイヌウェレのとこにオオゲツヒメと保食神って出でるじゃん…故意に外して、これかい…余計、ダメジャン…つーか、初期段階では触れてなかった気がするのだけど…改訂したのかな…

んが、掲示板でインフォシークかどっかのハイヌウェレ型神話のを論拠に持ってきた人って、stラインの人だったのかしら?。そんな根拠のないインスピレーションが沸きました。



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