1,それでも一人で行かせる。


「私の方から、連絡しておきますから、もう誤認されることもないハズです。」
もはや、何を言っても無駄と悟ったのか、アイリーンは、うつむいたまま、トボトボと歩き出した。その後ろ姿は、俺の心を締め付けるが、こうすることが一番安全なのだと言い聞かせる。

「ドロシィより、アルファ、ブラボー、チャーリーへ。所員一名、アイリーン・ケストナーを確保。Cエレベーターへ向かわせた。画像を送る。バイオドールと誤認しないで欲しい」

行動不能の機体以外から、通信受領のサインが送られてくる。これでひとまずは安心だ。

ゆっくりと研究区画に侵入する。と、同時にコールサイン。誰かが、メインコンピューターを制圧したらしい。全てのドアロックは解除されているはずなので、ここから北へ向かえば、すぐだ。

だが、どうしてもアイリーンが気になって、少々遠回りして、Cエレベーターへ向かう。女性型メカドールのルナが、所在なさげに立っている。

「ルナ、アイリーン・ケストナーは無事か?」
「メカドール隊以外で、接触したのは、貴方が初めてです、中尉」
「なに?」

エレベーターから出た俺は、あっという間に拘束され、ジャブローに連れ戻された。休暇という軟禁から解放されたとき、ドロシィから、アイリーンのデータはもちろん、アイリーンの身元を保証する通信を行ったことさえ、抹消されていた。

戦争が終わって、アイリーンの消息を探したが、皆目見当がつかなかった。だが、情報部の妨害があったことが、唯一の成果だ。なにか裏があったのだ。あの時、俺が・・・必ず助けると約束したのに・・・半端なことをしたから・・・その悔恨はいつまでも残った。

今、俺は、エゥーゴにいる。正確には、陸戦のスペシャリストとして、カラバにいる。ジャミトフ・ハイマン。誇りある133部隊を、ティターンズという私兵に作り替え、あの日の策謀の首謀者。奴を追いつめるまで、俺の戦争は終わらない。



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