1.やはり、検査をする。


アイリーンを促して、メディカルルームに入る。アイリーンは死刑台に向かう死刑囚の様な顔をしている。そんなに医務室が嫌いなのだろうか?。

溶剤をかけて、プラスターを剥がす。

剥がしたのかどうかさえ、分からないほど、綺麗な皮膚。いくら、皮膚を癒着させるとは言え、こんな短時間でここまで治癒できるだろうか。人間業ではない。脳髄から浮かび上がったイメージが、声帯を震わせる。

だが、震えた声帯が、空気まで振動させることはなかった。音声となった空気を吐き出すはずの口から、赤い粘着質の液体を吐き出す。胸が痛むのは、銃弾が貫通しただけが、理由ではない。

硝煙の煙る銃を手にした男が侮蔑と哀れみの視線を向ける。
「お前には失望したよ」

ああ、自分でも自分に失望しているよ。ただ一言、彼女に謝りたい。それまでは死ねない。
「す・ない・・・アイ・・・リ・・ン」

男は、ほう。と呟き、こちらへ歩み寄る。その顔には、見覚えがある。大型機械工作機械区画で出会ったヤツだ。
「君のその心遣いに、慈悲をやろう。」
アイリーンは背を向けたまま肩を振るわせている。彼女を泣かせたのが、俺の言葉なのか、態度なのかは分からない。だけど、原因が俺にあることは間違いない。

肉体的な胸の苦しみ。精神的な胸の苦しみ。俺のせいで、俺の失態で泣いている女性。もう耐えられそうにない。向けられた銃口から、慈悲が下るのを待つ。お願いだ、慈悲をくれ。



検索エンジンにより、直接このページに来てしまった方へ。一度、TOPページへ、お越し下さい【TOPへ行く】