ラッセル・マルケイ監督。クリストファー・ランバート主演。
首を切り落とされない限り死なない。と言う宿命に生まれついた戦士の物語。
一見すると、ソードアクションのヒーロー物のようにも受け取れるし、ニューヨークの摩天楼。ビルの屋上で、巨大なネオン看板を背景に、日本刀と西洋剣で一騎打ちをする辺りなんかは、レイザーバックを撮ったマルケイ監督の、映像センス炸裂で、とても幻想的で、ファンタジックなソードアクションムービーと言う印象を与えます。
アクションムービーとしても、ファンタジームービーとしても優秀ですが、テーマは「不老不死ほどむなしい物は無い」だと思っています。エンディングカットでのコナーの笑みがそのことを雄弁に物語っています。QUEENが丸ごと、音楽を担当したことでも有名ですが、この映画のテーマソングとも言うべき「Who want live forever(誰が、永遠の命なんて欲しがるのか)」と言うタイトルが、全てを物語っています。歌そのものも、亡きフレディーの切々と、張り裂けそうなほどの悲しみを含んだ歌声が、絶品です。
ほとんどの人が、長生きをしたい。と思っているはずです。不老不死の薬があれば、皆が欲しがるでしょう。私も、この映画を見るまでは、そうでした。この映画で、永遠の生が、永遠の責め苦であることを知ったのです。
それほど、深い感銘を受けたのを今でも覚えています。
劇場公開当時、私は中学三年ぐらいだったのですが、どう言った流れか、不老不死の薬なんて欲しくない。と言う話になり、さんざん嘘つきとか言われたものですが、その思いは、今でも変わりません。
作中で、もっとも感銘を受けたシーン。13世紀ごろ、不老不死に生まれつき、生まれついた村では悪魔と迫害され追い出された主人公が、鍛冶屋に拾われ、分け隔てなく接してくれる、鍛冶屋の娘と結婚します。
やがて時は流れ、娘は、妻は、老婆となって衰えていきます。主人公は、いつまでも若いまま。老いすら共有できず、老衰で弱っている妻に「キレイだよ」と声をかけるシーンには、涙無しでは見られません。そして、妻は夫に一つのお願いをします。「私のことを忘れないでいてくれるのなら、私の誕生日に、教会でロウソクを一本ともして…」
そして、シーンは切り替わり、現代のニューヨーク。スラムの教会で、主人公がロウソクを立てます「誕生日おめでとう…」
どう考えたって、泣けるシーンでしょう。どう考えても(私の表現拙さは別として)、胸をうつ以外の要素なんてないでしょう。未だに、覚えていますが、このシーン「誕生日おめでとう」のセリフで、映画館は大爆笑になったんですよ。殺意を覚えましたわ、ホンマ。つーか、映画を含めて、芸術に触れる資格ねーつーの。このシーンで泣けなきゃ何で泣くって言うのサ。
少し話がそれましたが、私が不老不死を望まないのは、そう言うことです。自分の大切な人が、友人が、みな衰えていく中、自分だけが生き残って、どうするのだと。心底惚れた相手なら、老いさえも、時間さえも共有したいじゃないですか。
新しい友達を作れば良い、新しい恋人をつくれば良い。そう言う人もいるでしょう。基本的な性格もあるでしょうが、肉体は若くとも、精神は年を取っているのですよ。十代の肉体を持ったからと言って、十代の中に混じって、遊ぶことは出来ないと思います。出来るヤツは、人格がない。つまり、精神形成が出来ておらず、精神が子供のままって話です。
何より、新しい友、新しい恋人を作ると言うことは、また失う痛手を自分から作っていると言うことです。何十年かは、耐えられるかも知れません。それを何百年も繰り返すことが出来るでしょうか?。苦しみを背負うために、わずかな喜びを選べるでしょうか。また、知古が増えれば、自分が不老不死であることがばれてしまいます。自分の友達が、自分の祖父と一緒に写した写真を持っていたらどうです。迫害されることは必死でしょう。
死ねると言うことは、幸せなのかも知れません。また、死ねると言うことを、幸せと思えるのは、五体満足で大病無く過ごしているからでしょう。年を取れば、必ず意見は変わる。と言われ続けてますが、13か14の時に映画を見て、考えのまとまった16才頃から、今のところ気持ちはまったく変わりません。不老不死の薬を譲り受けたとしても、受け取らないでしょう…いや、受け取って、金持ちに売りつけるかも(笑)。
まぁ、どのみち永遠に生きていたい。なんて事を言うのは、愚か者でしょう。そう言う人間に限って、他人を傷つけ、踏みにじり、他人の屍の上に胡座をかいて生きている人だったりしますので。
映画の展開としては、とても日本的と言えるでしょう。ショーン・コネリー扮するラミレスが、主人公に身体の秘密(不老不死であること)や、なぜ自分たちが存在するのか、と言った精神的な鍛錬から、剣術まで指南します。日本的な師弟関係でしょう。
また、ラミレスは日本刀を愛剣にしており、日本人の妻サエコの父親から送られたもの。と言う設定になっています。マルケイ監督の親日ぶりが伺える設定です。ちなみに、SSの女神転生デビルサマナー1に出てくる、竜牙刀は、このラミレスの刀であると思われます。柄の部分に、龍が巻き付いている飾りがあるのですわ。コレが。
ともあれ、私の人格形成に、絶大な影響を与えたのは事実です。コナーは、ジーンズにシャツと言う軽装に、トレンチコートを羽織ります。剣を隠すためなんですけどね。クリストファー・ランバートの魅力と相まって、とても格好良く、今でもジーンズにコートで出掛けたりします。日本じゃ、トレンチコートのセンスの良いのって手に入らないんですよ。輸入品で、割高になるし、紳士服コーナーにあるのは、シングルのいわゆるオヤジ(中年刑事)コートだし。困ったもんです。
ちなみに続編が出ていますが、見る価値ありません。ただのC級アクションです。
エターナルチャンピオンたちを、別の惑星での流刑人にしてしまった、ハイランダー2。他の罪人を全て殺し、最後に生き残った人間だけが、老いることを許されるのだそうですわ…3では、故郷の惑星に戻って、大暴れ。
テレビシリーズでは、ダンカン・マクラウドという、ハイランダー1のコナー・マクラウドの子孫が出てきたりします。女ハイランダーと言うのも深夜でやっていたのですが、不老不死になるのに、なんか屁理屈付けてて萎え萎えです。なんか、悪に対する怒りを持って、悪に殺されると、ハイランダーとして復活するとか、なんとか。つか、ハイランダーって、スコットランドの高地人つまり、ハイランドに住む人でしょうに。
やはり、謎は謎のままの方が美しいのかも知れません。
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