終わりよければ、全てヨシ。と言う言葉があります。実際に、映画や小説でも、途中までは、ありきたりな物語で、半ば辟易していても、最後の10分で、素晴らしいストーリー上のどんでん返しがあったり、上手い。と思わせるエピローグが入っていたりすると、やられた。と言う気持ちになり、評価が上がると思います。
反面、途中までどんなに素晴らしくても、最後の10分が、グダグダで、台無しにするような終わり方だったりすると、評価が下がると思います。評価が下がるほどの、へたれた終わり方は、極まれですが、ダラダラの終わり方だと、不完全燃焼と言うか、しこりが残った感じがするかと思います。
それは、テーブルトークのシナリオでも同じかと。
ラスボスを倒しました。お終い。では、やはり味気ないというのが私の思いです。他所でも書きましたが、水戸黄門で、黄門様の高笑いで、エンドロールに入ったら、なんとなくスッキリしないでしょう?。お見送りシーンがあってこそのエンディングなのだと、私は思います。逆に言えば、水戸黄門のお見送りシーン程度の後日談で構わない。とも言えます。
さて、終わり方は、実際には数パターンしかなく、ホラーでは特に如実で、だいたい3パターンに集約できます。
パターン1、本当は何も終わってないんだパターン。
パターン2、燃える屋敷パターン。
パターン3、破滅パターン
おっと、もう一つありました。
パターン4、未来が怖いパターン
パターン1,本当は、なにも終わってないんだよパターン。
大抵はこれに当てはまります。苦労して退治したモノの、実はまだまだ続くよ。って奴です。子供や卵が生き残っていたり、地中から手だけ出して、トレードマークを取り返したりするパターンです。端的なのはアレです『これが最後の???だとは思えない』って奴。
例には、ハリウッド版のゴジラ、グリード、巨大アリの帝国、スピーシーズ等々。ブロブもかな。
変則パターン(パターン1−B)として、ようやく切り抜けたと思ったら、世界の方が破滅していた。と言うパターンもあります。後述する破滅パターンとも言えます。
ゾンビ物に多い終わり方で、ロメロのゾンビにはじまり、バタリアンや映画のバイオハザードもこの終わり方です。終わったと思ったら、終わってなかったと言うことで、パターン1の変則にしましたが、パターン2との集合とも言えます。
パターン2、焼け落ちる屋敷などをバックに、パトカーなどがようやく集まって、主人公を保護するパターン。
これは、脱出モノで多いパターンです。呪われた屋敷や、建物など、怪物や超常体と対決して勝利し、その証として、その舞台が焼けたり、破壊されるものです。
このパターンは、揶揄されることも多いほど、定番パターンの一つです。しかし、この燃え落ちる屋敷。と言うテーマの裏側には、英雄物語から受け継いでるテーマがあります。
つまり、閉鎖された怪物が住む屋敷は、主人公の心の闇を示すものである。と言うこと。怪物に打ち勝ったと言うことは、自己の心の闇に打ち勝ち、自己を完結させたと言うことで、閉塞された心を示す屋敷が焼き払われると言うのは、内部葛藤の終了を示す。その為に、大抵の勇者は、最後には、その世界を去る。シェーンもそうだし、DQ1の勇者が、その世界から旅立つように。
こうした場合、超常体やモンスターとの対決だけを取り上げると、アクション物になります。登場人物の、過去や心理葛藤を乗り越えさせることで、ドラマチックになるわけです。このことを忘れた映画は、ただのSFX見学会になってしまうわけですね。
また、ヒロイックモノで、主人公のライバルは、主人公のミラーイメージであり、心の闇の部分でもあります。そっち系の女性の方が、ライバルとの友情、対決と言う交流、葛藤に性的なイメージを持つのも、根底は、自己対決であると言う点につながるのではないかと。
キングのシャイニングでは、ホテルは消し飛びますが、また主人公の卒業と同時に再建されます。パターン1との融合した終わり方でもありますが、最初に吹き飛んだ屋敷は、父親の心の葛藤だっただけで、再建されたオーバールックホテルは、主人公の心の葛藤を示すものと言えます。
例は、シャイニング、ヘルハザード(チャールズデクスターウォードの事件の映画版)など、屋敷ものの大多数でしょう。
パターン3、破滅パターン
パターン1と2は、まがいなりにも人間側が一時的とは言え、勝利(脱出成功も含める)するのですが、パターン3は、勝てずに破滅するパターンです。厳密には、パターン1の変形とも言えるのですが。余韻として、まだ決着は付いてないぜ。でと匂わせるのか、完敗で終わるのかは、イメージが違ってきますので分けました。
例としては、シーバース、マウスオブマッドネス、12モンキーズとボディスナッチャーも入れて良いかな。
パターン3−Bとして、怪談話のパターンがあります。怪異を覗きに行って、超常体に出会い逃げ出します。「その廃アパートの一室の明かりは、まだ灯ったままです。」とか終わるパターン。
パターン4、未来が怖いパターン
