セガガガ
僕は何も知らない。だからやれる。
−瀬賀太郎
分社化、ハード部門からの撤退と言う厳しいときに出たゲーム(補:企画立案自体は、スペースチャンネル5と大差ない頃だったらしい)。セガらしいと言うか、ハードの生産止めるとなったら、自爆玉砕覚悟のゲームを作って当たるという(笑)。
さて、このセガガガ。多くの人はネタに走った、単なるセガの自虐・自家パロディゲームと思われているようですが、そう思っているならば、見識が甘い。何度も言うけれど、作り込まれていないバカゲーは、クソゲーでしかない。実際、ホンモノのパロディは難しい。他の作品のキャラクターを登場させたり、有名シーンを別作品で再現させればパロディというわけではない。
シナリオ本編の流れに、不自然にならない形。自然と織り込まれていて、パッと見には気が付かないほど融けて込んでこそ、真のパロディ。と妄想していたりします。よって、不自然な形で、突然歌い出すミュージカル映画は、私は大嫌いです。欧米映画によくある心情を歌で表現するシーンも嫌いです。
話がそれました。大事なことは、このセガガガ。外見はパロディチックなネタゲーなのですが、ところがぎっちょん、ゲームとしても良くできているのです。だからこそ、発売から三年近く経ってからも、ドリコレでの登場を願う声が届き続けたのです。セガマニアの自愛の結果ではない。と思います。
ゲームはSIMパート(ゲーム制作のSLG)とRPGパート(メインストーリー)をこなすことになります。RPGパートの方は、SIMパートのスタッフ集めを兼ねるために採用されたと言っても良いかと。そのため、異常なほどユーザーフレンドリィ、言い換えればぬるすぎとなってますが、SIMパートメインなので。
SIMパートは、名作ようこそシネマハウスを彷彿とさせます。残念なのは、ディレクターごとに、作れるゲームが決まっているので、幅が狭いと言うことでしょうか。シネマハウスでは、原作を買い付け、脚本家に渡して脚本ができあがってから、撮影に入ります。この原作と脚本の関係が面白く、原作がサスペンスでも、ポルノ専門脚本家に渡すと、ポルノ作品になってしまうと言う広がりがありました。
まぁ、セガガガでは、作るのはオリジナルではなく、歴代セガゲーム限定ですので、仕方ないのかも知れません。SIMとしては、作りの甘いところも結構あります。意外なほど採算がとれないのですわ。120万本売って、売り上げ三億チョイ。それだと全国TVCMの放送料とチャラですわ。これがゲーム業界の実状?。いやいや、アニメ化すればグッズの版権で…まぁ、黒字にするのが目的ではなく、シェア100%を目指すのが目的なので、そこら辺は良しとしましょう。
他にも、命令コマンドにあまり意味がないとか、アイテムでドーピングしないと作るのも無理とか、荒いところは出てきますが、こうしたことを詳細に作ると、ゲームとしてのテンポが失われてしまう。重厚なSIMではないので、テンポ重視で問題無しと私は思います。
◆RPGパート、ひいてはストーリーの方なのですが、これが良く出来ている。ストーリーのアイディアそのものは、使い古された部類に入るもの(定番の、未来という可能性を信じる穢れなき情熱の少年と、汚れた現代を見過ぎて、未来を信じられなくなった大人パターン真・メガテン3もコレでしたな)で、あまり良いとは言えませんが、細かい作り込みが使い込まれた感じを消し、目新しささえ感じさせます。
創作(悪く言うと、理想論で終始しがち)だけでなく、制作(予算や人間関係の軋轢、権力闘争など)も含むという点で、他のモノとは一線を画しているといえるかと思います。
脚本(つまりキャラクターのセリフ)も、良く出来ているのですが、ストーリーギミック(全体のプロットや、最後のどんでん返しとか)も、良く出来ています。
ミニストーリーとしてその役目を終えたと思っていた設定が、ラストで使用され、遠大な伏線となっていた。このことから、このシナリオライターは出来るッ。と思いました。ここまで遠大な伏線は、オーガス02で、第一話か二話で、親方から渡されたライフル銃を最終巻(11か13巻、OVAのみなので普通忘れる)で、使用する伏線以来です。
多くの作品で、キャラクター設定を語るためだけに使用され、その後はほったらかしにされるのが常なのですが、物語の序盤での何気ない会話やモノが、ラストで伏線になっていた。と言うのは私は大好きです。それはキャラクター設定をきちんと消化、ストーリーに融合できている証だと思います。
事件記者コルチャックでも、冒頭の嵐の前の静けさのような、当たり前の日常を導入として描いていたのに、その中に事件解決のヒントが隠されている。と言う作りなっていて、そこが好きなのです。
◆しかしながら、ゲームと言うモノは、ストーリーだけ良くてもダメ。システムが斬新なだけでもダメ。システムのバランスだけが良くてもダメ。平均点で評価されるのではなく、それぞれの部門で評価され、その合計点が最終得点となる厳しい世界と思います。
このセガガガ。ストーリーもノリも良い。でもやはり、そこかしこに作りの荒さ…いや、良く作り込まれているのだけど、SIMパートが簡略すぎ…と言うのも何か違うなぁ。何かが足りない。それこそ、ドルメヒカの破片が欠けているような…んー、やっぱSIMパートの収支に問題がありカモ。
ともあれ、間違いなく合格点が出せるゲームです。合格しているからこそ、不満が出るのが私のスタイルですので、ご了承あれ。しかし、美人秘書のアリサのオチが、あのアリサだったとはねぇ…してやられた。やられ続けてます、このゲームには。
◆最後に、このセガガガ、一般的に「セガマニアには面白いだろうけど、一般人にはクソゲー」とか「セガパロディなので分からないとツライ」など、もっともらしいウソで評価されています。
元ネタを知らないで、パロディ映画を見るというのは、プロ野球や野球のルール、もしくは野球そのものを知らずに、野球ゲームをするようなものです。もちろん、知らずとも、投げて打ってと言う根本的なところで楽しめると思います。
このセガガガも、セガを知らずとも、物作りSIMと言う根幹で楽しめるはずですし、間違いなくセガと言う要素を取り払っても良く出来ているゲームです。
冒頭に還りますが、他作品のキャラやシーンを、張り付ければパロディなのではありません。それは下品なパロディで、ただのコピーに過ぎないと思います。この言が正しいのかと聞かれれば、答えに窮しますけどもね。
戦闘シーンの業界人の自虐セリフなどに、目を奪われがちですが、そうした先入観を取り払ってみれば、ゲームとして、非常に良く作り込まれており、シナリオや脚本にそつがない。と言うのは理解して貰えるのではないかと。
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