パワードールシリーズ


 工画堂のパワードールシリーズ。ローダーというロボットと、女性キャラクターばかり。と言う外見に反して、実は異常なまでにハードな戦術SLGです。

 ただし、3と4は、時勢の流れに乗ってしまい、リアルタイムSLGとなっているので除外します。このことは、工画堂も反省したようで、パワードール5の売り文句に『必要なのは、マウスさばきでなく、戦術』とか、「反射神経でなく指揮能力」とか書かれています。

 さて、どのくらいハードかというと、作戦プランを自分で組み立てる事から始まる。と言うだけでも、ライトなプレイヤー(ロボット大戦当たりを本格と思っている様なプレイヤー)は、しり込みしてしまうでしょう。

 例えば、敵の基地を攻撃し、帰還する。と言う簡単な攻撃任務のミッションだとします。

 現地の到着時間から、撤退のための輸送機の到着時間を設定できます。さらには、制空権を確保するための、空軍の滞在時間の調整。支援爆撃機の到着、待機時間。そう言ったモノまで細かく設定できます。特に撤退時間は、早過ぎれば、輸送機が攻撃されてしまうし、遅すぎれば、自分たちが耐えきれない。と言う事態を引き起こすため、いつ到着し、何分滞在させるのか、そうした事も考えなくてはなりません。

 輸送機も、二種類あり、一度に6機運べる大型輸送機と、二機しか乗せられない、小型高速機があります。敵陣に乗り込むのですから、当然、敵からの対空放火があり、動きの遅い大型機では、降下目的地に到着する前に撃墜される危険性が高まります。

 高速機は撃墜の危険性は、下がるモノの、二機しか運搬できないため、航空機パイロットを沢山必要とする事になります。こうした人員配置も考えなくてはなりません。

 さらに、兵装は、雑多ななから、自分でチョイスしていきます。この選択が、成否を分ける事になります。また、当然、戦闘中ですから、補給を受けれるはずもなく、どの兵装の予備弾倉をいくつ持って行くか。と言う事も考慮しなければなりません。

 また、敵の攻撃を受ける事で、武器が壊れてしまう事もあります。さらに、予備弾倉や爆弾などは他の機に渡したりなんかも出来ます。

 索敵の概念をもつ、数少ないゲームであり、その為に、索敵タイプのローダーが設定されています。ゲームとしては、いかに自軍の索敵型を守り、相手の索敵型を破壊するか。と言うのが基本となりますが、そもそも敵に見つかる事が、敗北につながるミッションも少なくありません。

 索敵の概念があるため、兵装にも、煙幕弾が存在し、煙幕によって、視線を遮り、攻撃を逃れる。と言う事も可能です。シミュレーションRPGありがちな、敵の全滅=ミッションのクリアではないので、極力戦闘を避けるのも一つの手段になっています。

 行動も、1ターン移動と攻撃。と言う単純なものではなく、AP(アクションポイント)が続く限り、そのターンは行動できる。と言う形になっています。さらに、兵装ごとに、AP負荷が決まっていて、強力な兵器を積めば、当然APが減っていき、移動すらままならない。と言う事態にもなります。

 逆に弾が切れた兵器を捨てる事で、APを加算する事も出来ますが、兵器数は決まっているので、捨てまくっていると、補給が間に合わなくなり、無くなってしまう危険性があります。ミッションよっては、ローダーを自爆破棄して、VTOLで脱出。と言うミッションも少なくなく、そう言うミッションに、新型ローダーを投入すると次の回が苦しくなってしまうとかもあります。

 また作戦的に可能ならば、プレイヤー部隊のパイロットを、ローダー(ロボット)でなく、支援車両である砲撃車両に乗せる事も可能です。
 
 戦闘そのものも、砲弾の種類が多種にわたり、徹甲弾は、戦車には有効だが、敵ローダーには効きにくい。とか、榴散弾は、ローダーに有効だが、戦車には効きにくい。など兵装の特性。 射程、障害物、高低差による射界。榴弾は、曲射によって射界に捕らわれないなどの射界。さらには、ヘリコプターなどの対空の能力も存在します。
 
 キャラクターも、それぞれ、個性があり、またスキルの有無があります。例えば、工兵スキルがあれば、爆弾の設置などが、スキルを持たないキャラクターの消費APが半分ですむ。とか、通信スキルがあれば、支援要請を半分でとか。

 その為に、爆破任務の場合、工兵スキルをもったキャラクターを使用した方が有利ですし、支援が得られる、防御系ミッションでは、通信スキルをもったキャラクターが有効となります。支援要請専門に、武器を一切持たずに出陣する。とかも出来ちゃいますし、有効だったりします。

 とまあ、コレだけでも、ライトユーザーからすれば、ドン引きするのが目に見えるようです。

 敵のアルゴリズムも程よく、ミッションのアイディアも良く出来ているので、戦術級の傑作SLGと言っても過言ではないでしょう。ただし、パワードール5は、詰め将棋のような、一手間違えたら敗北。と言うようなミッションが多かったですが。

 私がプレイしたのは、パワードール2ダッシュ。パワードール5。そしてナゼか、パワードールFXです。

 2と5は、上記のスタイルを取っているため、特筆する事はありません。ミッションとしては、攻撃任務と、潜入任務、そして爆破と多種かつバランス良く配備されていたので2のが好きです。5は、どうも潜入、防御が多く、一つ二つは、派手な攻撃任務が欲しいと思いました。

 さて、FXなんですが、おそらくPS版も似たようなものでしょう。システムは、ほとんど、ロボット大戦の様になっており、移動と攻撃1回で、行動終了となります。索敵型であるR型ローダーも、索敵ではなく、修理可能タイプとなっていて、ますますロボット大戦のよう。まぁ、コンシューマーのユーザー層を考えれば、この辺が限界だったのだろうとは思いますが。

 純粋なPC−FXでなく、パソコンに積むFXボードと呼ばれるタイプのせいか、CDの読み取りエラーが多発するのも、FXの難点ですかねぇ。

 ともあれ、戦術SLGに興味がない人にとって見れば、こんな手間ばかりのゲーム何が面白いんだ。と思われるでしょうし、興味がある人ならば、ハマる事請け合いです。ある種、詰め将棋のような、パズルゲームのような、クリア方法を見つける楽しさ。と言うのもあります。

 SFとしても、設定は重厚ですし、軍事も、榴弾と徹甲弾を使い分ける時点で、かなりのヘビーさを感じる事でしょう。

 私は、こういうターン制で、ゆっくり考えながら、戦術を立てるタイプが好きなので、見事にツボにはまりました。戦闘というランダム要素があるのも、また良いところでしょう。



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