これは、とりあえず、事件は解決したモノの、このまま経過するとまた事件が繰り返してしまうかも。と言う余韻を与えるパターンです。
厳密には、パターン1の変形ではあるのですが、パターン1は、観客だけが終わってないことを知り、パターン4では、登場人物も終わってないことを知り、そして今ならば、それを確実に止められるが、そうするには仲間や恋人を殺すことになる。と言う葛藤で終わるところに違いがあります。
ペンタグラムと言う映画を例に説明しますと、悪魔主義者な殺人鬼が、死刑になった後、精神体として他人に乗り移りながら殺人を繰り返していきます。最初に死刑台に送り込んだ刑事と、霊能力が高すぎて自らを封印していたシスターが協力して、キリストの聖なる力が宿った短剣で、殺人鬼を退治します。
その際に、刑事は重傷を負い、入院します。手術も無事終わり、シスターは看護をしながらうたた寝をしてしまい、そこで予知夢を見ます。刑事が起きあがり、自分を殺そうとする予知夢を。シスターの予知夢は外れたことがありません。もしからしたら、殺人鬼にすでに乗っ取られているのかも知れません。刑事の目覚める時刻は迫ってきます。目覚めたなら、女の力では、絶対にかないません。シスターが聖なる短剣が仕込まれた十字架を握りしめるところで終わったハズ。
単発シナリオにするのならば、このパターン4が至上だと私は思います。
例としては、先に挙げたペンタグラム、遊星からの物体Xも入れても良いのかな。
その他のパターンとしては、ホラーには、ほとんどない完勝(ハッピーエンド)パターン、世界を救った勇者のはずなんだけど、現代での法を犯したために、哀しい末路をたどるもの。などがあります。
後者の認められない英雄パターンの、スペインのオカルトホラー映画「ビースト」での終わり方が非常に印象的でした。アンチメシアを倒すために、悪魔と接触しようとする牧師のストーリーなのですが、悪魔とアンチメシアを倒すことには成功したのですが、主人公は悪魔と接触するために麻薬を服用しており、観客には、ただの幻覚じゃねぇの?。と思わせる見立てです。
何故、こうしたエンドパターンを類型化するかと言えば、シナリオを作る際に、オチ(エンディングをどうするか)で、シナリオ全体の色合いが決められるからです。私が、事件の発端を思いつき、そこから話を広げていくタイプなので、発端と結末を決めると、だいたいの流れや、シナリオの解決法をどうするかというのも、まとめ安いためです。
例えば、ディープワンをネタにするとして、パターン1ならば、ディープワンのコロニーを潰したけれど、ディープワンは絶滅したワケじゃない。と言う形になります。パターン4ならば、PCにもディープワンの血が流れていて、いつか変容するかも。と言う結末になるでしょう。
こうした組み合わせで、シナリオ発案するのも一つの手であると言うことで。
さて本題。これらのパターンを使用するときに、留意した方がよい点を列挙していきます。
パターン1、
これはTRPGに使用することは勧めません。と言うのも、怪物が死んでないと認識するのは観客だけだから出来る手法であって、PCとプレイヤーがリンクしているTRPGでは、使用しても効果は薄いでしょう。映画ブロブの様に、混乱の元となったアイテムを誰かが引き継ぐ。と言うパターンならば行けるかと。
対処法としては、もうエピローグの情景描写と公言してから、まだ終わってないよ。と言う描写をする手がありますが、まんか、興醒めな感じがするのは私だけでしょうか。シナリオ集13の恐怖では、このパターンの終わり方が多いです(B級ホラーシナリオ集ですから当然といえば当然ですが)。
パターン2、
これが、テーブルトークでの定番パターンとなるでしょう。別に館だけでなく、洞窟が崩落しても良いんです。現場が消失することで、クトゥルフ神話の知識が流出することも防げます。一番、無難な終わり方と言えます。
パターン3
いくら破滅と言っても、戦闘で全滅させてはダメです。可能ならば、戦闘には勝ったが、戦争に負けた。と言う形にするのがベターでしょう。また、敗北感や虚脱感ではなく、無常観を全面に出す方が、プレイヤーも納得してくれると思います。満足のいく破滅シナリオって、簡単なようで一番難しいのかも知れません。
パターン1−Bにも言えるのですが、アメリカンナイトメアの分析によると、解放と苦痛の境界をドコにつけるかが、大切だとか。全滅は、すなわち敵(ゾンビなり寄生虫なり)の仲間になってしまうことで、新しい価値観やモラルに吸収されると言うこと。しかし、古い体勢にも、新しい体勢にも苦痛はある。
パターン4
私が一番気に入っている終わり方です。別な言い方をすれば、怖い考えになっちゃったエンドとも言えます。クトゥルフ原作で一番近いのは、インスマスをおおう影ですかね。あれで、主人公が、葛藤すれば、完全にこのスタイルです。そうした考えを形にしたのが、私のシナリオ「海人」なんですけども。
欠点としては、ネタが限定されてしまうことですね。
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