1,持っている


「くさ?」
耳慣れない言葉に思わず聞き返す。

「草ってのは、相手国の国民になった忍者の事さ。もちろん、裏切ったワケじゃない。相手の国で生活し、民衆の不満、動向、農作物の収穫具合なんかを逐一報告するのが任務さ。」
ジーンは、小馬鹿にするでもなく、己の知識を自慢するでもなく、ただ、俺の問いに答えた。その瞬時の返答は、コンピューターで検索をかけたような感覚が俺を襲う。

「すると…」
「ああ、ジェネラルオーガニックに、かなりの情報や技術が流れているよ。まぁ、クレイマンも映画のスパイや忍者しか知らなかったようでね。でかい腹を揺らして、派手に動き回ってくれたおかげで、察知する事が出来たよ。」
嘲笑しているような薄い笑みを浮かべて、ジーンが語る。

「…クレイマン所長を殺したのは、お前たちか?」
「できれば、そうしたかったけどね。クレイマンを処分したのは、ジェネラルオーガニックのドールだ。たしか…ソーン・オーガンだったかな…理由は簡単さ、不要になったんだろう。クレイマンの様な首振り人形は、放置するには危険だからね。」

「では、この作戦そのものが…茶番だったというのか…」
「この作戦…たしか、カーマインだったな。単体で見たならば、茶番そのものだろう。だが、ここに至るまで、軍の上層部は相当頭をひねったはずだ。フォーロンバス重工の技術を完成させた上で、合法的に奪い、そして実戦テストも兼ねている。遠大な計画さ。」

「俺たちが犠牲にしてきた命は無駄だったというのか…」
「一個人としては…そうだろうな。大局的には、意味があるのかも知れない。記録には残らないだろうが、今日この日は確実にターニングポイントだったよ…良い方に転んだのか、悪い方に転んだのかは分からないがね」

体中から、力が抜けていく。バイオドールも、俺たちも、ただの操り人形に過ぎず、誰かのシナリオ通りに動いていたわけだ。
「俺たちは、戦わなくてはならなかったのか?」
「我々は、所詮”人”に過ぎなかった。と言う事さ」

チェック
No205猜疑心が記録されているか?


1,記録している。

2、記録していない。



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